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運命の出会い

注意書き

この作品は、歴史の一部を題材としたフィクションであり、当時の出来事や人物を描くことを通じて、人間の葛藤や社会の複雑さに迫る試みを行っています。ただし、この物語の執筆において、歴史上のいかなる不正義や残虐行為を擁護する意図は一切ありません。


むしろ、過去の過ちを振り返り、そこから何を学び、どのように未来に繋げるべきかを考えるためのきっかけとして本作をご覧いただければ幸いです。読者の皆様が歴史をより深く知り、様々な視点から理解するための一助となれば幸いです。

――「我が芸術家の夢は失われた。野心は塵となり、業火のごとく燃えたぎる怒りだけが私を支えている」


数年前、アドルフの父は昼食を摂りながらあっけなく脳卒中で死んだ。家庭を支配し、息子を抑圧し続けた父の死に対して、彼の心に湧いたのは哀しみではなく複雑な怒りだった。

その父に生涯苦しめられた母は、長く病魔と闘いながらも乳癌に侵され、最期の時を迎えた。彼女は息子の唯一の理解者であり、彼の芸術への夢を応援し続けた存在だった。


母の死を見届け、アドルフはその墓の前で夜明けまで泣き崩れたという。彼の苦悩を目の当たりにした担当医ブロッホは、後年こう記す。


「彼ほど深い悲しみに打ちひしがれた人間を見たことがない」


アドルフ自身も後に述懐する。


「母の墓の前に立ったあの日以来、私は一度も泣いたことがない」


1914年 夏

第一次世界大戦勃発直前、ドイツ南部ミュンヘン。

無職で生活に困窮していたアドルフは、日課のように草原を歩き回っていた。その日、頭上を煌々と照らす奇妙な光に気付く。


「……なんだ?」


空を仰ぐと、遠くの丘へ向かって巨大な火球が地上に降り注いでいた。


「隕石かもしれない……売れるか?」


そう考えたアドルフは、足元の草をかき分けながらその光が落ちた場所を目指して走った。やがて日光が弱まり、周囲を覆う鬱蒼とした森にたどり着く。生き物の気配が一切ない不気味な静寂の中、彼は焦げた匂いを感じた。


地面は丸く焼け焦げ、異様な光景が広がっている。その中心にあったのは、直径1.5メートルほどの謎の球体だった。


挿絵(By みてみん)


「これは……ロシアの新型兵器か?」


つなぎ目ひとつない滑らかな表面。元芸術家志望だったアドルフは、奇妙な美しさを持つその球体に目を奪われた。


すると突然、球体に通気口のような穴が開き、白い煙を吹き出す。


「ケホケホッ……!」


煙に咳き込みながら後ずさるアドルフ。その瞬間、球体がゆっくりと割れ、中から人間とは思えない美しさを持つ少女が現れた。


金髪が陽光を受けて輝き、青い瞳は深い湖のように澄んでいる。少女の白い肌はギリシャ彫刻のごとき完璧さを誇り、その微笑みは天使そのものだった。


「ありゃ……こんなに早く人に見つかるのは初めてかも。こんにちは!私の名前はティアティラ。君は?」


少女のはじけるような笑顔に、初めアドルフは言葉を失った。


「……私の名前は、アドルフ・ヒトラーだ」

「よろしく、アドルフ!」

「あ、ああ……よろしく。それより、何か服を着てくれないか?」

「えっ、ああ、そうだね!ごめんごめん!」


ティアティラは慌てて球体の中を探り始めたが、着るものが見つからず困った様子で微笑む。


「借りてもいいかな?」


胸を片手で隠し、恥じらいながら言うティアティラに、アドルフは思わず顔を赤らめた。


「これを羽織っていろ……後で何か持ってくる」


そう言って自分の上着を脱ぎ、彼女に手渡す。そのシャツを嬉しそうに着込むティアティラを見て、アドルフはかろうじて自分の理性を保つことができた。


「それで君は……一体何者なんだ?」

「私?説明すると長いけど……」


ティアティラは球体の中に腰掛け、アドルフに自分の来歴を語り始めた。


「この地球の軌道上、あのあたりに人工衛星があるの。私はそこから来たの」

「人工衛星だと!?どこの国のものなんだ!?」

「どこの国かはわからないけど、遥かに進んだ科学技術を持っているのは確かよ」


アドルフは困惑を隠せなかった。人工衛星などという技術は、どの国もまだ持ち得ていないはずだからだ。


「私はね、記憶がほとんどないの。ただ使命だけが脳に刻み込まれている。きっと、私を作った存在は人類の成長を促すために私をここに遣わしたんだと思う」

「使命……?」


ティアティラは小さく頷く。


「でもね、わからないの。何をすべきなのか、本当に人類を助けるためなのか、それとも……」


彼女の瞳には、どこか悲しげな光が宿っていた。


アドルフは目の前の少女にただ圧倒された。芸術への夢を失い、挫折と悲しみの中で燃え尽きようとしていた彼にとって、この出会いはまるで新たな運命の扉が開かれたように感じられたのだ。


「……君は、天使かもしれない」


そう呟いた彼の声は、どこか遠い未来への予感を秘めていた。

それが、やがて世界を揺るがす物語の始まりであることを、二人はまだ知らなかった。


良かったら他の作品も読んでみてね。

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