換気線
遠くで教会の鐘の音が響いて、今にも空が泣き出しそうに雲が立ち込めていた。
「こっちくんなよ!」
「そっから入ってこないでよ!」
「あっちいけや!」
「しっしっ!」
自分の境界線を主張している白い線。
チョークのような石ころでアスファルトに線がひかれている。
それは自分の占有領域とばかりに、誰もが自分のエリアを主張していた。
「あんたの菌がこっちにくるじゃないの!」
「お前の菌をこっちにうつして責任とれんのかよ!」
「どっかいけや!」
「しっしっ!」
白いチョークのような石ころでアスファルトに線がひかれている換気線。
この白い線は境界線であり換気の線でもある不思議な線で除菌効果もあるらしい。
「だからこっちくんなって!」
「だからそっから入ってこないでよ!」
「だからあっちいけや!」
「しっ!しっ!」
雷が光り雷鳴がとどろくと、突然の豪雨がすべてを洗い流し、空に虹がかかっていた。