千紫万紅のリプレイス Action 1-2
「もう気づいていると思いますが、私は真千さんのファンです。」
私が言葉に詰まる様子を彼女は見逃さなかった。
「何だかあまり『ファン』って言葉がしっくり来てないみたいね。」
「そうかもしれません…、『ファン』って言葉も今初めて使ったかもしれないです。私が真千さんのことを最初に気になったのは同じ高校にいるときで、そのときはただの先輩後輩の関係です。その一年後に真千さんがミュージシャンとして活動しているのをリスナーとして好きになりましたけど、素性を知ってる人の『ファン』というのも何か変な感じがして…。」
「ミーハーみたいで嫌?」
「嫌…とまでは言いません。他のファンに対して古参マウントを取りたい訳ではないですし、自分が優位な場所にいるとも思ってません。自分の立ち位置は【ただのリスナー】だとちゃんと弁えてます。でも、何か引っかかるものがあると言いますか…。」
「なるほど…。あっ、折角なら高校生の頃の話から聞きたいです。」
-(えー…っと、この人はこの状況を恋バナを披露する場とかと勘違いしてないかな?)-
「あの…、本気で言ってます?」
「本気よ。私が知らないあの人の話、気になるもの。」
『誰にも言わない』とは言われているものの、立場は圧倒的不利に変わりない…。
ここは腹を割って話すしかなさそうだ。
「わかりました。じゃあ話しますけど…、その前に大事なことを忘れてました。」
「何でしょう?」
「大変遅くなりましたが、私は【籠崎 燐】と言います。」
今まで素性がバレるのが怖くて名乗れなかったけど、浮世離れした彼女と対面していると、隠しているのもしょうもないと思えてしまった。
「私は【折坂 寧勇】です。苗字で呼ばれるのは慣れてないので、できれば下の名前で呼んで頂けますか?」
「分かりました。じゃあ寧勇さんと呼んでいいでしょうか?」
「それも良いのだけれど【ネイササン】って言いづらいでしょ?私は呼び捨てでも構いませんよ。」
-(どの立場で呼び捨てが出来ると!?出来ないに決まってるでしょ…。)-
「いえ…、とりあえず寧勇さんでお願いします。」
「そうですか。では、私も燐さんと呼んで構いませんか?」
「はい、好きに呼んで頂いて構いません。では高校生の頃の話から始めさせてもらいます。」
「お願いします。」
「…最初に真千さんとお話したのは私が高校一年で、真千さんが三年のときです。」
「ということは…燐さんは今年二十歳ってことですか?」
「もうすぐ二十歳です。」
「じゃあ私と同い年ですね。」
「…え!?」
-(マジかぁ。同じ二十歳でこの差はエグい…。寧勇さんが美人過ぎて、この低身長童顔ではどう足掻いても勝てない…。)-
「同い年でしたか…。」
「今からでもタメ口で構いませんよ。」
「勘弁してください。とりあえず話続けますんで…聞いてもらえますか?」
「はい。」
お互いの名前と年齢が分かったところで、私はここに至る経緯を(何故か四年も遡って)話し始めた。
その頃の私と真千さんは【しがない文化部員 籠崎燐】と【生徒会長 望月壬】という関係だった。