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[和がれゆく怯懦気のライラ] Action 14ー3[前](Roura's short story.)

 十月五日、午後四時を過ぎた駅ビルで、俺は今日の為のお酒を見繕おうと一人食品フロアを歩き回っていた。


-(タピオカミルクティーのお酒…?こんなのが本当に美味しいのかな?)-


 普段コンビニやスーパーでは手に入らないような…何か面白いお酒がないものかと思い、俺は品揃えの多いお店に入って色々と商品を見て回った。しかし思っていた以上に奇抜なお酒が多くあり、想定以上に買い物へ時間を費やしてしまっていた。


-(家飲みなんだし、余ったら保管しておけば良いだけか…。ちょっと冒険したものを買ってみるのも話題作りには丁度いいし、これも一応買ってみるか…。)-


 そう思い、俺は手に持っていたミルクティー味のお酒を二つ籠の中に放り込んだ。その他にも見た目の可愛さSNSを見て気になっていた物など…、少しでもネタになりそうなお酒を適当に放り入れていった。


-(それぞれが好きそうなお酒もちゃんと用意しとかないとな…。フルーツ酒とハイボール…、氷華用の度数が低めのヤツと…、あとは…--。)-


 先日の飲み会の様子を思い出しながら、俺は三人が好きそうなお酒を選ぼうと適当に歩を進めていた。あまり広いとは言えない店内通路で商品棚に目を奪われていると、ふと後ろからやって来た一人の男性客と俺の持っている籠が激しくぶつかってしまった。


「あっ…、すいません。」


 籠の中にあった瓶のお酒がぶつかったことでカシャカシャという音が鳴り響いてしまい、驚き焦った俺は直ぐに男性に謝りを入れた。


「いえ、俺の方からぶつかってしまったんで、こちらこそ申し訳なかったです。凄い音が鳴りましたけど、籠の中は大丈夫そうですか?」

「え…!?」


 男性に指摘され、俺は慌てて籠の中を確認したが、商品が割れている様子はなく全て無事だった。だけど籠の中の商品が、いかにも『女子会』といった感じの可愛いラインナップになっていた為、男性にそれを見られた俺は、若干恥ずかしさを感じてしまった。


「あー…、商品は大丈夫そうです。ただ派手に音が鳴ってしまっただけですね…。」(※気まずい)

「それなら良かった。お兄さんの選んでるお酒…、どうも色付きのものが多い気がしたんで、割れて服が汚れてないかってちょっと心配になったんですよ。」


-(めちゃくちゃ良い人だな…。わざわざそこまで心配してくれたんだ。…ってか顔カッコ良っ!?)-


 ぱっと見同じ歳くらいに思えるその男性は、改めて見ると人並み優れる顔面の持ち主だった。気遣いができ、顔が良く、おまけにイケボ…、そんな紳士な男性に、俺は思わず(嫉妬的な意味で)目を奪われそうになっていた。


 しかし…、何故か逆にその男性客の方が、俺の顔を見て思わし気な表情を浮かべ始めていた。


-(ヤバッ…、顔見過ぎたかな?)-


「すみません…、俺と何処かでお会いしたことありませんか?」

「…え?」


 男性からのその問いかけに、俺は頭をフル回転させて【この顔】の記憶を引き出そうとしたが、何も思い当たるものが浮かばなかった。


-(マナーの良さや口調から察するに、多分仕事をしている人なんだろうな。そんな人と知り合う機会なんて、俺には無いはずなんだけど…。)-


 学友・接客相手・行きつけ店の店員…、様々な可能性を考えたが、結局どれもしっくりこなかった。この出来の良い顔面を且つて見たことがあるとも思えず…、『きっと男性の勘違いだろう』と判断した俺は、やんわりと否定の言葉を並べることにした。


「いえ…、俺は一介の学生なので、仕事相手とかを想像されてるなら勘違いなのかと思います。もし顔見知りという可能性があるとしても、飲食店の定員とお客くらいの関係性しかないと思うので、印象に残るような仲では無いかと…。」

「そう…ですか。すみません、急に変なこと聞いてしまって。」

「いえいえ、何処にでもいる平凡な顔だと思うので、そういうこともありますよ。気にしないでください。……。」


 そう言った直後、何故か俺は引っ掛かるものを感じ始めていた。


-(あれ、何でだろう…。今更になって何処かで会った気がしてきた…。)-


 俺は顔を見て『会ったことはない』と判断してしまったが、男性の声を聞いているうちに『何処かで聞いたことがある』という思いがチラつき始めてしまった。しかし俺は既に否定をしてしまった後だったので、わざわざそれを伝えるということまでは出来なかった。


-(俺は一体何処であの"声"を聞いたんだろうか…?)-

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