表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

スペシリーズ

密室から抜け出したい

作者: 寿々喜 節句
掲載日:2021/12/07

 がたん。

 大きな音と激しい揺れで、私と先輩が乗るエレベーターの電気が消え動きが止まった。

「砂川先輩!」

「大丈夫か、小花さん。停電で閉じ込められたようだ」

「怖いです」

「無理もない」

 砂川先輩はそう言うと、スマホのライトで非常ボタンを探し、助けを求めた。

「しばらくしたら助けが来るはずだ」

「ありがとうございます……。でも怖いです」

 私は暗いところが苦手だ。先輩がいるとわかっていても、やはり怖い。泣きそうだ。

「これを観るといい」

 そう言って先輩はスマホの画面を私に向けた。

「くりくりまるですか?」

 先輩の飼っている柴犬が無邪気に遊んでいる動画だった。

 先輩なりに私を元気づけようとしてくれているのだろう。

 今私は恐怖で気持ちがやられている分、優しさでも泣きそうになっている。

「そうだ。生前のな」

「え?」

 死んだの? くりくりまる死んだの?

 どういうこと? 聞いてないんだけど。

「呆気なかった」

 暗くて顔が見えない分、余計に淡々と聞こえる。

「うそ……」

「本当だ」

 お別れの挨拶も言えていない。

 不安と恐怖と悲しみで、私の気持ちは限界を迎えた。

 自然と涙がこぼれた。

「なんで言ってくれなかったんですか!」

「それはだって」

「だってじゃないです!」

「落ち着いてくれ、小花さん」

「落ち着けるわけないでしょ! こんな状況でそんなこと言われて!」

 くりくりまるが死んだなんて、今言わないでよ。

 あの無邪気なくりくりまるが頭に浮かぶ。

「小花さん、違うんだ。このくりくりまるは小花さんの知っているくりくりまるの母親だ」

「え?」

 先輩は何を言っているのだろうか?

「このくりくりまるは出産と共に亡くなった。その時生まれたのが小花さんの知っているくりくりまるだ」

「母親と名前が一緒なんですか?」

「ああ。他の名前を考えていたが、あまりにも似ていたからな。そう名付ける他なかった。だからくりくりまるは世襲制だ」

 紛らわしいわッ! 変なとこでスぺるなよ!

 でも……ってことは……。

「じゃあくりくりまるは生きてるんですね?」

「ああ、二代目くりくりまるは健在だ」

「よかったぁああ。うわあーん」

 安心して涙があふれた。

 その時、扉が開かれ光が差し込んだ。

「大丈夫か!?」

 作業服の大人が入ってきた。

「うわあーん」

「怖かったか? もう安心だ。ん? 君、この子に何かしたのか?」

 作業服の大人は砂川先輩を疑うように言った。

「いえ、僕は何も……」

 私は意地悪をしたくなったので、しばらく助けなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] >いえ、僕は何も…… このときのスペ先輩の表情、見たかったなぁ……w [気になる点] >このくりくりまるは出産と共に亡くなった でも、このときのスペ先輩、つらかっただろうなぁ。 二代目…
[良い点] なんか…良き♡♪ですね~…♡♪ 砂川先輩…と、小花ちゃんの世界… 好きなんですよ~…♡♪ 第一部は、終わっちゃいましたが… 第二部も、必ず読みます!!!!!! 『ジョジョの奇妙な冒険』みた…
[気になる点] そこで二世ではなく、一世の写真を見せるあたりが、スペだなあ。 [一言] 屋号か。(笑) 是非くりくりまる三世には立派な大泥棒になってもらいたい。(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ