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第4話 夢みるお仕事行ってみよー

「うーん、これはどうしようかなー」


 この日、いつものようにハローワークを訪れた矢切の目に写ったのは、一枚の求人票を前にして考え込む灰田の姿であった。


「なんだ?あんたが悩むとは珍しいな」

「あ、はい、今回用意した職場は戦時下でして...前回のお話もあった手前、流石に戦地の職場なんて紹介するのはいかがかと。しかも放射線被爆の危険もあるそうで」

「まあ、ようやくアンタも常識が分かってきたか。折角だから見せてくれよ」

「かしこまりました」



○新型重機開発・運用


1 場所 サイド7


2 業種 重機の開発・整備


3 仕事の内容

 宇宙開発時代の発展に伴い、わが社は新型作業機器の開発に力を入れております。事業拡大に伴い、即戦力になる人材を求めております。


4 雇用形態 正社員(年2回の昇給制度有り)


5 経験等

 原子力機関での勤務経験者歓迎 


6 必要な資格 

 ガス溶接講習修了

 アーク溶接特別教育

 電気工事士

 高所作業車運転技能講習修了


7 年齢 35才以下


8 給与 240,000円~30,0000 (賞与有り年2回)

    健康保険完備


9 就業時間 9時から18時


10 出勤 週休2日制


11 注意事項 

 重機には新型の核融合炉を搭載しております。放射線に対しては万全の備えをしておりますが、放射線管理手帳を携行していただきます。

 

「戦地にある原発でのお仕事みたいですね」

「違うわ、ガ○ダ○だ!!」


 矢切は血相を変えて灰田の手を握りしめる。


「ここにしてくれ!!夢だったんだ!!」

「え、でも戦争中みたいですよ」

「良いから、男のロマンなんだよ!!」


 珍しく矢切は目をキラキラさせて灰田に懇願する。男の子なら誰もが一度は憧れたであろう世界、それが現実になろうとしていることに久しく忘れていた彼の冒険心が呼び起これていた。


「わ、分かりました、少々お待ちを」


 矢切に押しきられ、灰田はいつもの要領で電話を掛ける。


「もしもし、あ、担当のテ○・○イさんをお願いします...え、あ、そうなんですか?でも日付が...え、急遽変更になったのでもう出発されたと?」


 受話器を置いた灰田は申し訳なさそうに口を開く。


「担当者が一昨日からサイド7に出向中だそうです」

「あー!!一歩遅かった!!」


 ガ○ダ○ファンにとって夢のような求人だったが、時既に遅し。矢切はこの日に来てしまったことに激しく後悔する。


「まてよ、一昨日にジャ○ロー出港ってまさか...急いで担当者に現地で合流できないか聞いてみてくれ!!」

「あ、はい、えと...ホ○イト○ースは確か...」


 灰田はそう言いながら、机の下から分厚い電話帳を取り出し、パラパラと目的のページを探す。


「連邦軍最高の秘密情報なのにその電話帳に番号が載ってるんかよ」

「あ、見ないで下さい、外の電話からイタ電されると困るので」

「しねえよ!!つうか、外の電話でも繋がるのかよ!?」

「あ、あった、あった」


 再び灰田は受話器のダイアルを回して問い合わせてみる。


「駄目です、乗船しているホ○イト○ースに問い合わせたら敵の襲撃があって、テ○・○イさんも行方不明でよく分からないから勘弁して欲しいと電話に出た息子さんが言ってました」

「あー、間に合わなかった...完全にアウトなやつだ。ア○○も可哀想に」

「戦争は醜いですね」


 子供の頃からの夢が叶わず、矢切はショックで項垂れる。


「ア○○君とお知り合いだったのですか?」

「...有名だぞ、知らないのか?」

「あー、あの有名歌手の親戚!!」

「ちゃうわ!!親父にぶたれちまえ!!」


 最早、突っ込みが板に付いてきた矢切は即座に否定する。


「父さんにだってぶたれたことないのに何てこと言うんですか!!」

「あんたが安○奈○恵と一緒にした神経を疑うわ!!」

「だって女の子なら真っ先に関係あると思うじゃないですか!!」

「共演したこともあるが、なんも関係ないわ。寧ろ、向こうが先だし。あんた、なんも知らんでよくここの受付ができるな」

「へへへ、私もよく分からないんですが。今日の分はDVDを借りて予習したんですが、なんか格闘技のアニメみたいでよく分からなかったです」

「よりにもよってGガ○ダ○観てたのかよ!?それはこれと世界が違うぞ!!」

「あー、そうでしたか。どうも私がガ○ダ○ファ○トと冷凍刑になっているケ○ゾ○博士の話をしても、テ○・○イさんが知らないって言って困ってた理由が今分かりました」

「向こうもいきなり殴り合うガ○ダ○の話を聞かされてビックリしたろうに。しかしまあ、あんたがここにいるのもその天然な性格だからじゃねえか」


 何となくであったが、矢切はここに灰田が勤務している理由を自分なりに納得する。そんな彼の思いを知らない彼女は再び書類の束から新たな求人を持ってくる。


「さあ気を取り直して新しいのを紹介します。これもファンから人気のあるお仕事みたいですが、確認しようにもDVDがレンタル中で確認できなかったので矢切様はご存知ですか?」

「どれどれ?」



○有名金融機関の中途採用


1 場所 東京都千代田区


2 業種 金融業


3 仕事の内容

 わが社は金融業のみならず建築や観光産業にも参入しており、人材を求めております。社員は充実した教育制度を元に様々な部署にて活躍している明るい職場です。


4 雇用形態 契約社員(正社員登用制度有り)

      制服及びサングラス貸与  


5 経験等

 運動部及び料理経験者歓迎

 多重債務者でないこと


6 必要な資格 普通自動車免許


7 年齢 40才以下


8 給与 200,000~280,000(賞与有り 年2回)

    福利厚生施設完備


9 就業時間 8時から17時(フルタイム制)


10 休日 週休2日制


11 注意事項 

  社の規定する守秘義務を遵守していただきます。

  採用後は全国の支店にて勤務することになります。(定期異動)

  仕事によっては船に乗ったり地下に入ることもあります。

  

「今までと比べれば至って普通だが、船に乗ったり地下に入る理由はなんだ?」

「はい、債権者と名のつく愚かなカスどもを押し込む必要があるからと」

「帝○グループじゃねえか!!地下労働者の世話もすんのかよ!!」

「彼らは暇さえあればみんなでサイコロを転がすのが好きな愉快な方々で従順だから大丈夫だと」

「チンチロな、それで外出するためのペリカを巻き上げてるから」

「チン○○チロ○○?」

「下ネタじゃねえか!!丁半の賭博だよ、時代劇であったろ!!」

「そうでしたか、あ、でもこの会社は豪華客船も持ってますよ」

「メインイベントは焼き土下座だぞ。見せしめに上司が焼かれる姿は実際に見たくないわ」

「会長は面白い方で有名だと」

「金の亡者だがな」


 おおよそ、人生で最も付き合いたくない金貸しを紹介されたことに矢切は呆れてものが言えない有り様であった。


「人間は捨てたくないわ」

「辞めますか?」

「ああ、失敗すれば焼かれるか地下に送られる羽目になるし」

「また駄目ですか」

「ああ、夢が一気に冷めたわ」


 夢のお仕事から一転して地獄のお仕事を紹介され、矢切のテンションは駄々下がりであった。


「あー、もう帰って良いか?もう疲れた」

「待ってください、まだもう一件あります。これも人気アニメに関わるお仕事ですよ!!ちゃんとDVD借りて勉強しました!!」

「あん?アンタもしつこいな...どうせ録な会社じゃないよな」

「今度は有名な月刊誌です!!その名もレ○ア○ト!!」

「また藤○啓○かよ!!そこは非合法で当局から追われてるぞ!!」

「今日はもうここしか無いんですよー!!可愛い女の子の多い職場ですよ!!」

「みんな彼氏持ちだから断る!!しかも、うち一人は市民を虐殺した経験もあるからな!!」

「エ○レ○ちゃん可愛いのに何てこと言うんですか!!」


 有名な非合法組織の某空賊稼業を薦められた矢切は再び灰田と押し問答を繰り返すこととなり、結局この日もそのまま灰田の終業時間を迎えることになる。


「あ、流れ星だー」

「そうだな」


 その日の夜、矢切は姪とともに川原で夜空を見上げていた。


「お星様、綺麗だねー」

「そうだな、今日は一段と綺麗だ」


 異世界とはいえ、この広い宇宙に出られる可能性があったことに残念さを感じつつも、現実世界でのんびり星を眺めるのも悪くはない。矢切がそう感じていた矢先、夜空に一際明るい流れ星があることに気付く。


「おじちゃーん、おっきな流れ星だー」

「あれは、まさか...」


 先程とは違い、虹色に輝くそれはサーフィンのように夜空を自在に駆けるように動き、そのまま上空へと消えていった。


「きれーい...」

「まさかニル○ァーシ○なのか...」

「え?おじさん知ってるの?」

「いや、なんでもない。帰ろうか」


 現実に戻った矢切は姪の手を繋いで家路に着くことにする。


「ねえねえ、私お星様にお願いしたよ!!」

「お、何かな?」

「おじさんがしゅーしょくできますよーにって!!」

「ぐさ!?」


 少女がお星様に願った矢切の再就職、それがいつ叶うのかは灰田に委ねられている。

 ただ一つ言えることは、この日も矢切の仕事は見つかることは無かった。

個人的にはエ○レカ○ブンはやはりホ○ンドが好きです。あとはチ○ールズさんが良いですね。この歳になると反抗期の息子(主人公)に対し、不器用で頑固な父親(みたいな存在の大人)がどう接すれば良いのかという葛藤がよく描かれているところが共感できます。

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