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第3話 ガテン系行ってみる?

「お待たせしました矢切様、本日もよろしくお願いします」

「ああ、よろしく」


 普段どおりハキハキとする灰田に対し、とんでもない職場を紹介された矢切は不安を抱いていた。


「今回はちゃんとしたのを紹介してくれよな」

「大丈夫です、ちゃんと企業様とリサーチを済ませてますので」

「本当かよ」

「それはそうと、建築関係にご興味ありませんか?」

「ん?ああ、バイトで長く内装屋をしてたから一通りは分かるぞ」

「良かったです。でしたらこちらを紹介させていただきます」


1 場所 シガンナ区


2 業種 建築関係


3 仕事の内容

 外壁の補修


4 雇用形態 派遣  


5 経験等

 経験者歓迎、兵団出身者優遇

 巨人を前にしても萎縮しない。 


6 必要な資格 2級建築士(正社員雇用優遇)

       クレーン・デリック操縦免許

       玉掛け


7 年齢 40才以下


8 給与 240,000~400,000

    傷害保険完備


9 就業時間 8時から17時(フルタイム制)


10 休日 完全週休2日制(振替制度有り)


11 注意事項 

  巨人が来ても動揺しないで下さい。

  兵団からの要請があれば、大砲の運搬も実施します。

  当社の規定する守秘義務を遵守してもらいます。


「まんま、進○の巨○じゃねえか!!」

「先方の話ですと、大きくて100年たっても壊れない丈夫な壁だから安心ですと」

「これから破壊されるんだよ!!おもいっきしヤバイわ」

「そうなんですか?職場にいる球団の方々は昼間からお酒を飲む陽気な方々で親しみやすいと。やっぱり優勝したらビールかけをする方々はお酒が好きですね!!巨人・大砲・卵焼き!!」

「球団じゃねえ、兵団だ!!その油断が命取りなんだよ!!つうか、あんた漫画やアニメを見てないのか?」

「うちは母がそういうの煩いので」

「じゃあ紹介するなよ!!」

「だって趣味に巨人ファンだって書いてあるから用意したんですよ。東京ドーム以外でジャ○アン○が来るなんて素晴らしいじゃないですか!!」

「これは野球関係ねえよ!!だから勘違いしてたのかよ。しかも、大砲と大鵬を間違えるって意味分かってんのか!?こっちはガチの巨人だ!!松井よりもデカイ10メートル級の奴で人間を食う奴だ!!」

「またまたあ、そんなのノロマでよけれますよ」

「何故か素早いんだよ、そいつらは!!引退した藤村大介以上の俊足で馬か立体機動装置がないと逃げられねえよ」


 あまりにも突っ込み過ぎたため、矢切は肩で息をしながらペットボトルを開けて水を飲む。


「はあ、はあ...野球場の修繕と勘違いしてるなら、その職場は危ないから断れよ。行った途端に死人が出るぞ」

「そうなんですか?」

「ああ、やばいくらいにデカイ巨人が外から現れて壁をぶっ壊すんだよ。これから虐殺が起きるとんでもない現場だ」

「あわわわ、えらいこっちゃ...巨人軍は海外から強力な刺客を...」

「いい加減、野球から離れろ!!そして、早くその書類を処分しろ!!このハローワークから巨人の餌を出さないうちに」

「は、はい、かしこまりました!!」


 矢切に言われるがまま、灰田はその求人票を側に用意したシュレッダーに入れる。


「申し訳ありません」

「ああ、危うく犠牲者を出すとこだったな。リサーチが悪すぎるぞ、誰だ雇い主は」

「えと、向こうの担当は兵団のハ○ネ○さんです」

「酔っぱらい本人かよ!?つうか、ここで前回の春日部の父ちゃんと繋がるんかい!!う、ゴホゴホ...」


 再びマニアックな突っ込みを挟んでしまい、矢切は咳き込んでしまう。


「だ、大丈夫ですか?」

「ハア、ハア、ハア...すまん、言い過ぎた、大丈夫だ...」

「では、次をご紹介させていただきます」

「まだやるのかよ!!」


 職業意識からか、再び仕事を紹介する灰田に対し、矢切は椅子から転げ落ちてしまう。


「大丈夫ですかー?」

「あ、ああ、いてて...ん?」


 矢切は立ち上がるとともに、新たな求人票が床に落ちていたことに気づき、恐る恐る拾い上げて内容を確認する。



○宇宙をまたにかけるお仕事


1 場所 タトゥイーン


2 業種 運送業


3 仕事の内容

 社長と従業員二人の小さな会社ですが、営業範囲は広く様々な星を旅しています。


4 雇用形態 正社員  


5 経験等

 整備士経験者優遇

 ブラスターの取扱い(初心者教育制度有り)


6 必要な資格 特になし(ウーキー語検定保有者求む)


7 年齢 35才以下


8 給与 150,000~200,000(賞与有り 不定期 )


9 就業時間 9時から17時(変動有り)


10 休日 週休2日制(不定期)


11 注意事項 

 帝国軍とも交戦する危険がありますが、銀河最速の宇宙船で全て逃げ切ることに成功してきたので大丈夫です。

 同僚のウーキーは気難しいのでチェスを通じて話し相手になってください。見た目に反して根は良いやつです。


「ウーキー語検定ってどこで取れるんだ?」

「私、持ってますよ。通信教育でいけます、うー、あー」

「先に英語を覚えろよ!!つうか、この後デ○・ス○ーに捕まるじゃねえか!!やべえよ、ただの失業者がダー○ベ○ダ○卿に立ち向かえねえよ」 

「社長さんは約束を必ず成し遂げる方だと。男気溢れる勇敢な人だと部下のウーキーさんがおっしゃってましたよ」

「ジ○バ・ザ・○ットの約束は破ってたけどな」

「そこはちゃんと守るように説得を。その方からもゴミの運搬の求人がありますが、約束を破る取引先の方を冷凍庫に閉じ込めるお茶目な性格だと聞いてます」

「奴も求人出してるのかよ!!つうか、そいつの趣味はそんな生易しくねえ、正しくは冷凍刑だよ!!凍らされて壁に飾られちまうんだ!!ゴミ運搬って、実態は宇宙生物の胃袋に不要な奴を突き落とす処刑場だよ!!」

「ひいい!?」


 漫画やアニメ、映画を観るのが好きな矢切と違い、真面目過ぎる母に従ってきた灰田はス○ーウ○ー○を知らなかった。故に企業主に言われるがままの内容で仕事を勧めてしまった次第である。


「宇宙飛行士を夢見た人にお薦めだと思ってました」

「やれやれ...また危うく地獄に巻き込まれるとこだったよ。つうか、タトゥイーンにはどうやって行くんだ?」

「えと、正規の航路から外れているので密輸船に乗り合わせて欲しいと」

「既に命の保証がねえよ!!しかもあいつ、銀河では敵ばかりだぞ。命が幾つあってもたりねえや」


 結局この日も矢切が突っ込み続けた挙げ句、灰田の終業時間を迎えてしまった。

 彼女に突っ込み疲れた矢切は癒しを求め、この日は実家に立ち寄ることにした。


「ただいまー、姉ちゃんいるか?」

「おじちゃーん」


 実家に入って真っ先に姿を表したのは二つに分けたお下げが可愛らしい少女であった。彼女は矢切を見た瞬間、満面の笑顔で出迎えてくれた。


「おかえりー!!」

「ははは、ただいま」


 灰田を通じて異様な世界と接することになった矢切にとって実の娘ではないものの、姪っ子は心の癒しであり目の奥に入れても痛くない存在であった。 


「あんた、今日もダメだったの?」


 姪っ子に続いて会社から帰ったばかりなのか、スーツ姿の女性が姿を表す。


「あー、ダメだった。今日は危ない仕事ばかりだったよ」

「もう、早く仕事を決めてもらわないと困るわ」

「すまねえ」


 矢切にとって歳の離れた姉は幼い頃から頭が上がらない存在であった。


「夕飯食べてく?母さんが用意してくれたけど」

「あ、ああ、いつもすまねえな」


 姉に誘われ、矢切はいそいそと靴を脱いで玄関に上がる。

 

「夕飯は何?」

「あんたの好きな卵焼きよ」

「え?」

「嫌なの?珍しい」

「あ、いや、なんか変なこと思い出してさ」


 リビングに入ると母が用意してくれていた夕飯が並べられており、矢切は昔から決まっていたいつもの席に座る。彼が席に着いたのに合わせ、姪もいそいそと隣の椅子によじ登り、幼稚園であった出来事を話始める。


「おじちゃーん、今日幼稚園でウーキーさん達と遊んだよ」

「へえ...ウーキーさん?英語の先生かな?」

「違うの、幼稚園の工事に来ていた毛むくじゃらのおじさん達」

「毛むくじゃら?」

「もう、この子ったら今日はその話ばかりね」


 姉はそう言いながら、スマホで撮った画像を矢切に見せる。


「ウーキー族っていうアマゾンの奥地に住む民族出身らしいのよ」

「え...」


 画像に写るのは黄色いヘルメットを被り姪っ子を無邪気に肩車する毛むくじゃらの存在であった。


「来ていた社長さんの話だと以前は海外の鉱山で働いてたけど、雇用条件が悪くてストライキが起きたらしいの。それで働けなくなって日本に来たって。種族の掟で着ぐるみをする変わった人達だけど、みんな気さくで子供好きの良い人達で今じゃすっかり人気者よ」

「...社長はどんな人だ?」

「え、ウーキー族でない外国の人だけど気さくで格好良かったわ。昔は運送業をしてたけど、ウーキーさん達のために会社を起こしたみたい。ウーキーさん達も「社長には命の借りがある」って凄く信頼してて良い会社みたいよ。あんたも雇ってもらったら?」

「みんなウーキーさん達大好きだよ!!」

(何で気付かないんだ...そういや、姉貴はス○ーウォー○に興味無かったような)


 ウーキー達の意外な再就職先に驚きつつも、矢切はふと考えを改めてみる。


「ウーキー語検定取ろうかな」


 矢切が珍しくやる気を震い立たせたのもつかの間、翌日になって灰田に受験日を訪ねたところ、半年先と聞き頓挫することになる。

 最後のオチはハ○・ソ○の人が一時期大工をしていたことをネタにしました。役者志望でしたが目が出ないため一時期、役者をあきらめて大工に転職して様々なお家のリフォームをしていたら、大工仕事を通じて知り合った映画プロデューサーの目にとまり、役者に復帰。更にはプロデューサーが彼にジョ○ジ・ル○カ○を紹介したことにより、最終的には最大の名作ス○ーウォ○ズの出演に繋がりました。

 名優も挫折や転職によってスターになるわけですから、人生何が起きるか分かりませんね。


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