表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/78

スランプ脱却

ちょっと長めです。

男はその場に崩れ落ちた。



すると、ワッ!!と辺りがざわめき拍手が鳴り響いた。あんな大きな男を小さな女の子が倒したのだ。

皆、驚きもするだろう。

それによって、私はハッと我に帰り、辺りを見回した。

当然、皆はこっちを見てる。やばい。目立ってしまった。その上、師匠との稽古には完全遅刻!!

焦った私はその場を立ち去ろうとすると、

「待って!!」

誰かに呼び止められた。反射的に振り返ると、

さっきの女の子が、

「さっきはごめんなさい!!私は女だからって決めつけられるのが一番嫌いなのに、子供だからって勝手に弱いって決めつけてしまって…。」

早口にそう言ってバッと頭を下げた。

急に謝られ、どう答えるか迷っていると、

「嬢ちゃん、すげーな!!」

「速すぎて動きが見えなかったよ。」

「あの男に勝つとは…。」

と、周りにいた人達に囲まれてしまった。その興味津々といった様子に、若干引いてしまった。

目の前では頭を下げられ、周りには囲まれて、かなりのカオス状態。

私はいったいどうすればいいの!?

このままでは師匠との稽古も遅れるいっぽうだし!

そんな私に救世主が現れた。



「あんた達!その子が困ってるだろ!?さっさと仕事に戻りな!!」

さっき殴られていた女の人だった。手当てはもう終えたらしい。

「ちぇっ、分かったよ。」

「ヘレン姉さんには逆えねー!」

「怖い怖い。」

意外にもその言葉に周りの男達は素直に従い、その場を離れて行った。

もしかしたら、ヘレンさん?はこの村でも影響力がある人なのかもしれない。

まあ、何がどうあれ、助かった!と思っていると、

「ちょっと、そこのお嬢ちゃん!」

ヘレンさんは私に話しかけてきた。

「えっと、はい?」

話しかけられるとは思ってなかったから、多少驚きながら返事をすると、

「さっきはありがとう。本当に助かったよ。」

ヘレンさんはにっこり笑ってそう言った。

身長は女性にしては高く、いかにも姉御!って感じの人だった。

「あっ!私からもありがとう!!」

ずっと下を向いていた女の子が、顔を上げて大きな声で言った。

ヘレンさんの娘さんらしいけど、こちらは可愛らしい外見で身長も低かった。

「いや、全然大丈夫です。私が勝手にやった事なんで…。」

私はそう言って、急いでその場を立ち去ろうとすると、

「よかったら、寄って行かないかい?」

「そうよ!お礼もしたいしね!」

親子のゴリ押しによって店へと入ることになってしまった。

店の中は暴れた形跡が残っていて多少荒れていたけど、それほどではなかった。

店の中を見回していると、ヘレンさんに座るよう勧められ、私は席に着いた。

すると、

「私はアンナ!16歳でここで今は働いてるの!!」

すぐにアンナさんが口を開いた。

さらに話し続けようとするアンナさんに

「アンナ、あんたは一旦黙ってな。うるさいから。

えっと、まあ私はこの店を切り盛りしてるヘレン。さっきは本当に助かったよ。ありがとう。」

黙るよう指示しながら、頭を軽く叩いてヘレンさんはそう言った。

「ちょっと、お母さん!私が先にこの子と知り合ったんだからね!!」

不服そうにアンナさんはヘレンさんを睨んだ。

「そういうのは関係ないだろう。」

ヘレンさんもアンナさんを睨み返した。

その仲良さげな様子をを微笑ましく思いながらも、

「私はセリスです。年は12歳です。」

軽く、自己紹介をした。

「セリスっていうの!?綺麗な名前ね!!」

アンナさんが興奮してまた、言葉を続けようとしたところをヘレンさんが遮った。

「だから、あんたは黙ってな。」

その言葉に、アンナさんはまた不服そうな顔をしたけど、渋々口を閉じた。

「ところで、セリスちゃんは何でここに?ここに住んでるわけじゃないだろ?」

不思議そうにヘレンさんに尋ねられ、

「えっと、師匠いや、レイスさんに剣術を教えてもらいに行く途中なんです。」

私は答えた。

その言葉に何故かヘレンさんは目をパチクリさせ、

「あの堅物親父に?やめときな。あいつは剣を作る腕は確かだけど、かなり偏屈で気難しいんだから。」

と、咎めるように言った。

まあ、確かに師匠は頑固だから周りの人にはそう思われがちなのも分かる。

っていうか、結構通ってるのに誰も来ないからそうなのかなと予想はついてた。

友達いなさそうだなーって。

でも、師匠としては最適だし!私がフォローしなくては!!

「いや、もう教えてもらってるんです。さっきの男を倒せたのも師匠、いやレイスさんのおかげで!」

そう思って、師匠のおかげだと強調して言うと、

興味なさげに

「ふうん。まあ、偏屈なのは変わらないけどね。」

と、一蹴されてしまった。

どんだけ嫌われてんだ。師匠。



「とにかく、セリスちゃんがいなかったら状況はもっとひどくなってた。感謝してもしきれないよ。」

ヘレンさんか再びお礼を言い出したから、

「本当に大丈夫です!っていうか、そろそろ行かないとかなりやばいんで私、もう行きますね!?」

私はそう捲し立てて席を立った。

店を出ようとして、足を進めると、

「セリスちゃん!あの偏屈爺さんじゃなかった、レイスさんの所から帰る時とか行く前とか、暇な時にいつでも寄ってね!」

アンナさんが後ろからそう叫んだ。

前世でもこんな友達いたらよかったのに。

そう感じながらも笑顔で、

「はい!ちょくちょく、来させてもらいます!!」

店を出た。

とりあえず、やばい!!

私は全速力で走り、師匠の家へと向かった。



家に着くと、師匠が仁王立ちで待っていた。

「セリス、1時間もいったい何をしていたんだ。」

威圧的な声に震えそうになりながらも、

「いや、市場で色々ありまして…。とにかく、すいません!!」

私は頭を下げた。

師匠、かなり怒ってるよね。こりゃ下手すりゃ死ぬわ!!

そう思って歯を食いしばっていると、

師匠は呆れたようにため息をつきながら、

「もういい。とりあえず、いつもの稽古をするぞ。」

奥の方へと歩き始めた。

その様子に軽く拍子抜けだったけど、急いで後を追いかけた。



「遅い!!そんなんで捕まえられると思っているのか!!」

「はい!!」

やっぱり、全然捕まえられない!動きが速すぎる。

でも、とりあえず動かないと!!

追いかけながら師匠の肩に手を伸ばすと、

「甘い!わしの動きを追っていたら、いつまで経っても捕まえられなどしないぞ!!」

すぐに避けられた。

というか、動きを追わずにどうやって捕まえればいいのよ!

心の中でツッコミを入れていると、急にさっきの男との戦いを思い出した。

あの時はどうやっていただろう。もしかしたら、何かヒントがあるかも!

そう思ったけどすぐに思い直した。

いや、あいつと師匠ではレベルが全然違う。正に天と地ぐらいに。

あいつは倒せたけど…。あれが参考になるわけない。

また、思考を放棄してがむしゃらに追おうとした瞬間、頭に何かがよぎった。

そう、『倒せた』。

さっきの男は倒さないといけなかった。確実に。

でも、今は?師匠を倒さないといけないのか?

答えは否。師匠を倒す必要はない。触れればいい。それだけで。

私の中で、何かが吹っ切れたような気がした。

さっきはあの男の動きを予測して動いた。予測しよう。師匠の動きを。

先に動けばいける!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ