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許せない行為

私はいつものように、師匠のいるモリアまで走っていた。

師匠の動きはあんなに大きいのにすごく速くて私には到底捕まえられるような気がしない。

本当にどうしたらいいんだろう。



色々と考えながらもモリアに着いた。

師匠の家まで行くため、市場を抜けようとすると、

「俺の言うことが聞けねえって言うのか!!」

急に大きな怒声が聞こえ、食事処らしき所から女の人が突き飛ばされたように出てきた。

道に倒れ込んだ女の人はすぐさま立ち上がり、

「だから、ウチではそんなサービスしてないって言ってるだろ!」

負けじと声を張り上げた。

その様子を見物しようと人だかりができていたけど、助けようとする人はいなかった。

「何かあったんですか?」

私がそばにいた人に聞くも、

「あぁ?子供には関係ねえよ。」

と、顔を背けられてしまった。

ただ、周りの人の声を聞いていると、かなり強い男が店で暴れているらしい。

「客にサービスするのは当たり前だろ!!客は神と一緒なんだからよ。」

その男がニヤニヤしながら店を出てきた。

その様子に、

「うちの娘は料理を運ぶだけだよ!!体に触ったりなんて迷惑でしかないよ!!」

女の人は必死の形相で声を上げた。

要約すると、女の人が切り盛りする店で働いてる娘さんに、客であるその男がセクハラ行為を働いたらしい。

なのに、ヘラヘラ笑ってるとか本当に迷惑甚だしい。

私は男に対して怒りと軽蔑の目を向けた。

男は私には全く気づかず、女の人の言葉に顔を真っ赤にし、

「うるせえ!!」

拳を頬に振り下ろした。

女の人はそれを避けきれずバッと道に倒れ伏してしまった。

ひどい!!何も悪くない人に手を出すなんて!

私はそう思って飛び出そうとすると、

「ダメ!!子供が行っても殴られるだけだよ!!」

誰かにパッと手を掴まれた。

ビクッとして振り返ると、

「今、騎士団の人を呼びに行ったの。すぐに来てくれるから、お母さんのところに行っちゃダメ!!」

殴られている女の人の娘さんらしき女の子に咎められた。

「お母さんが殴られてるのに黙って見てるの!?」

私が怒鳴るように言うと、

「私だって嫌だよ!!でも、あの人はかなり強いの。私達じゃ手に負えないわ…。」

涙で顔を歪ませて女の子は怒鳴り返すように言った。

「しかも、貴方はまだ子供でしょ?すぐにやられてしまう。怪我はして欲しくないの。」

女の子は真剣な顔で言葉を続けた。

私はその言葉に対して、大丈夫!と言いたかった。この3ヶ月間師匠の元で体術を学んできたし、それなりに強くなっている。

でも、頭によぎってしまった。

師匠を捕まえることすらできない私が役に立てるのだろうかと。

女の子が言うようにすぐにやられてしまうんじゃないかと。

黙った私の様子に納得したと思ったのか、

「騎士団の人がきっと助けてくれるわ。心配してくれてありがとう。」

安心させるように女の子は笑った。

その時、

「女のくせに!女は男の言うことを黙って聞いてりゃいいんだよ!!」

また、男の怒声が響いた。

『女のくせに』その言葉が聞こえた時に私はプツンと何かが切れてしまった。

女は黙って言う通りにすればいい。前世で何百回と言われた言葉。

そんな事…!

冗談じゃない!!

何で勝手に決められないといけないんだ。

私は女の子の手を振り切ってその場へと飛び出していった。

「やめなさい!!」

私が大きな声で男に向かって言った。

その声で男はこっちを振り返った。

一瞬怪訝そうな顔をしたけど、相手が子供だと分かったのかすぐに余裕を浮かべた顔をして

「はぁ?子供のくせに何言ってんだ。殴られたくなかったら引っ込んでな。」

と、私に近づいてきてそう言った。

油断しているのだろう。私が子供だから。

そんな言葉を無視して、私は男の足を大きく蹴って体勢を崩させた。

男は予想もしないその動きに呆気なく尻餅をついた。

いける!!

そう思って、私はその首に手刀を喰らわそうとしたけど、男は瞬時に避けて立ち上がった。

その顔には怒りが浮かび上がっており、さっきとは比べ物にならないほど怒っていることが分かった。

「このっ、ガキ…!!」

男はそう呟くと、私に襲いかかってきた。

咄嗟に後ろに跳んでそれを避けると、男はさらに拳を振り上げた。

このままじゃやられる。力勝負になったら勝ち目がない。

どうする。どうする!考えろ!!

私は頭をフル回転させた。

とりあえず、男がどうするか予想しないとダメだ。そう思った私は男の拳や腕の動きをよく見て、左へと避けた。

すると、その読みは当たっていたのか男の拳は右へと空を切った。

男は苛立ったように何発も拳を入れてきたけど、

既に私は男の動きを見切っていた。

単調な動き、怒りで周りが見えなくなるタイプ。

つまり、隙が生まれやすい。

私はその拳を避けながらも、男の動きをよく見ていた。

そして、これで決めようかと思ったのか、男が大きく腕を振りかぶったところで、私は後ろへと回った。

急にいなくなった私に戸惑って男は動きが一瞬鈍くなった。

今だ!!

私はその一瞬をついて背丈のある男の首まで跳び、手刀を喰らわせた。

「なっ!?」

モロに喰らった男は驚きの声を上げ、そのままその場に崩れ落ちた。

セリス、強い!

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