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陛下と対面

「おはようございます!!」

私は大きな声で挨拶をしながら、仕事場に入ろうとした。



すると、何やら慌てた様子でアルが出てきた。

「ちょっ、セリス!今は入っちゃダメ!!」

「えっ、どういうこと?」

いつも落ち着いているアルらしくないと思いながら、ひょいと部屋の中を覗く。

「だからダメだって!」

アルは私の視界を遮るように前に立ちはだかった。

「だから何でダメなの?」

私は静止してくるアルを押し切って中へと入った。



金の髪に蒼い瞳。最初に目に入ったのはそれだった。

「なっ…なっ…。」

「だから入るなって言ったのに…。」

私が驚きすぎて固まっているのを後ろから見ながらアルはため息をついた。



そこにいたのは国王陛下だった。

もうすぐ四十路を迎えるというのにそれを感じさせない若々しさ、王家特有の美貌。そしてその威圧感は国王としての威厳を表していた。

私はすぐさま平伏す。

「申し訳ございません。すぐさま出ていきます。」

そう言って下がろうとすると、

「いや別にかまわない。余が急に押しかけてしまっただけだからな。それにそなたとも話をしたいと思っていた。」

そんな風に言われ、私は驚きが隠せなかった。

私…何かしただろうか…。

緊張と驚きで冷や汗が止まらない。



「じゃあ、よろしく頼む。」

「分かりました。こちらも十分に注意します。」

団長と陛下の話も終わったのか、

「応接室を借りてもいいか?」

陛下はそうおっしゃった。

「勿論です。」

そして、私と陛下は応接室へと向かって行った。




「君には感謝しているんだ。」

開口一番、陛下はそう言われた。

「感謝…ですか?」

思いがけない事を言われてキョトンとしていると、

陛下は少し笑みを浮かべられ、

「そういうところなんだろうね。あの子達の心を溶かしてくれたのは。」

そう呟いた。

「エルヴィスには余もどう接していいか分からなくてな。本当に申し訳ない事をしたと思っている。」

陛下がそう続けられ、やっと私にも理解ができた。

多分、第二王子のことを言っているのだろう。

「いえ、私は何も。少し出過ぎたことを言ってしまったかもしれませんが…。」

そうだ。明らかに私はただ暴言を吐いただけにすぎない。

感謝されることなんてひとつもないのだ。

「エルヴィスの母は高位貴族達のあられもない言葉のせいで体を壊してしまってね。余も妹のように思っていたというのに守ってやれなかった。」

陛下は悔やむような表情でそう告げる。

「だから君には本当に感謝している。ありがとう。」

陛下は最後にそう言って頭を下げた。

「私の言葉なんかで第二王子殿下の役に立てたなら良かったです。」

私はにこやかに微笑んだ。



「そういえば、レティいや王妃も君に世話になったらしいね。」

陛下が応接室を出る時にそう言った。

「王妃殿下がですか?」

心当たりがなくて尋ねると、

「お忍びで町に出た時に絡まれてしまったところを助けてもらったと言っていたよ。」

陛下はやれやれといった様子で言った。

私は少し考えていたけれど、

「あっ!あの時の綺麗なご婦人ですね!!」

私は少し前の出来事を思い出した。

町を歩いていたら、綺麗な女の人が絡まれていたのだ。

服的には平民のものだったけど、身から溢れる高貴さが隠し切れていなかったから、お金目的で絡まれてたんだろうと思う。

「王妃は少しお転婆なところがあってね。もうすぐ四十路だというのにね。」

困ったものだという風に陛下は言っていたけれど、その言葉には愛情が溢れていた。

そして、

「まあ、君も頑張りなさい。」

最後に意味深な言葉を残して去って行ってしまった。




「陛下って素敵な人ね。」

私が自分の席に座ってゼン話しかけると、

「急にどうした?」

ゼンは顔も上げずに言う。

「今日お話ししたのよ。」

ただその瞬間に顔をグワっと上げた。

「話したのか!?」

「まあね。陛下とお話しできるなんて一生の自慢話だわ。」

私が胸を張って言うと、

「そうか…。それは良かったな。」

ゼンは何とも言えなさそうな表情をしていた。

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