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番外編9 あるメイドの恋

番外編です!

「ねえ、ユラって本当に災難よね。」

ふと、同僚に話しかけられた。

「どういう意味?」

意図がつかめなくて聞き返すと、

「どういう意味も何も、あの娼婦の娘の専属になったことに決まってるわよ!」

私を不愉快にさせる言動が返ってきた。

私は身分やらで人を差別するのは好きではない。

「あの方も侯爵家の令嬢よ。その言い方は不敬だわ。」

それでも私は冷静に言葉を返した。事を荒げるのはお嬢様にとっても良いことではないから。

だというのに…。

「何言ってるの?ただの庶子じゃない。娼婦の血を引いてるんだから私達より下賤の身よ?」

同僚は懲りもせず、言葉を続けた。

確かにこの同僚は準男爵家の三女である。

勿論、正妻の子だ。

としても、あくまで侯爵家の令嬢として認められた方を貶めるような言い方は良くないと思う。

「でも少なくとも侯爵様の血を引いてるんだから、私や貴方よりは高貴な方でしょ。」

私はそんな不快感を隠すことができず、思わず言い返してしまった。

その瞬間、彼女の表情は苛立ちを含ませたものに変わっていき、

「は?私は準男爵家の娘よ!?あんたと一緒にしないでよ!同情してあげたのに!」

ヒステリックな声でそう叫んだ。



やってしまった…。

大袈裟なことになって困るのは彼女でも私でもない。セリスティアお嬢様だ。

この話が使用人たちの間で囁かれ、お嬢様は軽んじられるようになるだろう。

どうしよう…。

私が焦っていると、

「アディーちゃん、そんな大きな声をあげてどうしたの?」

聞き覚えのある声がした。

ハッと振り向くと、そこにはフィンの姿があった。

彼はこの屋敷でかなりの人気者だ。

特に女性から。

少しサボりがちなところもあるが、面倒見がよく顔立ちも整っている。

身分もファンティーニ子爵家の三男で決して低いものではない。

女誑しな所がたまに傷だが、これはこの屋敷で働く女性にとっては長所となっていた。

同僚、いやアディーもその1人でフィンが来たことによってあからさまに態度を和らげた。

「フィ、フィン!いや、ユラが私を軽んじるような事を言うから…。」

「軽んじるような事?」

フィンは聞き返す。

「そうなの!」

アディーは首を縦に大きく振った。

私はというと、フィンがこの場を収めてくれる事を願っていた。

ここだけの話で終わらせたいからだ。

「そっか。でも多分、それはアディーちゃんの勘違いだと思うけどなぁ。」

そう願っていたものだから、彼の言葉に驚いて思わず彼の顔を凝視してしまう。

「えっ?」

アディーも驚いたのか、目を見開いていた。

「だって、ユラちゃんは人のことを尊重する子だから絶対ないなって。」

フィンはとびきりの笑顔で[絶対]を強調してそう言った。

有無を言わせないその笑顔にアディーはたじろいたのか、

「もういい…。」

諦めたようにその場を去っていった。




「何でさっきあんなこと言ったのよ。」

私が尋ねると、

「あ?あぁ、ユラがアディーみたいな自尊心が高いやつにわざわざ鼻っぱしら折るようなこと言わないだろうなって思っただけだよ。」

フィンは面倒くさそうに答えた。

さっきの態度と180度くらい違うのは兄2人の他に姉2人、妹1人がいたかららしい。

兄達とはかなり歳の差があるらしいが、姉や妹達とは歳が近く女性に囲まれて暮らしてきたため、[女性には優しく]が身に染み付いているのだとか。

私とフィンはなんとなく気が合い、気安い仲のため、素で話し合っている。

「あっ、そう。で、フィンは何しにきたの?」

素っ気なく答えながらそう聞くと、

「そうだ!ちょっと聞いてくれ!!」

フィンは何故か興奮し始めた。

「とりあえず、落ち着いて。」

私がフィンを宥めて事情を聞くと、セリスティアお嬢様の本性とやらを詳しく説明し出した。

「掃除しながら、侯爵様の悪口言ってたんだぞ!?あと、すごい綺麗だった!」

ただそれは、まとまりのある話ではなかったけれど…。

「とにかく、セリスティアお嬢様は只者じゃないことは分かったわ。でも貴方の言う通り、しばらくは見守っていた方がいいわね。自分の好きなように動いてらっしゃるみたいだし。」

話の内容をなんとか理解し、私はそう答えた。

そして、この話は他言無用だとフィンに言って私達は分かれた。

セリスティアお嬢様の事にも驚きだったけれど…。




「フィンのああいうところがずるいんだから…。」

アディーから庇ってくれた事を思い出し、私は顔を赤くしたのだった

この話はセリスティアが侯爵家に来た直後の話です。まだこの時はフィンとユラは付き合っていません。

どうやって付き合う事になったかはまた機会があれば…。

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