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ナタリーの心境

ちょっと短めです…

私がおかしくなり始めたのはヴァイオレットが生後3年ほど経つ頃だった。

好奇心旺盛で動き回り、よく喋る。

疲れて仕事から帰ってくる私がヴァイオレットを相手するのはとてもじゃないけどできなかった。

ある日、

「いい加減にしてよ!」

私はそう怒鳴ってしまった。

ヴァイオレットはビクッとして、泣き始めてしまう。

駆け寄る気力もなく、

「泣きたいのはこっちよ…。」

私はそう言って顔を伏せた。



それから、私はヴァイオレットにきつくあたったり放置するようになった。

自分でも分かってはいた。

このままじゃ自分の母親と同じになる。いや、それ以上になってしまうと。

ただ、心に余裕のなかった私は態度を改めることができなかった。

だからだろう。

よく笑ってキラキラした目で私を見つめていたヴァイオレットが、笑わなくなったのは。

それを見ると、私のせいでそうなったんだと言われているようでますますきつくあたってしまった。

そして、10歳になる頃にはおどおどして私の機嫌を窺う、そんな成長を遂げてしまっていた。




「紫色の瞳が特徴の貴族様?」

このままでは私もヴァイオレットもダメになってしまう。そう思った私は父親を探すことに決めた。

思いのほか父親はすぐに見つかった。

「そんなのイーディス侯爵家しかないでしょ。」

皆がそう言ったからだ。

私はヴァイオレットに、

「これから、あんたは侯爵家の娘になるんだよ。」

そう告げてイーディス侯爵家へと向かった。



「だから、何度も言ってるでしょ。貴方の娘なんだから引き取って頂戴。」

私が話を持ちかけても侯爵は全く聞く耳を持ってくれなかった。

「俺もさっきから何度も言っているが、証拠がないだろう。」

でも、私は負けじと引き下がり続ける。

「いいえ、あの子を妊娠した時は貴方にしか抱かれていないもの。父親は貴方しかいない。」

だって、ヴァイオレットには娼婦の娘でいるよりも侯爵令嬢としていい暮らしをして欲しいから。

それに、私があの子と関係を修復するには遅すぎた。もうあの子が私に心を開いてくれる事はないだろう。

だけど、新しい家族なら。

それならあの子の居場所になるかもしれない。

私の事なんて忘れて生きていけるかもしれない。

そんな思いで引き下がっていると、

「分かった。」

侯爵はやっと首を縦に振った。

私は思わず嬉しくなってお礼を言おうとしたけど、

「その俺の娘だとかいう奴を連れて来い。確認する。」

その後に侯爵はまだ言葉を続けた。

私はグッと唇を噛み締め、

「分かったわ。実は外にいるのよ。」

と言った。

今は冬。

そんな時期に外で待たせる母親なんかに子供を任せておけないと思ってもらいたく、わざとヴァイオレットを外に置いてきたのだ。 

寒さに凍えていないか心配ではあったけれど…。



しばらくして侯爵家の使用人達がヴァイオレットを連れてきた。

「連れてきたわよ。さあ、引き取って頂戴。」

私はできるだけ面倒臭そうに言った。

侯爵はしばらくヴァイオレットを見ていたけれど、

「分かった。それを引き取ろう。」

と言ってくれた。

これでヴァイオレットは侯爵令嬢になれる。

そう思った私は、

「そう!じゃあ、よろしくね!!」

能天気そうな声でそう言ってそそくさと私は執務室を出た。

これでいい。これでいいんだ。

ヴァイオレットはこれで幸せになれる。

なんて今日はいい日なんだろう。

「あぁ…いい日なのに…。」

なんで涙が止まらないの…?

あんな育て方しかできない私に泣く資格なんてないのに…。



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