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再会

遅くなりました!

「セリスは一体何者なの?」

レアナとレオさんが強烈な兄弟喧嘩をし始めた時にふと、私はそう聞かれた。

マリアンヌは真剣そうな眼差しでこちらを見ている。

何者…か…。

そんなの私にも分からない。

何故か前世の記憶持ちでこの世界に生まれた。

それは何らかの意味を持つのかもしれないし、無意味なのかもしれない。

でも、私は私。それだけの事だ。

「私は私よ。」

私は軽く笑みを浮かべて答えた。

マリアンヌは少し不服そうだったけど、

「そう。それもそうよね。」

深く追及はしてこなかった。

やっぱり彼女も賢さと教養を持ち合わせた令嬢という事だろう。

「もう!しつこいですわ!そんなんじゃマリアンヌ嬢にもすぐに嫌われますわね!!」

「なっ…!?」

うん。

あちらの方も決着はついたみたい。

レアナのきつい一言で。



「という事で、もう遅いですし私はそろそろお暇します。」

その後、4人で少し会話をしてから私はそう切り出した。

「それもそうね。」

レアナも私の言葉に同意し、私達はイーディス侯爵邸をあとにした。

「送って行こうか?」

レオ様にそう言われたけど、

「いやいや!こんな豪華な馬車で帰ったら周りが卒倒しちゃうので遠慮しときます。」

私はこんな風に言って断った。

まずここが私の家だし、今から直で仕事に行くつもりだしね。



「おはようございます!いや、こんばんはかな?」

私が仕事場に着くと、もうゼンの姿がそこにはあった。

「3分遅刻。」

「うわ、細かっ。」

まあ、ちょっと出るの遅かったかなとは思ったけど。

今日も王都の見回りで私達は前と同じ場所を見回ることになっている。

「準備オッケーでーす。」

私はパパッと準備を済ませてゼンにそう声をかけた。



「本当にお前大丈夫なのか?」

城を出て少し歩いたところでゼンがそんな言葉を発した。

「何が?」

私が聞き返すと、

「この前の事だよ。」

ゼンはぶっきらぼうに答える。

この前のことって…あっ。

「もしかして、心配してくれてるの?」

私が少しからかうような口調で尋ねると、

「まあな。次何してくるか分からないだろ?」

ゼンは照れもせずにそう答えた。

そうだった。

ゼンは素直じゃないし口も悪いけど、こういう事を真顔で言えちゃうんだよね。

それこそ、聞いてるこっちが照れるセリフすら。

ちょっと負けたような気分になりながらも、

「大丈夫!だってあの時だって私の圧勝だったよ?むしろあっちが被害者みたいになってたしね!」

私は明るく言った。

もちろん、次に何をされるかっていう恐怖はあるけどこれは私の問題。

これだけ元の物語に干渉したんだから恨まれるのは仕方のない事だ。ゼンに迷惑をかけるわけにはいかない。

すると、

「お前も大概素直じゃないよな。」

ゼンはため息をつきながらそう言った。

「えっ?」

「本当は怖いくせに。こないだの時だって気丈に振る舞ってたけど手は震えてたぞ?無理するな。」

ゼンはぽんぽんと私の頭を軽く撫でた。

私はその瞬間顔が真っ赤に染まる。

「ほんと、そういう所だよ……。」

私は顔を必死に隠しながら小さな声でそう呟く。

そして、

「ありがとう……。」

聞こえるくらいの声で呟いた。

それに対してゼンは少し笑いながら、

「セリスにも可愛い所はあるんだなー。」

からかうような口調で私に言葉をかける。

「う、うるさい!」

私はまた一気に恥ずかしくなって、顔が赤みを帯び出した。

やっぱりゼンは意地悪だ!

うー…心の中で唸っていると、

「まあ、夜勤の事は団長にもちゃんと言うべきだな。ただ、今日の仕事はやり通せよ?」

ゼンは元の口調に戻ってそう言った。

「もちろん。私は仕事を投げ出すほど怖がりでも馬鹿でもないし!」

私も強気に答える。

「じゃあ、また二手に分かれるぞ。じゃないと終わらないからな。」

ゼンは本当は2人で回りたいんだが、と呟きながら言った。

私の事を気遣ってくれているんだろう。

それは分かるしありがたい。

でも、

「りょーかい。でも忘れないで。私だって第一騎士団所属の騎士よ。」

私は胸を張ってそう答えた。

引き受けた仕事を最後までやり通すくらいの力ならあるし、一般人いや、普通の騎士よりは強いと認められてここにいるのだ。

信用してもらわなきゃ困る。

そんな私を見て、

「悪い。いきすぎだったな。」

ゼンは満足そうに笑った。

「よし!じゃあまた1時間後にここに集合で!」

そして私達はまた二手に分かれたのだった。




こないだの時よりは街灯も多くて人通りも多い所ばかりだ。

やっぱりゼンは私に気を使いすぎだと思う。

嬉しいんだけどね。でもゼンの負担が増えるのは私も嫌だから。

そう思いながら歩いていると、

「やめてください!」

小さな男の子を抱えた女性が数人の男に絡まれているのを見つけた。

「いいじゃねーか。お前いい女だしさ!」

「俺たちと遊ぼうぜ!」

「そんなガキ置いてけばいいだろう?」

女性が目当ての前世で言うナンパだろう。

まあ、そんな可愛いもんじゃないだろうけど。

「貴方達、やめなさい!」

私はそう言いながら男達の方へ走り寄る。

「なんだ、お前!」

「おっ、美人じゃん!」

「お前も来るか?」

男達は私の登場に痛くも痒くもないといった様子だった。騎士団の制服着てるのに!

「今すぐここを立ち去るならお咎めなしにしましょう。どうします?」

男達に対して私は冷静に声をかけた。

出来れば穏便に解決したいし。

ただ、

「はぁ?意味わかんねー事抜かすんじゃねーぞ!」

「こいつ、騎士団の制服着てんぞ?」

「小娘のくせに!」

案の定聞き入れてはもらえなかった。

「じゃあ、騎士団として調書を取らせてもらうのでお名前とご住所をお聞かせ願います。」

私が調書を取り出してそう言うと、

「お前、女だからって調子乗んなよ!?」

我慢できなくなったのか、一人の男がいきなり殴りかかってきた。

私はそれをひょいと避けて、みぞうちに拳を一発入れる。

そして、

「こんな風になりなくたかったら、こいつ連れてさっさと逃げな?」

私は残りの二人に睨みを聞かせながら言った。

すると、二人は顔を見合わせて一目散に逃げていった。

もちろん、気絶したお仲間を抱えてね。

「ダサい奴ら。」

私はそう呟き、すぐさま振り返った。

「大丈夫ですか?」

安心させられるように笑顔で女性に声をかけると、

「大丈夫、です…。」

そう言いながら女性は顔を上げた。

その瞬間私の顔が強張る。

こ、この女、この女性は…。

ナタリー・セロン。

私のいや、セリスティアの実の母親だった。

まさかの人物との再会を果たしたセリス。

これから一体どうなるのやら。

次回はセリスティアの母親であるナタリー・セロン視点になります!


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