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圧勝

「遅いぞ。」

私がゼンとの待ち合わせ場所に着くと、ゼンは第一声にそう言った。

「ごめん!途中で忘れ物に気付いて一回家戻ったんだよね…。」

今日は初めての夜勤だ。

夜勤は主に王都の見回り。

夜の王都は治安が悪く犯罪が起こりやすい。

なのに、私は愛用の短剣を忘れてしまったのだ。

「忘れ物って、お前なー…。」

ゼンは呆れたような表情で呟いた。

「あはは…。それよりも速く行こう!?」

ゼンの視線に耐えられなくなって話をすり替える。

「まあそうだな。」

ゼンは軽くため息をつきながらも地図を出した。

「俺たちの担当はこの辺りだ。といっても結構広いから二手に分かれるぞ。」

そう言いながらゼンは地図を指し示す。

「了解!じゃあ私はこっち側を見るね。」

私は地図を確認して答える。

元気に答えた私を怪しげにゼンは見ながら、

「1時間後にここに集合だ。遅れるなよ。」

そう念を押してきた。

「分かってるって!」

こうして私達は自分の見回り場所へと向かった。



ここら辺は初めて来るなぁ。

私は王都をしっかり見て回るのが今回が初めてだ。

だって、別に用なんてなかったし。

大通りは師匠の元へ行く時に通るけど、他は通らないもんなー。

っていうか、結構お店もやってるもんなんだな。

露店とかは閉まってるけど、バーとか食事処は開いている。

まあそりゃそうか。まだ9時だもんね。閉めたら商売にならないか。



うーん、見てて思ったけど夜は大人の街って感じがするな。

かなり歩いたところでそう思った。

何かオシャレでいいなー。

私もバーとか入ってみたい!

ワインとか飲めたらかっこいいだろうしね。

まあ、私はお酒に弱いんだけど…。

そんな事を考えながら、私は人気のない道へと歩みを進める。大きい通りはトラブルがあっても酔っ払いの喧嘩ぐらいしかない。

それに比べて暗い道や人気のない道は危ない。

そういう所で性犯罪や誘拐が多発しているからだ。

真剣に辺りを見回しながら歩いていると、後ろから何やら気配がして振り返る。

すると、

「お嬢ちゃん勘がいいね。」

そう言いながら1人の男が近寄ってきた。

「私に何か用ですか?」

警戒しながら口を開くと、

「用っていうか仕事だな。」

男はニヤッと笑った。

その瞬間、周りから仲間らしき男たちが何人も出てきた。

これは…。

ただ事ではなさそうだ。

少し狼狽えながらも、

「その仕事内容を聞いても?」

出来るだけ冷静な状態を保ちながら問いかける。

「あんたを攫えって頼まれてるもんでね。悪く思わないでくれよ。」

気持ちの悪い笑みを浮かべながら男は答えた。

私はそれを聞いて戸惑う。

てっきり1人で女がこんなところに来たからだと思ってたけど、私狙いなの?

確かに軽い恨みを持たれている人物は何人かいるけど、こんな事をしてくるほどの人物には心当たりがない。

私が考え込んでると、

「大人しくしてくれれば痛くはしない。気持ちいい事はするかもだけどな。」

そう言って男達はゲラゲラと笑い始めた。

それに私は若干イラッとくる。

理由はどうあれこいつら倒さないとね。

女だからって完全に舐めきってる態度が気に入らない!

私を攫う?

やれるもんならやってみればいいじゃない。

私はそう思いながらふっと笑みをこぼした。

「何がおかしい!!」

「いや?私が第一騎士団所属の騎士と分かって攫うなんていい度胸だと思って。」

私が答えると、

「ふん、人数の差が分からないのか?」

「どうせ大した実力じゃないんだろ?」

「女のくせに!」

男達は怒ったように叫びだす。

そして、

「馬鹿にしやがって!」

1人の男が殴りかかってきた。

隙がありすぎるその男を見て失笑しながらも、私はその拳を避けて、すぐさま顎に蹴りを放つ。

「うがっ…!」

唸り声を発しながらそのまま男は地面に倒れた。

あっという間の出来事で、何が起こったのか分からないらしく他の男達は固まって動かない。

だから、

「どうしたの?怖気付いた?」

私が分かりやすく挑発すると、

「このクソが!」

「舐めやがって!」

「痛い目に合わせてやる!!」

怒り狂ったように私を攻撃し始めた。




「お前…!一体何者なんだ!」

私が最後の男の首根っこに短剣を突きつけていると、そいつが叫んだ。

だから私はにっこり微笑んで、

「第一騎士団所属のセリスと申します。以後お見知り置きを。」

優雅にお辞儀した。

すると、その男はガクガクと震え始め、最後に気絶してしまった。

微笑んだのに気絶してしまったのには納得いかないのだけれど。



しばらくして私を探しにゼンがここまでやってきた。

そしてこの惨状を見ると、

「何があったのか、説明できるな?」

笑みを浮かべながら口を開いた。

「えっと、あのそれは…。」

断言する。

目が笑ってなかったし、今までで一番この時が怖かった!!



一通りの説明を終えると、

「詳細は分かったが…。妙だな。何でお前を狙ったのかが分からない。」

ゼンは訝しげな表情でそう言った。

そして、

「とりあえず、こいつらは取り調べをしないといけないから城まで連行だな。応援呼んでくるから見張ってろよ。」

ゼンは私に指示をして走っていった。

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