ヒロインの憤り
今回はヒロイン視点です!
「何で…何でこんなことに!!」
私は思いっきり花瓶を床に叩きつけた。
今まで上手いこと進んでたのに急にどうしてこんなことになるの!?
「ミリアナ。ちょっと時間をもらってもいい?」
私が部屋でくつろいでいると外からそんな声が聞こえた。
ふん、またいじめに来たのかしら。自分が損することも分からない馬鹿なやつ。
そう思いながらも、
「全然いいですよ!」
私はにこやかな表情で扉を開けた。
外に立っていたマリアンヌはいつもと少し雰囲気が違う。
ちょっと違和感を持っていると、
「今まで本当にごめんなさい。」
マリアンヌはガバッと頭を下げた。
は?
いきなりの事すぎて固まっていると、
「酷いことをしたし、謝って許される問題じゃないのは分かってるんだけど…。」
マリアンヌは俯きながらそう呟いた。
ちょっと待ってよ。
何で謝ってんの。悪役令嬢のくせに。
馬鹿な事を永遠とやり続ける悪役のくせに!
でもそんなマリアンヌに声をかけないわけもいかず、
「い、いえ…。大丈夫ですよ?」
渋々言葉を口にすると、
「ミリアナは優しいのね。」
マリアンヌは安心したような笑みを浮かべた。
こいつ何なの?
今の姿じゃ全く悪役令嬢には見えない。
ただの貴族令嬢じゃない!
いつも通り私を虐めてればいいのに。
皆から嫌われるわがまま令嬢でよかったのに!
そんな私の心の内も知らず、
「もし許されるなら仲良くして欲しいな。」
こんな言葉をほざいて部屋から出て行った。
どうなってるの!どうなってるの!!
こんなのおかしい!
ゲームの展開じゃない!
悪役がいなかったらストーリーが進まないじゃない!!
いや、待って。考えろ。
マリアンヌの変化は誰のせいなのか。
何で急にこんなことになったのか。
原因を取り除かないと。
頭をフル回転させていると、ある事を思い出した。確か、数日前にエドワードがマリアンヌに合わせてた人がいたはず。
そう。
モブキャラのくせに綺麗な顔立ちしてるやつよ。
会合で私のアルフレッドへのアプローチをことごとく邪魔してきたやつ!
そのくらいならまだ許してあげたけど、もし私の計画の根本を打ち壊すつもりなら…。
絶対に許さない。
あの女、セリスっていったかしら?転生者の可能性が高いわ!
もしそうなら全て辻褄が合うもの。
このゲームの内容も知ってるに違いないわ。
どうせ、ヒロインの座を奪うために私の邪魔をしてるんだわ。
でもおあいにく様!
私だって転生者よ。それもこのゲームをかなりやりこんだね!
「私を邪魔する奴は徹底的に排除するわ。」
私はあの女の顔を思い浮かべながら呟いた。
「もう一度言っていただけませんか?」
私はいつものように学園で第二王子を放課後のお茶に誘っていた。
「悪いがこれからはお茶に付き合う事はできない。」
「ど、どうしてですか?」
何で急にそんな…!
「剣に政治についての勉強、やる事が山ほどあることに気づいたからだ。」
第二王子はきっぱりそう言った。
「でも、頑張りすぎるのは…」
私がやんわり反論しようとすると、
「勿論、頑張りすぎもよくないと思う。だが私のやっている事はただの逃げだ。」
第二王子は真剣な面持ちで言い切る。
そして、
「ある女騎士に諭されてしまってな。目が覚めたんだ。」
その状況を思い出したのか軽く笑った。
ーー女騎士ーー
その言葉を聞いた瞬間、嫌な予感がした。
気のせいであって欲しくて、私はとっさに尋ねる。
「その女騎士の名前はセリスだったりしますか?」
違う。気のせいに決まってる。
そう心の中で言い聞かせながら。
なのに、
「ああ。知ってるのか?」
肯定されてしまった。
「ええ、アルフレッド様にご挨拶した時に少しだけ。」
私は笑顔で答えたけど、内心怒りが爆発しそうだった。
あの女はゲームを崩壊させようとしている。
いや、私を陥れようとしてるんだわ!
平民のくせに!モブキャラのくせに!!
ヒロインの私を邪魔するなんて!
そこで私はいい事を思いついた。
そうよ。この世界は私のためにあるんだから。
ーーいらない奴は消せばいいーー
私の邪魔をする奴は生きる価値なんてないんだから。
「ある女をこれで殺ってほしい。」
私はその日の夜遅くに屋敷を抜け出し、汚い居酒屋みたいな所にやって来た。
ゲームの中でヒロインを襲わせるためにマリアンヌが使ってた所。
覚えててよかったわ。
大金を机の上にドカンと乗せると、そこにいた男達のリーダー格のような男が話しかけて来た。
「こんな所まで貴族の嬢ちゃんが大金持ってやってくるなんて無用心すぎないかね。」
後ろにいた男達はニヤニヤ笑っている。
それを見て吐きそうになりながらも、
「これは前金よ。成功したらこの倍は出すわ。」
口を開いた。
それを聞いた瞬間男達の目の色が変わる。
「これの倍って…。」
「大貴族じゃねえか。」
「3ヶ月は遊んで暮らせるぞ!」
こんな端金、宝石一個売ればすぐ手に入るわ。
お父様は私に何個も宝石を買い与えてくれてるから、これくらいのお金を準備するのなんて簡単。
やっぱり下賤の奴らと私じゃ格が違うのよ。
そんな優越感に浸っていると、
「交渉成立だ。詳しく聞かせてもらおうか。」
リーダー格の男が言ってきた。
「明日の夜9時頃、王都の見回りをしにあの女はやってくるの。ここらへんも通るはずだからその時に狙ってくれればいい。」
私はこの情報を会合の時に私の護衛をしていた男から手に入れた。
あの時しっかり手懐けておいたから、あいつはすっかり私の言いなりよ。
クスッと笑みを溢す。
「その女の外見は黒髪、紫の瞳、第一騎士団の制服を着てるってわけか。」
「ええ、そうよ。」
いくら第一騎士団に入っててもどうせ実力じゃないだろうし、こんなに大勢の男達に襲われたら勝てるわけないでしょ。
「んで、その女は殺せばいいんだな?」
そう聞かれて私は考えこむ。
すぐに殺すだけじゃ私の苛立ちがおさまらないわ。
そこで私はふっと笑った。
「そうね、それは任せるわ。結構綺麗な顔してるし貴方達のモノにしてもいいのよ?」
汚らしい男達に抱かれまくって屈辱を味わえばいいのよ。
すると、男達はまたニヤニヤ笑い始めて、
「金も手に入って女も手に入るぞ!」
「絶対俺から抱くからな!」
「いや、俺だ!」
馬鹿な言い合いをし始めた。
これで邪魔される事はないわ。
私の世界を壊させはしない!!
ミリアナはもう自分が悪役になってることにきづいてないんでしょうかね…?




