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セリスとセリスティア

「会合終わったのに何でこんな仕事溜まってるの…?」

私は山積みになった資料を見て呟いた。

だって!何か増えてるの。増えてるんだよ!

会合前より!!

「3日も空いてたんだ。その間の仕事が溜まるのは当たり前だろ?」

机の前に突っ立っていると、ゼンが後ろからやって来て言った。

「そんな…。絶対終わんないじゃん!」

無理ゲーだよ、無理ゲー!

「集中してやれば終わるだろ?口より手を動かせ、手を。」

嘆いている私に対してゼンは辛辣な言葉を投げつけてくる。

こ、この完璧超人め…!

私がゼンを睨んでいると、

「まあまあ。今日中じゃなくてもいい資料とかもあるから、大丈夫だよ?セリス。」

アルが私を宥めるように話しかけてきた。

いやいや…。

「ほとんど今日中に終わらせないといけない資料じゃん!」

8割ぐらいが締め切り今日なんだけど!

私がアルに突っ込んでいると、

「結構、会合の時と違うね。そっちも自然でいいと思うけど。」

誰かに話しかけられた。

この声は…。

「レオが来るなんて珍しいね。いつもは他の人が持ってくるのに。」

アルは少し不思議そうに話しかける。

なんと、やって来たのはレオさんだった。



「セリスちゃんの顔を見にきたんだよ。雰囲気全然違うけど。やっぱりかわい…」

レオさんはというと、アルに言葉を返そうとしたけど途中で口籠った。

そして、

「よく分かった。もう言わないから許してくれ。」

と、意味不明な事を言い出した。

どういう事だ?

私は通訳を求めて、アルの方を向いたけどアルは肩を竦めただけだった。



「えっと、レオ様は何をしにこちらにいらしたんですか?」

とりあえず、さっきの疑問は置いておいてそう尋ねる。

だって…何かいっぱい資料抱えてるから嫌な予感しかしなくて…。

「何って。この資料届けに来たんだよ。っていうか俺の事はレオでいいよ?」

あたらないでくれという私の願いも虚しく、レオさんはそう告げた。

だから、

「じゃあそれ全部、ゼンの机に置いてください!」

私はすかさず言った。

ゼンは仕事速いし。うん。大丈夫大丈夫!

「はぁ!?何勝手に言ってんだ!」

「集中したら終わるってさっき言ってたじゃん!」

「この量の書類足されて終わると思ってるならお前は馬鹿だ !!」

「なっ!馬鹿じゃない!!」



「なあ。俺まだ信じられないんだけど。」

俺はアルにそう話しかける。

「僕だって最初は驚いたよ。」

アルは苦笑交じりに答えた。

子供の頃から一緒にいるけど、こんなゼンを俺は初めて見た。

「俺、さっき殺されるかと思った…。」

セリスちゃんを社交辞令程度に褒めようとしたら、ものすごい顔で睨まれたのだ。

「ゼンはセリスを過剰に気に入ってるからね。人間らしい一面を見れて良い事だと思うんだけど…、王族のゼンと平民のセリスが結ばれる事はないから…。僕としては複雑な気持ちだよ。」

アルは本当に複雑そうな顔で言った。

「妾ならいけるけどな。」

俺が思いついた事を不意に口にすると、アルは少し間を置き、ふっと笑みを浮かべた。

「セリスの性格でそれはないね。彼女は慎ましやかとは正反対な女性だから。逃げられるのがオチだよ。」

その言い方が甘さを含んでいたから、俺はガバッとアルの方を向く。

「お前まさか…。」

でも俺はそこで言葉を止めた。

「ん?」

アルが不思議そうにこちらを見ていたからだ。

「いや、俺の幼馴染達は揃いも揃って自分の事には疎いなと思っただけだよ。」

俺は内心、呆れながらもそう言った。

「一体何の話?」

「いや、何でもないよ。」

全く理解していないアルを適当にあしらう。

そして、

こいつらはいいよな。

俺は拗らせまくってるっていうのに。

自分の婚約者を思い浮かべ、ため息をついたのだった。



「じゃあ、全部アルにやってもらうって事でどう?」

私がゼンに話を持ちかけると、ゼンは面白そうな顔をして、

「それはいい考えだ。」

意外にも意見が一致した。

そして、私はニヤニヤを堪えながら、

「レオさん!その資料は全部あの机に置いておいてください。」

レオさんに近寄り小声で言う。

すぐに私の意図を理解したのか、レオさんはニヤッと笑い、

「了解。」

えげつない量の資料をアルの机にそっとおき、

「じゃあ、俺仕事場に戻るわ。」

何事もなかったようにアルにそう言って、そそくさと仕事に戻っていった。

そして私達も席につき仕事をし始める。

アルも仕事をしようと机を見たのか、急に叫んだ。

「ちょっ!何で僕の机にこんな山積みにしてるの!?」



「ふわぁ…。眠い…。」

鬼のような仕事を終え、私は部屋のベッドで微睡んでいた。

まだ10時半だけど…。

明日は初めての夜勤だし、寝ようかな。

私はベッドから起き上がり灯りを消そうとすると、

コンコン

急にドアをノックする音がした。

私はビクッとして振り返り、口を開く。

「ユ、ユラ…?」

だってここに来るのってユラくらいしかいないし…。あと、フィン。

でも、こんな時間に来る事はないよね…?

も、もしや、幽霊!?

という馬鹿な妄想を広げていると、

「ちょっと時間をもらってもいいかしら?」

気まずそうなマリアンヌの声が聞こえて来た。

私は一瞬キョトンとして、すぐに焦り出す。

この格好じゃ会えない!

セリスとセリスティアが同一人物ってバレたらヤバイし!

私はとりあえず髪をぐしゃぐしゃにして、眼鏡をかけた。

で、

「は、はい…。」

返事をしたのだった。



「本当にごめんなさい!」

マリアンヌは私の部屋に入ってすぐにそう口にした。

「貴方にはたくさん酷い事をしてしまったわ。勿論、許してもらえるとは思わないけど…。謝らないとと思って…。」

真面目だな。

私はマリアンヌの言葉を聞いて心の中でそう呟いた。悪いと思っていてもそれを実行に移せる人間は少ない。

でも、マリアンヌはわざわざ謝りに来てくれたのだ。それだけで私の心は暖かくなる。

「ぜ、全然大丈夫です!」

私が答えると、マリアンヌは申し訳なさそうな顔をして、

「これからは私の言う事なんて全く聞かなくていいの!今まで命令したら偉そうな態度を取っていた癖に。と思うかもしれないけど…。」

と言った。

自分のしてきた事を後悔してるんだろう。

でも、そういうことって誰にもあるし。

というか今のマリアンヌと私を比べたら絶対マリアンヌの方が性格良いと思うし。

そんな顔されたら何だかこっちが申し訳なく感じてしまう。

そう思い、

「いいえ。私はお姉様の気持ちを嬉しく思います。今のお姉様は素敵に見えますよ。」

私はにっこり微笑んだ。

マリアンヌは呆気に取られたような顔をしていたが、

「ありがとう。実は私を変えてくれた人がいるのだけど、貴方はその人に似ている気がするわ。」

そう言って笑った。

私はというと、マリアンヌの勘の鋭さにビビっていた。

な、何で分かるんだ!

外見が全く違うでしょう!?

これ以上近づいたらバレるんじゃ…。

そんな恐れも抱き始める。

ただ、

「もしよかったら仲良くしてね。」

マリアンヌのその誘いを断る事はできないのであった。

次回からはセリスの過去(前世ではない)をまじえて展開していきます。

ヒロイン視点も今までよりも多くなると思いますので是非楽しみにしておいてください!


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