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番外編7 マリアンヌの過去

急な番外編すいません!!

私は母に愛されているものだと思っていた。



いつも優しく笑ってくれたし、そんな母が私も大好きだった。

なのに、ある日を境に母は激変してしまった。

笑わなくなったし、暴言を吐くようになった。

でも、それでも私は母が好きだった。

どうにかして笑ってほしくて、私は何度も何度も話しかけた。



「お母様!このお花、綺麗でしょう!?」

あの日も私は母に話しかけた。

いつもは無視されるのに、その日は違った。

私の方を向いてくれたのだ。

また、優しい母が戻ってきたんだ!また笑ってくれるんだ!

そう思うと嬉しくて母に笑いかけると、母は憎々しげに私を見て言った。

「貴方なんて産まなきゃよかったわ!」

「えっ…?」

すぐには理解できずに固まっていると、

「もう、話しかけないで頂戴。」

母はすたすたと私から離れていった。

私はその日に悟ったのだ。

ーーお母様は私を愛してなどいなかったーー

と。



その日から私も少しずつ変わり始めた。

人を好きになっても傷つくだけ。

なら、もう一つの人格を作り出せばいい。

私が傷つける側になればいい。

そうすれば、余計な傷を負わずに済むのだから。



使用人達には傲慢で我儘に振る舞った。

父にも母にも愛されない、可哀想な令嬢という同情を受けたくなかったから。

婚約者のレオ様には無関心、無口な態度で接した。

また勘違いをして好きになってから、突き放されたくなかったから。

後からやってきた義兄にも義妹にもそんな風に振る舞った。

特に義妹にはよく暴言を吐いた。

義妹がやって来てから母の私に対する暴言が酷くなったから。

どうしても憎く思えて仕方がなかった。



数年後には母が亡くなり、しばらくして父が再婚すると言い出した。

母が亡くなって間もないのに。

それも、私と同い年の娘がいるという。

それを聞いて私は怒りでいっぱいだった。

その子に会うと怒りはさらに倍増した。

とても幸せそうだったから。

父も私には見せたことのない笑みを浮かべていた。

どうしてそれに比べて私はこんなにも不幸せなの?

私だって頑張っているのに!

私だって我慢しているのに!

すると、もう1人の私が言ってきた。

『貴方は悪くないわ。この子が悪いのよ。平民のくせして貴族になるなんて。格の違いを見せつけてあげなさい。』

そうよ。そうよ。

私とこの子が身分が、流れている血が違う。私の方が上。私の方がすごい!

「じゃあ、こんな子虐めてもいいわよね?』

ええ、そうね。



私は徹底的に虐めた。

人前で暴言を吐いたり、他の令嬢を引き連れて悪口を言ったり。

内心分かっていた。

こんな事して損するのは自分だと。私が行っている事はよくない事だと。

でも、

『何言ってるの。貴方は貴族なのよ?それに対してあの子は汚らわしい血の混じった平民なんだから。悪いのは調子に乗ってるあの子の方じゃない。』

私にはもう1人の自分を止めることはできなくなっていた。

私はもう私じゃなかった。



「あんた、一体何様なわけ?」

ある日、兄が連れてきた貴族に見えるけど平民の女性にそう言われた。

最初は理解できずに固まってしまう。

そして、その女性は臆することなくズバズバと正論を私に繰り出してきた。

こんな風に言われるのは初めてで戸惑いが生まれる。

『何なの!失礼にも程があるわ!!』

『でも、正論だよ。』

私の中でも2つの思考が暴れだした。

駄目。余計な事を考えちゃ駄目。このままでいい。今まで通り、耳を貸さなければいい。

そう思っていると、

「貴方は一体何を恐れているの?」

その人は予想外な質問をしてきた。

「私は…私は何も恐れてなんかいないわ!!」

ギクリとしてすぐに言葉を返す。

駄目だ、駄目だ!

この人と話していると戻ってしまう。


ーー傷つきやすい元の自分にーー


直感的にそう思った。

それは嫌だ。嫌!

すると、

「貴方は知らないかもしれないけど…。私はエドワードに頼まれたのよ。妹を助けて欲しいと。これは貴方の母君の遺言だと。」

お母様が…?

その人は知りもしなかった事実を告げた。

また、さらに言葉を続ける。

「貴方は別に1人じゃないわ。母君もエドワードもいるし、婚約者だっているじゃない。別に1人で傷つかないでもいいのよ。」

私の心は揺れていた。

あの一押しされたら壊れてしまうほどに。



そして最後に、

「ありのままでいいのよ。」

そう言って微笑んでくれた。

その瞬間、私の何かが崩壊した。

涙が溢れるのが止まらない。

私はどうして気づかなかったのかしら。

どうして気づけなかったのかしら。

皆、私の事を心配してくれていたというのに。

「うっ…うっ……。」

私が嗚咽を漏らして泣いていると、

「えっと、あの、今までお前を気にかけてやれなくてすまなかった。」

義兄がしどろもどろの口調で言ってきた。

そこで気付く。

ああ、私は他の人の事を知ろうとしていなかったのね。

自分のことばかりで、義兄も義妹もレオ様の事も知ろうとしなかった。

私のした事は許されることではない。

自分がされて嫌だった事をしてしまったのだから。

すると急に、

『私はもう必要ないよね?』

もう1人の自分がそう笑いかけてきた。

私はそれに対してはっきりと答える。

『ええ。今までありがとう。』

私が言葉を発すると、もう1人の自分は最初から存在しなかったかのように消えてしまった。

今思えばあれは、私の弱さの象徴だったのかもしれない。




「あの、貴方の名前を教えてくれないかしら。」

私は帰ろうとしていたその女性に話しかけた。

すると、

「セリスです。」

その女性、いやセリスは笑って答えてくれた。

綺麗で優しくて聡明。

なんて素晴らしい方!

どうして私はこんな魅力的な方にあんな事を!

自分の発言を後悔しながら、

「セリス…。あの!また会ってくれないかしら!?」

勇気を出してそう告げる。

良い返事をしてくれるようにと心の中で手を合わせていると、

「仕事がなければ是非。」

セリスは悪戯っ子のように微笑んでそう言ってくれた。



お兄様も素敵な方を連れてきてくださったわ。

今までしてきた行いを反省して、あの方と仲良くなってみせる!

元の人格に戻れてよかったです!!

セリスも結構な人たらしですね。

番外編が多くなってしまい申し訳ないのですが、本編でマリアンヌの過去について触れてしまうと、どうしても書きたくなってしまい!

申し訳ないです…。

しばらくは本編が続きますのでどうぞよろしくお願いいたします。

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