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番外編6 ステラの回想 下

ブクマ登録400件越えありがとうございます!!

作戦当日

やっとこの日がやってきたわ。お父様も朝から忙しそうに働いている様子だから私の事など構っていられないはず。

それにしても、誰が来るんだろ?

少なくとも、私たちより格上の身分の人が来るんだろうけど、そんな知り合いお父様にいたっけ?

「まあ、いっか。」

私は私の作戦を実行するだけだし。

狙いは昼。

昼に食事を持って来た時に逃げ出す。ちょうどお客様が来訪してる時間だからすぐに私を追いかけることもできないはず!

完璧な作戦よ!

私はそう考えを巡らせながら、ベッドの下に隠しておいた剣と服を取り出した。

剣がないと生きていけないし、ドレス姿で逃げようとは思わないからだ。

実行まであと、2時間ってところか。

私は時計をチラリと見る。

絶対に、絶対に成功させなくちゃ。



「お嬢様、入ってもよろしいですか?」

時間は流れ、まさに作戦実行の時がきた。

自分の中に緊張が走る。

だが、それを感じさせないように、

「いいわよ。」

そう返事をした。

そして、扉に近寄り息を潜める。

「失礼します。」

やはり、入って来たのは1人だった。

その瞬間、私は手刀を喰らわせ気絶させる。

「なっ…!うっ……。」

大声を上げるより先に気絶したため、作戦としては上々だ。

「第一関門は突破したわ。」

私は少し安堵しながら部屋の外を見回し、そっと部屋を出た。

もちろん、鍵は抜き去っておいた。



応接間を避けて通れば、屋敷を出られるはずだけど…。

あのお父様のことだ。

ファーネス家が唯一自慢できる事である、細かな屋敷の造りを自慢している可能性が否めない。

私はかなり慎重になりながら、廊下を歩いていた。

そして、角を曲がろうとした瞬間、

「何してるんだ?」

背後から話しかけられた。

私はビクッとしながら振り返ると、そこには不思議そうな顔をした兄の姿があった。

「お、お兄様…。」

もう終わりだ。兄が私を庇ってくれるわけがない。

悔しさで唇を噛み締めていると、

「お前もガンナー・ベイリー様に挨拶するよう、父上に言われたのか?」

思わぬ言葉が返ってきた。

一瞬固まったけど、

「うん!そうそう!そう言われたの!!」

私はとっさに兄の言葉にのった。

ただ、そこで気付く。

私の格好がとても挨拶をしにいくような格好ではない事に。

ど、どうしよう…。

でも、兄は予想外なことに、

「もしかしてガンナー・ベイリー様が第一騎士団に属してるからって剣の相手をしてもらうつもりか?」

私が考えもしなかった斜め上の事を言い出した。

これは私が生まれて初めて兄に感謝をした瞬間だった。



「もちろん!だって強いお方なんでしょう?」

ガンナー・ベイリー様という方は全く存じ上げないけど、第一騎士団に属してるなら強いわよね。

私は憶測で兄に言葉を返した。

「まあ、次期第一騎士団の団長と言われている方だからな。」

正直そんな大物だとは思っていなかったけど、矛盾がなさそうで安心する。

「でも、そんなすごい方が何故うちの領に来たのかしら?」

私は普通に疑問を感じて兄に尋ねた。

「お前、知らないのか?隣の領の森に魔獣が出たのを。もう退治はしたみたいだが、その魔獣の住処がギリギリうちの領土だったから、事情を聞きに来たらしい。」

兄は呆れながらも、しっかり説明してくれた。

そう。兄は根は良い人なのだ。

ただ、妹の方が剣の扱いが上手いという屈辱のせいで性格が少しねじ曲がっているだけで。

「そうなの。お父様は私にそういう事は言ってくれないから知らなかった。」

女に教育はいらないっていう本当に古い考え方をするんだから!

そして、そんな話をしていると応接間にたどり着いた。

そこで、私はにっこり笑う。

「お兄様、私を信じてくれてありがとう。じゃあね!」

私はそのまま走り出す。

「は?お前、まさか…!部屋を抜け出してきたのか!?」

兄は今気づいた様子だったが、時すでに遅し。

私はもう玄関に到着していた。

ここを出れば私も晴れて自由の身!

私は上機嫌で扉を開けて飛び出した!つもりだったんだけど…。

目の前に誰かがいてぶつかってしまった。

「⁇」

私はびっくりしてその人を見上げる。

第一騎士団の制服。

王家の紋章が入った剣。

そんなものが自分の目に入り、この人が一体誰なのかはものの数秒で見当がついた。



「ガンナー・ベイリー様…?」

私が呟くと、その人は、

「ああ。俺はガンナー・ベイリーだが…。」

戸惑ったように私を見ていた。

屋敷から剣を持った女の子が飛び出してきたら、戸惑うのも無理はないが…。

この時、私にはそんな思考回路が存在しなかった。

何故なら、後ろに目を吊り上げた父の姿があったから。

「すいません。うちの娘の教育がなっておらず!」

そう言って父はペコペコと頭を下げ始めた。

「ファーネス子爵の御息女ですか。子爵の御息女は剣を扱われるのですね。」

そこで私もハッと我に帰る。

「いやいや、扱うもなにもただの遊びですよ。女が剣を振るうなんて!」

父は愛想笑いを浮かべながら、すぐに否定した。

また、男女差別…。

私は父の言葉に腹が立ってしまい思わず、

『「女性でも剣を振るう人はいるわ!」

「女性の騎士は大勢いる。」     』

反論をしたのだが、ガンナー様と言葉が被ってしまった。

そこで、パッと私達は顔を見合わせる。

父はどう反応していいか迷ったみたいだったが、

「いや、無知で申し訳ない!」

すぐにベイリー様に謝っていた。権力に弱い人だから当然とも言えるだろう。

私が父を横目で睨んでいると、

「じゃあ、騎士団に興味があったりするのか?」

ベイリー様が尋ねてきた。

「もちろんです!子供の頃からの夢だったので!!」

私は即座に言葉を返す。

目を輝かせながら言う私に、ベイリー様は苦笑していたけど、

「一緒に来るか?」

思ってもいなかった誘いが来た。

それは、その言葉は…私にとって最高の言葉…。

そう思った。

嬉しくて、言葉が出てこない。

でも、

「は、はい!!」

何とか私は返事をした。

こんな事が本当に起きるなんて。

信じられない気持ちでいっぱいだった。

そんな時、

「何を言ってるんです!?娘には縁談が何件も舞い込んでるんですよ!勝手に話を決めないで頂きたい。」

怒りの表情を浮かべながら、父は怒鳴った。

嬉しさのあまり忘れていた。

父が賛成するわけがない。

そんなに上手くはいかないか…。

ベイリー様もお父様を無視して私を連れて行ってはくれないよね…。

気分が落ち込みかけていると、ベイリー様は意味深な笑みを浮かべた。

「ファーネス子爵。私がここに来た理由はご存知ですよね?」

全く関係のない話をしだすベイリー様に私も戸惑う。

「話をすり替えないで頂きたい!」

父もさらに怒りを倍増させた。

「隣の村からの協力要請を貴方は無視しましたね?」

父の怒りを見事にスルーしてベイリー様は尋ねた。

その質問に父はギクッとしたように固まる。

「な、何のことですかな?」

「とぼけないでもらいたい。死者が出なかったから厳重注意で済ませます。して、貴方はこの不名誉な事実を世間に知らしめたいですか?」

これは脅し?

でも、何で私のためにそこまで…。

父はしばらく黙っていたが、拳を握りしめて、

「娘をよろしくお願いします。」

と悔しそうに言った。



時の流れは速く、私はベイリー様の馬車に乗って王都に向かっていた。

「1つ質問いいですか?」

私はベイリー様に話しかけた。

「ん?何だ?」

「どうして、父を脅してまで私を連れて行こうとしてくれたんですか?」

これは私の中で最大の疑問。

だって、ここまでしてくれる理由が考えても見つからない!

真剣な面持ちで私が答えを待っていると、

「最大の理由は、人員不足だ。」

ベイリー様はあっけらかんと答えた。

「うちの団長が厳しすぎて、何人も辞めて行きやがったんだよ!第一騎士団は少数気鋭だっていっても仕事が回らない。だから、1人でも人員が欲しかったんだ…。」

私は一瞬ポカンとしていたけど、思わず笑い出してしまった。

「本当に…ベイリー様はお困りなんですね……!」

だって、すごいかっこよくて誇り高い人だと思ってたからおかしくて!

「笑うな!あと、そのベイリー様っていうのやめろ。様はいらん、様は。」

ブスッとした表情でベイリー様は言った。

「うーん、じゃあ…。先輩!とかですかね!?」

私がとっさに思いついた言葉を言うと、

「先輩ってお前…。まあ、好きにしろ。ただ、俺はお前の推薦状は書けるが、それまでだ。実力がなかったら落ちるからな!」

渋々了承してくれた。

「ありがとうございます!大丈夫ですよ!私、受かる自信あるので!!」

私は自信満々に答える。

「本当か?」

ベイリー様…じゃなくて、先輩は怪しむように私を見てくる。

そして、

「まあ、信じてやる。騎士団では性別なんて関係ないからな。遠慮なく剣を振れ。」

軽く笑みを浮かべたのだった。



「あの時はお前が試験の騎士達を次々となぎ倒していくとは思いもしなかったがな…。」

団長は乾いた笑いを溢す。

「いや、私も思いませんでしたよ…。レイス団長があんなに厳しい人だったなんて。私、怒られまくりましたからね。」

私も苦い、そして懐かしい思い出が頭に駆け巡る。

あの時からたくさんのことが変わった。

レイス団長は引退してしまったし、メンバーも変わった。今年は可愛い可愛い後輩が入ってきたしね!

セリスとゼンを思い浮かべてクスリと笑う。

でも、変わっていないこともあるんですよ。

私は心の中で団長に話しかける。

貴方が私の恩人であり、師範でもあり、私にとって最高の言葉をくれた

ーー初恋の人だということはーー



「まあ、懐かしい話は置いときまして!この書類確認お願いします!」

私はえげつない量の書類をどさっと机の上に置いた。

「げっ。だから会合前は嫌なんだよな…。」

団長は嫌そうな声を上げる。

「皆、条件は同じですよ!ちゃんとやってくださいね?先輩。」

私はそんな団長に悪戯っ子のような笑みを浮かべながらそう言った。

「じゃあ、私は仕事に戻りますんで!」

「ちょっ、おい!」

団長が私の事をまだ呼んでいたけど…しーらない!

次は本編に入りますが、次の番外編は誰の話がいいとかがありましたら、是非教えていただけると嬉しいです!!



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