パーティー客
誤字・脱字報告して下さると、すごくありがたいです!!感想なども良ければよろしくお願いします!!
このパーティーって貴族達のためにあるのよね?
なのに、何で私はこんなにも囲まれてるわけ?
目立たない会場の端にいるというのに、私は数人の男達に言い寄られていた。
「平民だとはとても思えないな。」
「本当に綺麗だと思うよ?」
「よかったら、一緒に話さないか?」
私は今仕事中だってのに!
「お褒めいただき光栄ですが、仕事中なので。」
完璧な営業スマイルでそれとなく断る。
苦労を知らない坊ちゃん達は騎士の服を着ているのだから、仕事中だということに気づくことすらできないのだろうか。
不意に1人の令息が、
「どこの騎士団所属なの?」
と聞いてきた。
「第一騎士団に属しております。今日はアルフレッド様の護衛として参りました。」
内心、いいかげん、どっかに行ってくれ…!と思いながらも失礼のないよう、丁寧に答える。
すると、周りの令息達は意味深に笑みを浮かべた。
「そりゃ、そんなに綺麗だったら第一騎士団でも納得だなぁ。」
「女の子ってずるいよね。」
「で、誰をそそのかしたの?」
こ、こいつら…!
やっぱり、私のこの見た目じゃ実力で入ったとは思ってもらえないみたい。
だとしても、このあからさまな態度はないでしょ!
それに、私は…私は!まだ、14歳だっつーの!!
まあ、前世では?色仕掛けできる年齢には達してたけど!
今じゃ無理があるでしょ!!
「何を勘違いしてらっしゃるのか分かりませんが。
私は実力で第一騎士団で入りましたので。」
怒りが表情に出るのを必死に隠していた。
対して令息達は私の言葉に顔を見合わせ、
「いやいや、それはちょっと無理があるでしょ〜。」
「正直に言っていいんだよ?」
「誰にも言わないからさ!」
笑いながらそう言ってきた。
だめだ、全く信じてないわ。
今、ここで実力見せてやってもいいけど、目立ちすぎるしアルにも迷惑をかけてしまう…。
どうすれば…。
解決策を練っていると、
「御令息方?」
凛とした声が響いた。
パッとそちらの方を向くと、そこには…。
「婚約者がいる身でありながら、仕事中の騎士殿に絡むのはどうかと思いますわよ?それとも、わざと醜態を晒していらっしゃるのかしら。」
不敵な笑みを浮かべた、レアナの姿があった。
「レ、レアナ・ランブロウ…。」
「ちっ、いい所だったのに!」
「あいつに絡まれたら厄介だ!行くぞ!」
レアナの登場に私を囲んでいた令息達は不本意そうにだが、逃げるように離れていった。
「本当に。馬鹿な令息しかいないのかしら。」
レアナはそう言いながら、私の方へ近づいてきた。
「あの、ありがとうございます。」
私が礼を言うと、
「礼には及ばないわ。当然のことをしたまでだし、お友達を助けるのは当たり前でしょ?」
レアナはニッと笑った。
まさか、気付いて…!?
驚きのあまり、固まっていると、
「みくびらないでよね!私が気づかないわけないじゃない。」
レアナは自慢げに言った。
「いや、みくびるとかそういう問題じゃなくて、化粧のこともだけど気づく人ほぼいないからね?」
本当にレアナには驚かされてばっかりだ。
「それは、セリスティアの周りの人間に見る目がないだけよ。それよりも、この前の言葉がやっと理解できたわ。まさか、騎士として働いているなんて。」
レアナは私の姿を見ながらそう言った。
「今はセリスよ。第一騎士団所属のただのセリス。」
ため息をつきながら答えると、
「私もその行動力は見習わないといけないわね。セリス?」
レアナはからかうように言う。
まあ、いつかレアナにも言おうとは思ってたけど、こんなにも早くバレるとは…。
「からかわないでよね。それよりも、ミリアナはまだ来てないの?」
私が聞くと、レアナは真剣な顔になって言った。
「もうすぐ来るはずよ。城門で見かけたから。でも、聞いて驚かないでね?エスコートしてたのが…第二王子殿下だったの!」
私は思わず、叫びそうになるのを堪える。
「はっ?エドワードじゃなくて?」
「最初はそうだったんだけど、たまたま第二王子殿下が通りかかってね?交代されたのよ!」
マジか…。私が思っていた以上に2人の仲は進展しているらしい。
「それは…。かなり仲がいいのね…。」
第二王子も婚約者いないし、世間体的には問題ないんだろうけど。
「もし、2人が婚約でもしたらって考えると、ゾッとするわ。」
レアナも青い顔でそう言う。
「まあ、今は出来る事ないし放っておくしかないわよね…。」
引き裂くようなマネでもすれば、こっちが悪役だ。
それじゃ、今までやってきた事は全て水の泡になる。
「そうね。とりあえず様子をみましょう。じゃあ、お仕事頑張って!」
レアナはそう言って、社交の場へと戻っていった。
はぁ。問題がありすぎて、頭がこんがらがりそうだわ。
「セリス!」
私が頭を抱えていると、どこからかステラさんの声がした。確か、団長と一緒にいるはずよね?
そう思って辺りを見回しても、団長らしき人は見当たらない。
「ここよここ!!」
さっきより大きめの声で呼ばれ、そっちの方を向くと、綺麗に着飾ったステラさんの姿があった。
そして、隣には大人な感じのかっこいい男性が立っている。
「ステラさん!すごく綺麗です!で、隣の人は誰ですか?」
団長と一緒にいるはずじゃ。
「嫌ねー。わからない?この人、団長よ!」
ステラさんは団長の腕を抱きしめながら言った。
えっ?え、えー!!??
「だ、団長?」
まるで別人にしか見えない。
「だから、会合には来たくないんだ。」
団長は不機嫌そうな顔で呟く。
「団長が髭伸ばしてる理由ってね?若く見えるのを隠して威厳があるように見せるためなのよ!」
ステラさんはそんな団長をスルーしてクスクスと笑いながら言った。
「おい!言わないって約束しただろ!?」
団長は慌ててステラさんの口を塞ぐ。
なんか、2人って…。
「一緒にパーティー来るなんて、もしかしてお付き合いしてたりします?」
ただの上司と部下にしては仲良すぎなんじゃないかなー?
そう思って聞いたんだけど、
「馬鹿言え。こんなガキと付き合ってるわけないだろ。」
呆れたように否定されてしまった。
ステラさんも、
「こっちこそ、団長みたいなおじさんとはごめんです。」
不服そうに言い放つ。
でも、一瞬、一瞬だけステラさんは傷ついたような表情をしたように見えた。
「まあまあ。それよりもせっかくのパーティーなんですから他の方と親交を深めたらどうです?」
無粋なことを聞いてしまったと、ちょっと後悔しながらも、私は2人にそう促した。
「ああ、まあな。お前もしっかり仕事しろよ。」
「じゃあ、頑張ってね!」
団長達は私に一言残して会場の中心へと戻っていった。




