会合
ちょっと長いです。
「おい!話があるから皆、集まれ!!」
いつも通り騎士団で仕事をしていると、急に団長が出張任務にあたっている騎士以外を招集した。
「知ってる奴もいると思うが、今年も年に一度開かれる貴族の集まりがある。それについて今から話し合おうと思う。」
団長の言葉に、私は思い出す。
そういえば!!
ゲームの展開にも存在した、貴族達の集まり。
それは、年に一度開かれる会合のことだ。王族から準男爵家まで全てに出席義務がある。また、各家から令嬢、令息も1人ずつまで参加することができるのだ。
うちはミリアナが参加することになって、マリアンヌが荒れてたんだよね。
で、私に八つ当たりしてきたっていう。
苦い思い出だわ。
確か、この会合でアルとミリアナは出会うのよね。
「でだ。侯爵以上の位の貴族には1人1人護衛がつくんだが、うちの団からも騎士を1人出さないといけない。アルは公爵家の令息だからな。」
私が物思いにふけっていると、団長はそう言いながら、私に視線を向けた。
「セリス、お前がやれ。」
急に名前を呼ばれ、ビクッとする。
「えっ?」
「うちの団には平民がお前を含め3人いるが、お前以外は仕事で忙しいからお前しかいないんだ。」
団長にそう言われて、驚きよりも疑問が一つ浮かんだ。
「私だけって…ゼンもいるじゃないですか?」
指名されてすっごい嬉しいんだけど、ゼンも平民だよね?
私の質問に団長はギクッとした様子で、
「いや、あの、あれだ!ゼンには他の仕事があるっていう意味だ!!」
そう言った。
「それなら、第一騎士団の平民は4人いますよね?人数間違ってません?」
任務でいない騎士は2人。どちらも、平民らしいし。
「ああ!そうだ!!4人だ、4人!!人数を間違えるなんて、俺ももう年かな!?」
団長は慌てて言う。
うん、怪しい。この態度、怪しすぎる。
「団長、何か隠してません?」
私が目を細めて詰め寄ると、
「な、何も隠してない!」
即座に否定し出すものだから、さらに怪しい!!
「セリス、今は会合の話を続けよう?話が進まない。」
もっと追及しようと思ったけど、アルに止められて渋々引き下がることにした。
「オホン。まあ、そんなわけで会合がある3日間は城の警備のレベルが極端に下がる。で、毎年兵士を雇っているわけだが。怪しい奴がいないかを今から配る資料に目を通して、確認して欲しい。」
団長はそう言って、束になっている資料を配り始めた。
そして私は、
「セリスは色々と説明があるからこっちへ来い。」
団長に呼ばれ、団長の執務室までついて行った。
「お前のやるべき事は主に護衛だ。護衛対象はアルだが、会合の間はお前の主。そこら辺はしっかり弁えろ。」
団長は第一声にそう言った。
そうよね。今はただの同僚だけど、アルは公爵家の令息なんだから。
「はい。」
気を引き締めて私は返事をする。
「よし。で、ここからは会合の内容なんだが、1日目は参加者全員のパーティーみたいなもんだ。その間はお前も会場でアルを遠くから警護するのが仕事だ。2日目は実際に爵位を持つ者達が位に合わせて集まり話し合いをする。その息子やら娘は他の貴族達との交流会だ。お前が1番大変なのはこの日だな。一日中、アルの近くで護衛しないといけない。3日目はまたパーティーだ。だが、この日には同じ位の中でも立場というのが決まっていたりするから、要注意だ!」
団長から会合の内容を一通り聞き終える。
「教えていただいて、ありがたいんですが。最後のは団長の実体験ですよね?」
ジッと団長を見ると、
「去年のあの日に俺は…。いやいや!そんなわけないだろう!?とりあえず、会合について理解はしたな?もう、仕事に戻れ。」
さっきと同じような怪しい様子でごまかしてきた。
ふん。まあ詰め寄っても結局教えてくれなさそうだし、まあいいか。
私の仕事机に戻ると、大量の資料が置かれていた。
「げっ…!」
この量を今日で全部やり切るわけ?無理ゲーじゃん。
「お前も早くやんないと終わらないぞ。」
私が資料を見ながら固まっていると、驚くようなスピードでで手を動かしながらゼンが言ってきた。
「先に終わったら、手伝ってくれたり?」
笑顔で尋ねると、
「しない。」
1秒もたたないうちにそう返される。
そんなに早く否定しなくても良くない!?
まず、元々の量が私の方が多い気がする。
「ひどいよ…。私達はペアなのにさ…。相棒なのにさ…。」
私がめそめそと言葉を口にしていると、
「同じ手に何度も引っかかると思うなよ?口じゃなくて手を動かせ。手を。」
私の方を見向きもせずにゼンは冷たく言った。
「分かりましたよ…。」
内心、ケチ!と思いながらも私は手を動かし始める。
「1つ言っとくが、俺はケチじゃないからな。」
その瞬間、ビクッと体が震える。
「い、嫌だな。そんな事、私が思うわけないでしょ。あはは…。」
こいつ怖い。絶対、敵に回しちゃいけないタイプだ。
お、終わった…。とてつもない量の書類に全て目を通し終えたのは終業時間5分前!!
「もう、私は…し、ぬ…。」
そう言って机に突っ伏していると、
「大袈裟すぎるだろ…。」
呆れた様子でゼンがつっこんでくる。
私よりも大分早く終わったのに結局手伝ってくれなかった薄情者だ。
「私の書類の量、絶対にゼンより多かった…。不正だ、不正!」
私がそんなゼンに文句を言うと、
「お前が見てたのって城壁を守るために雇う兵士だろ?俺は警備場所が決まっていない兵士達をどこに配置するかを考えながら選んでたんだ。面倒な仕事なんだから、量が少ないのは当然だろ?」
ゼンはThe 正論を返してきた。
ぐうの音も出ないとはまさにこの事だと思う。
「はいはい、ゼン様の言う事は正しいですよー。」
つい投げやりになって言葉を返すと、ふと、ゼンは不敵な笑みを浮かべた。
そして、
「お前が大変そうだから、明日の書類作成手伝ってやろうと思ってたんだけどな。やっぱ、やめとくか。」
と、言ってきた。
私はその言葉を聞いて、すぐに机から顔を上げる。
「いや、やっぱりゼンは流石だわ!最高!!」
2週間後にある会合のせいで多分、前日まで書類づくしなんだから、少しでも私がやる量減らしたい!!
そんな私の様子を見て、
「おまっ、変わり身早すぎだろ…!」
ゼンはくっくっと笑い始めた。
「なっ…!今日で地獄を見たんだから、量を減らしたいって思うのは普通でしょ!?」
「いや、やっぱお前…、面白い…!」
笑うのをやめずにそう言ってくる。
「なんか、不快でしかないんだけど!笑いすぎだし!」
ああ!腹立つ!!
まあ、仕事終わりにゼンと一悶着あったけど、とにかく私は家に帰るために城から出た。
すると、出た所にエドワードが立っていたのだ。
「うっ…。」
思わず呻き声をもらすと、エドワードは私に気がついたのか、近づいてきた。
「久しぶりだな。」
はあ。こんな時にこんなふうに思うのはおかしいかもだけど…。
感情あるかどうかも分かんないくらいの無表情の癖に顔だけはいい!!
夕日に美男子は最高に合ってる!!
毎日、ゼンという美形を見てるけどあの性格のせいで顔を気にしなくなったせいか、エドワードが新鮮に見えてきた。
「まあ、久しぶりですね…。」
それでも気まずい事には変わりないけど。
そして、
「で、この前の返事を聞かせて欲しいんだが。」
単刀直入に聞いてきた。
こういうタイプの人間は空気を読むということができないのだろうか。
そう呆れながらも、私は尋ねた。
「マリアンヌ様を更生させてほしいっていうのはエドワード様のお義母様がエドワード様に残した遺言なんですよね?」
当たり前のことを聞いたからなのか、一瞬エドワードの表情が困惑に変わる。
「ああ。そうだ。」
さらに私は言った。
「じゃあ、はっきり言いますけど!何で自分でやろうと努力しないんです?」
「それは…、君が何か言ってくれれば1番効果的だと…。」
しょうもない言い訳をしだすエドワードにだんだん腹が立ってくる。
「結局、あんたは自分の意思で何かをする勇気がないだけでしょ?だからこそ、マリアンヌ様の傲慢さがこれ以上増長しないように、私という都合のいい人に頼みにきたってわけじゃない。そんなの、逃げてるだけでしょ。一体、あんたは何が怖いっていうわけ!?」
で、敬語も忘れて素で本音を吐き出してしまった。
私がそんな事を言うと思ってもいなかったのか、さっきまでの無表情が驚きに変わっている。
その瞬間、私はハッと我に帰ったが、そのまま引き下がれるわけもなく…。
「と、とにかく!今回はマリアンヌ様が可哀想なので力になってあげます。貴族達の会合が終わったらイーディス侯爵家に伺うのでそれまでに自分の考えを改めておいてください!!」
そう言い放ってその場をそそくさと離れた。
ヤバイヤバイヤバイ…!!
他人任せなエドワードに腹立ちすぎて本音をぶちまけてしまった…。
マジでどうしよ、マジで!!
と、とりあえず、なるようになる!かな?
ゼンとセリスの絡み多めでしたね。




