新たな出会い
「えっと、レアナ嬢?それはど、どういった意味で?」
恐る恐る聞き返すと、
「そのままの意味だけど…。とりあえず、少し話しません?」
レアナ嬢は悪戯っ子のような笑みを浮かべて言った。
これはやばい…。
「で、何でそのようなメイクを?」
私達はテラスに移動し、話を再開した。
これは、どうしたもんか…。本当の事を話すべき?
でも、初対面の人にこんな複雑な話をするのは憚られる。
「どうして、レアナ嬢はメイクをしている事にお気づきになられたんですか?」
悩んだ末に私は質問に質問で返す事にした。
「私の家は女性の化粧道具で有名なの。王妃様にもランブロウ家が献上してるわ。だから、そこら辺はとても敏感なの。」
ランブロウ侯爵家。
侯爵家の中でトップクラスの地位で、色々なものを生み出す、いわば『発明家』みたいなものだ。
「前見たときも思ったんだけれど…貴方のそのメイク技術にとても惹かれてしまったの!素晴らしいわ!」
レアナ嬢は目を輝かせながら言った。
なるほど。この子は興味と好奇心から私に声をかけたってわけね。
そろそろ、社交界にもコネがほしかったところだし、身分的にもちょうどいい相手だわ。
「メイクをしているのは、目立ちなくないから。ただ、それだけですよ。レアナ嬢。」
そう思い、私はにっこり微笑んだ。
「そっちが貴方の素なのね。私の事はレアナでいいわよ。」
レアナも微笑む。
ふむ。レアナとは良い関係が作れそうだ。
「私もセリスティアでいいわ。メイクの方は本当に目立ちたくないだけよ。」
私が肩を竦めると、
「ふーん。詳しくは聞かないけど、複雑な事情がありそうね。でも、私が貴方に声をかけたのはもう一つ理由があるのよ。」
レアナはふふふと笑いながらそう言った。
「それは一体、何…」
そして私が聞き終わる前に、
「ミリアナ嬢の事よ!初日の挨拶から、男に色目を使いまくって!私達のクラスの令嬢達は本当に困ってるのよ!でもミリアナ嬢は位が高いから、私が注意するしかないわけ!!」
レアナは怒りを爆発させてしまった。
「なのに、『そんなに、私の事が嫌いですか…?私は皆さんと仲良くしたいのに…。』ですって!白々しいったらありゃしないわよ!!」
うわぁ、やらかしてるわ。私の想像以上に。
まさか、クラスの女子をほぼ敵に回すとは。勇気があるというか、無鉄砲というか。
「ああいう子なのよ。どうせ、他の令息達を煽てて可愛く愛嬌を振り向いてるんだろうけど。私達、女からしたら本当に腹立つのよね。」
私はレアナを落ち着かせながら言うと、
「そうなのよ!っていうか、話が通じないのよ…。本当に泣きたい気分になったわ。」
レアナはお手上げといったように首を縦に振った。
こんなに話が合う相手は久しぶりだな。
だから私はさらに、
「家の雰囲気とか最悪だから。侯爵はミリアナとユノさんばっかり気にしてるし、マリアンヌはそれで機嫌が悪いし、エドワードは何考えてるか分からないし。」
家の事情も付け足した。
すると、
「イーディス侯爵家の事は社交界でも噂になってるわ。母親の違う娘が3人もいて、高飛車な長女、冷遇されてる次女、溺愛されている三女ってね。」
興味深い事実をレアナは教えてくれた。
社交界の噂、恐るべし。
「そのうちの冷遇されてる次女が私ね。」
私がため息をつきながら言うと、
「私にとってはセリスティアが1番まともでしっかりしてると思うんだけど。」
レアナが不思議そうに首を傾げた。
「私は娼婦の娘だからね。それに、この外見でしょ?会った瞬間、見捨てられたわ。」
今のこのブサイクな外見は人工だけど、当時は本当にやばかったし。
「イーディス侯爵って人間の中の屑ね。私だったら、ぶん殴ってるわ!」
レアナは殴る真似をしながら言う。
「まあね。それよりもミリアナの事はどうするの?」
苦笑いしながら尋ねると、
「とりあえず、ミリアナ嬢の暴走を止めたいんだけど…。第二王子殿下がついてたら難しいわよね。」
レアナは肩を落としながらため息をついた。
「とりあえず、どうすればいいかはまた話し合わない?来週の月曜日とかでどう?」
そんなレアナに話を持ちかけると、
「いいけど…。明日とかじゃダメなの?」
怪訝そうに聞いてきた。
そりゃまあ、普通なら明日でいいんだろうけど…。
明日、仕事なんだよなー。
「私、学園にほぼ来てないから。授業受けたの今日が初めてだし。」
そう答えると、
「えっ?じゃあ、普段は何してるの?」
レアナは驚きながら聞き返してきた。
「それは、今は秘密。順を追って話すね。」
私はニコッと微笑み、
「じゃあ、またね。」
その場を去った。
番外編挟みます(^^)




