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初仕事編1

アジャ編です!!

私が?マリアンヌを?

心ない暴言を何回も投げつけられたのに?

「ちょっと、考えさせてほしい。」

マリアンヌが可哀想なのも分かるし、エドワードの気持ちも分かるけど…。

まだ、私の中では決心がつかない。

私がエドワードの目をしっかり見て答えると、

「分かった。君は明日から、仕事で騎士団を離れると聞いている。それが終わったら答えを聞かせてほしい。」

エドワードはそう言って、目を伏せた。

会話が止まってしまい、何となく気まずい雰囲気になってきた。

この空気に耐えられなくなって、

「じゃあ、私はこれで。」

私はそそくさとその場を離れたのだった。



「お嬢様、準備完了です!」

次の日、私はユラの声を合図に別館から出た。

どうやら、フィンが上手くやってくれたらしい。

よし!!

昨日の事はとりあえず置いといて、仕事に集中するぞ!!

仕事、仕事!!

気持ちを切り替えて、私は城まで走っていったのだった。



「お前の荷物、小さいな。」

第一騎士団に着き、乱れた髪を整えていると、ゼンにそう声をかけられた。

「えっ、あんまりゼンと変わらないと思うけど?」

逆にゼンの方がちょっと小さい気がする。

「いや、女性の荷物っていうのは多いものだと思ってたから、意外だなと。」

本当に不思議そうにゼンが言うものだから、

「そういうのを、偏見っていうんだからね!人それぞれでしょ。」

強めに反論してしまった。

「まあ、そうか。悪い。」

バツの悪そうな顔をしてゼンは言う。

流石に言い過ぎたかなと思って、声をかけようとすると、

「おい、お前ら!さっさと行け!馬車が待ってるだろうが!!」

急に団長が大きな声で部屋に入ってきた。

「はい!」

「行きますって。」

私達は団長に急かされ、早足で馬車まで向かった。



「ここが、アジャね!!」

馬車に乗って2時間ほど経った頃に、私達は目的地へと到着した。

「何で、そんなに興奮してんだ…。」

私の高いテンションとは正反対の声でゼンは言った。

ん?

「そりゃ、初仕事だし。というより何でそんなにしんどそうなの?」

いつもより、テンションが低い。というか、気分が悪そう?に見える。

「俺にとっては、あんな長時間馬車に揺られて酔わないお前が不思議でしょうがないよ…。」

本当に吐きそうな顔で言う。

乗り物酔いするタイプなんだ…。

何でもできるイメージなのに何か意外。

「私は平気なんだよね。何でだろ?それより、ちょっと休んでた方がいいんじゃないの?」

本気で心配になってきて尋ねると、

「いやいい。それより、領主に挨拶が先だろ?」

ゼンは気分の悪そうな顔を引き締めて、歩き出した。

本当に大丈夫かな?



「いや〜、遠くからよくぞお越しくださいました。」

領主の屋敷へと向かうと、でっぷりと太ったいかにも貴族というような中年の男性が出迎えてくれた。

「魔獣が出て本当に困っていたんですよ。来てくださり、助かりました。ところで、お名前は?」

そう聞かれ、

「騎士団から派遣されて来ました。第一騎士団所属のセリスと申します。」

「同じく、第一騎士団所属のゼンです。」

私達は名乗る。

すると、

「家名は何でしょうか?」

突っ込んで聞いてくる。

不思議に思いながらも、

「家名はありません。」

と答えた。

その答えに領主は一瞬固まり、

「お前達は平民なのか!?」

あからさまに態度を急変させた。

何なの?こいつ。騎士団には平民も結構な割合でいるんだけど。

そう思っていると、

「まさか、平民を寄越すとは。騎士団は何を考えているんだ。」

身分差別な発言をし始めた。

実力と身分は関係ないでしょ!?

私が反論しようとすると、

「失礼ですが。実力と身分は関係ありません。実力を見込まれて私達が派遣されました。平民というだけで、できないというのは偏見が過ぎます。」

先にゼンが冷静に言い返した。

「ふんっ。実力などどうでもいい。私に平民を寄越す事に腹を立てているんだ。平民如きが口答えするな。」

性根腐ってるだろ。実力重視に決まってるだろ!!

それでも怒りを堪えていると、

「とにかく、早く魔獣を退治しろ。以上だ。」

そう言って、領主は話を終わらす。

あー、もう我慢の限界!!

私が怒りをぶちまけようとすると、ギュッと手を握られ、

「やめろ。黙ってろ!」

小さな声でゼンに窘められた。

その声で我に帰り、怒りを抑える。

そして、部屋から出ようとすると、

「そこの女騎士だけ残れ。」

領主にそう言われて、ゼンは私を気にしながらも部屋を出て、私だけが部屋に残った。

不本意だけどね!



「何でしょうか?」

怒りを押し堪えて尋ねると、領主はニヤッと笑い、

「平民の癖に、美しい顔立ちをしているじゃないか。今晩、わしの部屋に来い。」

と言った。

コイツハナニヲイッテイルノカナ?

一瞬理解できずにフリーズして、理解した途端に鳥肌がたつ。

気持ち悪っ!!むり、むりむりむり!!

それでも、

「お断りします。」

にこやかに微笑んだ。

本当は、お前みたいな中年親父の所に行くわけねーだろーが!!地獄に落ちろ!!

って言ってやりたかったんだけどね。

一応、気を使ってやったんだよ!

そんな私の気遣いに対して、領主は真っ赤になって起こり出した。

「わしの命令が聞けんのか!?平民の癖に!!わしに逆らうな!!」

どんな育てられ方したらこうなるんだよ。

私は怒りを通り越して、冷静になっていた。

「私の上司は第一騎士団長で貴方ではありませんので。では、失礼します。」

領主の怒りをスルーしてにこやかな笑顔で部屋を出た。



屋敷を出ると、ゼンが待ってくれていた。

「ゼン!」

私が声をかけると、パッと振り向いて、

「何を言われてたんだ?」

と聞いてきた。

うっ。

この内容、あんまり言いたくない。 

だから、

「あんまり、話しても意味ないことだから気にしないで。」

そう言ってごまかす。

ゼンは怪訝そうな顔をしていたけど、

「そうか。なら、別にいいけど。」

突っ込んで聞いてはこなかった。

「それよりもなんだが…。」

安心していると、ゼンが話しかけてくる。

「ん?」

私が聞き返すと、

「気分悪くて、死にそう。」

そう言って私の方に倒れ込んできた。

「うわっ!」

私よりも20㎝ぐらい高いゼンが急に倒れ込んできたものだから、軽くバランスを崩す。

「ちょっと、大丈夫!?」

「大丈夫じゃない…。」

完全に体調が死んでいるゼンを支えながら宿へと急ぐのだった。

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