番外編3 ヒロインの目覚め
ヒロイン視点です。
ある時、気づいた。
この世界は私の為の世界なんだと。
お母さんは優しくて美人。
お父さんは時々しか会えないけどかっこよくて優しい。
毎日、不満らしい不満はなく楽しく生活していた。
そんなある日
「貴族の庶子の癖に!!」
そんな言葉と共に強く押された。
私はそのせいで強く頭を打ってしまった。
その時に思い出したのだ。
自分の前世とここが『光の聖女の運命』の世界である事を。
『光の聖女の運命』
前世で何度もやった。
特に王太子ルートが最高なんだよね!
口は悪いけどめっちゃイケメンで実は優しい。
ヒロインの一個年上で学園の生徒会長。
1年の時に学園のカリキュラムを終わらせているみたいで、滅多に姿を現さない。
ヒロインも会った事は入学式でしかなかったんだけど、学園生活が辛くなってきて町にお忍びで出かけた時に出会うのだ。
ヒロインが絡まれてるのを助けてくれるんだよね!
1人の騎士として。
王太子は王家の決まりで平民として騎士団に所属していたのだ。
秘密を知られた王太子はヒロインに学園でも接触を図るんだよね。
最初は脅されてるんだけど、何度もピンチに陥るヒロインを助けたり、ヒロインの思わぬ優しさに触れてだんだん惹かれていくのだ。
そして、攻略をしていく中で重要なのは悪役の存在!!
異母姉のマリアンヌ・イーディスというのがこのゲームの悪役令嬢。
美人だけどつり目で怖い感じの子だ。
王太子に好かれているヒロインに嫉妬して犯罪まがいの嫌がらせを繰り返すのよね。
もう1人の異母姉であるセリスティア?だっけを使って。
こいつが1番厄介。小心者でマリアンヌの言いなりだから実行犯はいつもこいつ。
ヒロインのサポートキャラになる場合とマリアンヌの手先として嫌がらせをしてくる場合の2パターンがある。
ゲームだったら、別にどっちでもいいんだけど危ない目にはできるだけ遭いたくない。
だから、こいつをまず懐柔しないとね!!
優しさに飢えてるはずだから、そんなに難しくはないはず!
まあ、ヒロインが聖女と判明してからはすぐにマリアンヌは処刑されてたからそれまでの辛抱よね。
それよりも…。
せっかく、ヒロインに転生したなら全員攻略したいな…。ゲームには逆ハールートはなかったけど、このゲームを知り尽くしている私ならできる気がする!!
そして、最後は王太子と結婚して王妃かな。
恋愛は全員とするけど、やっぱり王太子でしょ!
身分的にもキャラ的にも最高だし!!
よし、謳歌してやる。
この世界は私のためにあるのだから。
時は流れ、私は14才となった。
本当にここまで長かった。だって、平民だから子供なのに働かないといけないし!
お父さんのおかげでかなり裕福だったけど、前世に比べれば全然だ。
だって、私は前世でバリバリのお嬢様。財閥の一人娘だったんですもの!
だから、洗濯とか洗い物とかあり得ない!!
あんなの家政婦がするもんでしょ!?
それでも、一応優しくて可愛いヒロインだから我慢してやってたけど!!
もう限界だわ。
そんな時にお父さんがお母さんと再婚するという話になり、やっと平民生活に幕を下ろしたのだった。
ゲームが始まる。ここからが私の薔薇色人生が始まるんだわ!!
私とお母さんはすぐに屋敷へと連れて来られた。
お父さんが早く一緒に暮らしたいと言ったからだ。
「まあ!こんな大きなお屋敷に私達が住んでもいいのですか?」
お母さんがお父さんに心配そうに尋ねる。
「いいに決まってるだろう。もう、ここはお前達の家だ。」
お父さんが優しげに言う。
私的にはこれくらい普通だけどね。
前世と同じくらいの大きさだし。ていうか、お母さんの『私達』という言葉に苛立つ。
私は元々高貴な人間なのに一緒にしてほしくない。
この世界の聖女でもあるんだから。
私達はすぐに広間に案内され、席についた。
「前の奥さんのお子さんもいるのよね。うまくやっていけるかしら…。」
お母さんが心配そうに呟く。
ゲームでは結婚してからのお母さんの描写はあんまりなかったからどうなるかはあんまり知らない。
正直、どうでもいいし。
そう思いながらも、
「お母さんは優しいし、私の自慢のお母さんだよ!だから、自信持って!!」
と声をかけた。
あくまでもヒロインは優しくてちょっと無邪気な可愛らしい女の子だ。
そのイメージを壊さないようにしないといけない。
「本当にミリアナは優しいわね。ありがとう。」
花のような笑顔でお母さんは笑った。
そうこうしているうちに、お父さんが2人の子供を引き連れて広間に入ってきた。
1人は同じくらいの年の女の子。
マリアンヌだ。私達の方を見た瞬間、顔をしかめていた。
もう1人はエドワード。流石、攻略対象。かなりのイケメンで高身長だ。
ただ、ゲームの設定通り他人には興味がないらしく、こちらをチラリと見ただけで全く反応はなかった。
そして数分経った頃に遅れて女の子が入ってきた。
私はその子を見た瞬間、笑いそうになった。
ボサボサの黒髪にそばかすだらけの顔。おまけに眼鏡をかけている。目はかろうじて紫だけど私と並べば確実に私が貴族でこの子が平民だと思われるだろう。
この子がセリスティアか。
実際見てみるとかなりのブスだ。
お父さんが怖いのか、ずっと下を向いている。
でも、簡単に手懐けられろうだしその点ではラッキーかも。
そんな中で私達の紹介が始まった。
「まず、ここにいる女性がユノ。そしてこの子がミリアナだ。私はこの女性と結婚しようと思う。」
お父さんがそう言った瞬間、マリアンヌが真っ青になった。
クスッ。その様子に思わず笑いそうになる。まさか、再婚するとは思ってなかったんだろうな。
その上、同じくらいの年の女の子もいるって。自分が愛されていない事を再認識したんじゃない?
まあ、存分に私の事を恨めばいいわ。
どうせ、処刑されるんだから。
それでも、不安そうな顔でお父さんを見つめた。
すると、
「ミリアナ、皆はお前を歓迎している。心配はいらない。」
お父さんは優しくそう言った。
そうそう。ゲームの言葉通りだ。
そして、マリアンヌが…
「わ、私は歓迎なんかしてません!平民の義母と平民の姉妹なんてごめんですわ!!」
こう言うのよね。はっきり言って馬鹿だと思う。
お父さんの言葉で私に逆らわない方がいいって分からないかな?
ゲームだから、仕方ないんだろうけど。それに、違う動きされたら困るんだけど。
私は心の内とは裏腹に涙をこぼした。
展開通りにしないと。
そこで、お母さんが
「オーギュスト様、いや侯爵様。まだ、早すぎるんですわ。これではそちらの子にもミリアナにもいい事はありません…。」
と言った。
お母さんも涙を流し、完全にマリアンヌを悪者にする。
しょうがないよね。そういう決まりなんだし。
心の中でニヤッと笑う。
その瞬間、
パチンッ!
頬を叩く音が鳴った。
「お、お父様…。」
「お前をそんなふうに育てた覚えはない。身分で差別するなど心が貧しい証拠だ。頭を冷やせ。」
マリアンヌは外へと連れ出されていった。
セリスティアは黙っているし、エドワードも少し顔を曇らせただけで動きはしなかった。
マリアンヌがいなくなった事で話し合いは終わり、解散となった。
私の仕事はここからね!
私はひっそりと出て行こうとしたセリスティアを呼び止める。
「ちょっと待って!」
セリスティアはゆっくりと振り返った。
その目は動揺を宿している。
「な、な、何ですか?」
「いや、あのこれからよろしくね!」
無理やりな感じの笑顔でそう言った。
セリスティアは驚きで固まっている。そうそう。
そのまま、
『えっと、えっ、用事があるのですみませんっ!』
と言って立ち去ればいいのよ。
あんたはマリアンヌが怖くてまだ、素直にならないんだから。
なのに、、、
「えっと、よろしくお願いします…。」
セリスティアは控えめにそんな言葉を発した。
は?
私の中に驚きが走る。
何でそんな言葉を言うの?ゲームと違うじゃない。
「えっ、あっ。」
驚きのあまり、言葉が出てこない。
何なの、こいつ。もしかして、転生者…。
そう思った瞬間に
「えっと、えっ、あのやっぱり、用事があるのですみませんっ!」
そう言って驚くような速さで立ち去っていった。
私の思い違いか…。
結局、どっか行っちゃったし。
私の記憶違いだろう。
それに、単なるモブに転生してそのまま暮らす人なんていないでしょ。
セリスティアってかなりブスだし。
なのに、あのままだったしやっぱり私の勘違いだよね!
さて、今日やらなきゃいけない事は終わったし。
お父さんが用意してくれた豪華絢爛な部屋にでも行くか!!
私はセリスティアの事なんてすぐ忘れて、前を向き始めたのだった。
どうなるのか心配ですね。




