侯爵家の葬儀
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私が自分の部屋に入ってすぐに、
「お嬢様!!」
ユラが飛び込んできた。
今日の結果でも聞きにきたのかなと思っていると、
ユラは真剣な面持ちで言った。
「奥様が…亡くなりました。」
次の日、すぐに葬儀が行われた。
「お母様!お母様!!」
マリアンヌが棺にすがって泣いている。
あんな母親でもマリアンヌにとってはかけがえのないたった1人の母親だったのだ。
分かっていたことではある。そう。分かっていた。
だからこそ、こんなにも虚しい。
私は未来を変えられなかった。知っていたくせに、変えるチャンスがあったくせに…。
私はすごい自己嫌悪に陥っていた。
そりゃ仲が良かったわけじゃない。逆に、嫌われていたし、嫌っていた。
でも、でも!
「お嬢様のせいじゃないですよ。」
急に誰かが私の背中を撫でた。
顔を上げると、フィンが前に立っていた。
「お嬢様には俺には分からない事情があるんでしょう?それのせいで、お嬢様は自分を責めてるんじゃないんですか?」
いつもと違う優しい声に涙が出そうになる。
それを堪えて、
「何で、何でそんな事が分かるの?」
と聞いた。
「お嬢様は14才にしては考え方が大人すぎる。嫌な事があっても、大人みたいに受け流して。何か大きな秘密を抱えてるんじゃないかっていつも思ってました。」
フィンは私の背中をトントンと優しく撫でながら、
「そんなお嬢様が今、すごく落ち込んでる。だから、そのせいでお嬢様は自分を責めてるんじゃないかと。」
と、言葉を続けた。
「でも、私が悪いの。」
未来を知っていたくせに変えられなかったんだから。
そんな私にフィンは、はあっとため息をつく。
「ああもう。いつものお嬢様じゃないと、調子が狂うな。じゃあ聞きますけど、奥様が亡くなられた理由ってご存知ですか?」
急にフィンが聞いてきた。
戸惑いながらも、
「侯爵の浮気によるストレス…?」
質問に答えると、
「そうです!じゃあ、1番悪いのは誰ですか?」
フィンはさらに質問してきた。
1番悪い人…。そりゃあ、
「侯爵…。」
侯爵に決まっている。
フィンは微かに笑って、
「そうですよ。奥様は侯爵様が浮気をしている事に耐えられなくなって体調を崩されました。そこに、お嬢様は関係ありませんよ。」
私を宥めるような口調で言った。
「でも!!」
尚も言い募ろうとした私に、
「でもはないんです。それが事実。奥様が亡くなられた理由です。」
きっぱりとフィンは言い切った。
確かに、そうだ。私は関係ない。侯爵が悪い。
侯爵が浮気したのが悪い。それで夫人は体調を崩したのだから。
そう思いながらもどこか納得できない。
気持ちが顔に出ていたのか、ファンがまた口を開いた。
「お嬢様、落ち込んでも仕方がないんです。起きてしまった事は変えられないでしょう?今、1番大事なのは前に進む事です。」
その言葉に私はハッとした。
そうよね…。ここで落ち込んでいても仕方ない。
どんなに落ち込んでても立ち直らないと。
これから、変えないといけない未来があるんだから。まだ、変えられるチャンスがあるんだから!
「ごめんなさい、フィン。あと、ありがとう。」
私はそう言って立ち上がった。
「それでこそ、お嬢様です。落ち込んでるお嬢様はらしくないですよ。」
フィンはいつもの軽い笑みで言う。
「余計なお世話よ。でも、今日はフィンが大人に見えた。」
私も言い返すと、
「『今日は』は余計です。」
そう言ってフィンは仕事に戻っていった。
無事に葬儀が終わり、屋敷を出るとエドワードが1人で立っていた。
びっくりして固まっていると、エドワードは急に振り向いた。
「何だ?」
そんな私を見て不愉快そうにエドワードは顔を歪める。
「いや、何でもないです!」
私はすぐに立ち去ったけど…。
エドワードの姿を思い出し、首を傾げる。
泣いていた?私にはエドワードが泣いているように見えたのだ。
エドワードといえば、確か、彼も騎士団の入団試験を受けていたはず。今年で学園を卒業するから。
受けると聞いた時はビビったけど、原作と同じだから驚きはしなかった。
それとゲームの基礎知識くらいの記憶ぐらいしかないから、何ともいえないけど…。
泣くくらいの思い出、夫人とあったかしら?
私はそんな疑問を感じながら、別館へと戻っていった。
3日後、城で合格発表が行われた。
もちろん、私は合格!
エドワードも合格したらしい。
でも、あの例の男は見つける事ができなかった。
名前も知らないから、合格か不合格かも分からないけど、あの腕なら合格しているだろう。
「まあ、第二関門クリアってところかしらね。」
ちなみに第一関門は師匠。
まだまだ、私も頑張らないとね!
未来を変えるために!!
夫人…可哀想ですね…。
でも、フィンはちょっと見直した!!




