対決
アルフレッドとの対決です!
大人しく待っていると、
「皆さん、これから試験の説明を始めます。」
騎士らしき人がたくさんやってきた。
その中に、アルフレッド・モンフォール発見!!
やっぱりイケメンだ。
癖のない銀髪に、碧い眼。整った爽やかな顔立ちをしている。試験を受けに来た女性達はアルフレッドに釘付けだった。
「皆さんには3人の騎士達と戦ってもらいます。時間は1人十分。基本は1人に勝てば合格ですが、多ければ人数は絞ります。勝った人数や剣捌きは配属場所にも響きますので真剣に行ってください。」
そんな女性達はさておき、試験内容の説明は着々と行われていった。
「皆さんが勝ったとみなされるには2つ方法があります。1つ目は、相手に戦意喪失させること。具体例としては剣を奪ったり気絶させたりです。
2つ目は、相手が胸につけているバッジを取ることです。これは、軽く掴むだけで取れるようになっています。説明は以上です。」
ふむ。現実的なのはバッジを取ることでしょうね。
現役騎士の剣を奪ったり気絶させたりするなんて無理に近いもの。
でも、とりあえずは1つ目の勝ち方を狙おう。最初から、楽な方にいってたら勝てないもんね!
説明は終わり、それぞれの準備へと入ることになった。私の最初の順番は5番目か。結構あるな。
そう思った私はウォーミングアップでもしにいくことにした。
私の剣は短剣だけど、試験で使うのは長い剣と指定されている。
でも、長い剣と短剣は扱い方が全然違うから、本調子を出せるか分からない。
もちろん、長い剣でも稽古はしてたけど私の扱いやすさでいけば短剣が圧倒的だ。
はぁ。もうちょっと均等に練習すればよかったかな?
後悔の気持ちが芽生えてきた。
いやいや、今そんな事考えてもしょうがない。とにかく、ポジティブ思考でいないと!!
そう考え、時間がくるまでウォーミングアップに費やしたのだった。
「5番目の方は会場までお集まりください。」
そんな声が聞こえて、私はハッと我に帰った。
やばっ。熱中しすぎて、時間を忘れてた。
慌てて、試験会場へと向かう。
すると、そこにはもうアルフレッド・モンフォールの姿があった。
「すいません!遅れちゃいましたか?」
私が尋ねると、
「いえいえ、全然大丈夫ですよ。まだ始まるまであと5分ほどありますから。」
爽やかな笑みでそう返してくれた。
流石、攻略対象。無自覚な人たらしだ。
「そうですか。ありがとうございます。」
私は心の声を微塵も感じさせない笑みを浮かべて礼を言った。
そして配布されていた剣を取り出し準備が整ったところで
「では、始めてください。」
という声が聞こえた。
その声と同時に私はすぐに距離を縮めた。
私の動きは速い。動揺させて、剣を弾いて奪おうと思ったからだ。
でも、アルフレッドは驚いた素振りは見せながらも、
カキンッ!!
剣は強く弾き返してきた。
やっぱり、そう上手くはいかないよね!
「すごいですね。目で追えませんでしたよ。」
私の剣を受け流しながら話しかけてくる。
うざすぎ!こっちは真剣なのに!!
「ちょっと、黙ってもらっても!?」
私はそう言って少し強めに剣を弾き返し、距離を取った。
この人、剣さばきが繊細すぎる。全てが計算されてるようで私の調子が狂うのだ。
師匠はどっちかというとパワーでくる方だったから、こういう動きを見るのは初めて。
やっぱり、経験値がないっていうのはかなりのハンデになる。
私は歯を食いしばりながら、相手を見返した。
「どうしました?」
アルフレッドはそう言いながらゆっくりとこっちに近づいてくる。
分かってる。このままじゃ負けてしまうことは。
もう、5分は経ってしまっているのだ。
仕方がない。私はある作戦を実行することにした。
そして、もう一度距離を縮め、剣を繰り出す。
「単調な動きですね。これでは僕には勝てませんよ。」
明らかな挑発。
いやいや、こんなキャラだったっけ!?
もっと温和で優しいキャラだった気がするんだけど!
そう思いながらも、
「それはどうでしょう?」
私はその言葉と共に一気に屈んだ。
この動きは予想していなかったのか、一瞬アルフレッドに動揺が走る。
アルフレッドの身長は推定180㎝。対する私は160㎝だから、その差は20㎝ほど。
つまり、屈むことによってほんの一瞬私はアルフレッドの視界から変えることができる!!
その瞬間、一気に首元へと剣を繰り出した。
カキンッ!!
「はあっ。危ないところでしたね。」
私の剣はアルフレッドによって弾かれ、後ろに突き刺さっていた。
時間はあと、数秒しか残っていない…。
「僕の勝ちです。」
アルフレッドは軽く笑みを浮かべてそう宣言する。
その言葉に私も
「そうですね。」
と、同意した。
「ここが、戦場であれば。」
という言葉も添えて。
ん?という顔を浮かべるアルフレッドの目の前で私は手を広げた。
それを見た瞬間、彼の顔は驚きに変わった。
なぜなら、そこにはバッジがあったから。
理屈はこう。
私はさっきの攻撃が塞がれることは分かっていた。
だから、捨て身の作戦でバッジを取ることにしたのだ。
彼の注目を首に集め、左手でパッと胸のバッジを取っておいたというわけ。
諦めの表情に変わり、
「ははっ。全く、気づきませんでした。僕の完敗です。」
お手上げというふうにアルフレッドは肩を竦めた。
「いえ、今の私じゃ貴方に勝てない。そう思ったからこの手を使いました。だから、私の負けなんです。」
そんなアルフレッドに私はきっぱり言い切って頭を下げた。
「ありがとうございました!」
「こちらこそ、とても勉強になりました。本当にありがとうございました。」
アルフレッドは少し驚いたように言って、笑った。
勝ったけど、勝ったけど!モヤモヤする!!
だって、これが試験だったからあれで勝てたけど、戦場で剣が自分の手から無くなれば死んだと同じ。
だから、あの勝負は完全に私の負けだ。
かなり、強かったし現役騎士だから当たり前かもだけど悔しい!!
私はその悔しさを胸に次の相手の場所へと向かったのだった。




