第97話 久々の学校
「………なんか、お前の姿をかなり久しぶりに見た気がする」
「何言ってんだ?」
いつもの登校時間、いつもの街角で。
俺は待ち合わせをした健と数日ぶりに会い、相変わらず軽そうな笑みを浮かべた健に、閉口1番そう言った。
そして苦労しながら学園の坂を登り、教室に入ると。
「………そして結城ははてしなく久しぶりな気がする」
「………どうした?」
俺は読書中の無敵超人、眼がねの結城(どっかの会社名みたいだな………)を見ながら、そう言った。
「アッハッハ! コイツ影薄いからなー!」
うひゃひゃひゃ! と自分のことは棚に上げて俺の発言を笑う健だったが………
ドカッ!!
「ぐほっ!!」
「おはよっ!」
こちらもヘアバンド(おニューだろうか?)を光らせながら久しぶりに元気な様子の紀子が、健の頭に容赦ないニールソバットをぶつけた。
「響太もおはよ!」
「おはよう。元気で何よりだけど………毎度毎度、なぜ健を巻き込む?」
かわいそうに。
どんがらがっしゃーん、てな感じで机の山に埋もれる健。
「いんやー、意識してるつもりはないんだけどさー、挨拶代わりに、つい」
「……おいおい」
からからと笑いながら悪びれた様子のまるでない紀子。
「……ま、健だから大丈夫だろう」
結城が本から視線を外さないまま、そう言った
「そういやミハ……じゃない深冬と都さんは?」
紀子は教室の後ろ側、転入してきたばかり(ということになっている)深春の席をちらりと見た。
「忙しいらしくて、今日も休み」
「へー、やっぱり」
今朝のニュースの占いコーナーに深春が出ていたのを見たのだろう。さして驚いた様子もなくそういう紀子。
「だけど、今日の夕方には帰ってくる………かも」
仕事の進み具合によるから、詳しい時間はわからないがと付け加え、響太は言った。
「………」
俺の言葉を聞いた紀子は、少し考えるように視線を下に落とした。
「どうしたんだ? 紀子」
「………うんにゃ」
それだけ言うと、気合を入れるようにパンパン! と自分の頬を叩いた。
「いよっしゃー! 授業頑張るよー!」
「………なぜ授業でそんなに張りきる?」
「たぎる私の血が、例え退屈な授業でもはりきってやろー! と叫んでるんだよ!!」
(……わけわからん)
「………気合を入れているところ悪いが」
結城が椅子に座ったまま、ぽつりと呟いた。
「次は自習だそうだ」
「「………あ」」
都が休んでいることにより、1限目の数学はプリントを配られただけの自習となっていた。
***
その日の夜。
「帰れた―――!!」
やったー!! と叫びながら、響太が玄関の扉を開けると同時に響太に飛びついてきた。
「あー響太だ響太だ響太の匂いだー! あー癒されるー!」
「ちょ、ま………」
ぐりぐりと響太の顔を胸にうずめさせながら、都は至福の表情を浮かべた。
「……都さん、元気だなぁ」
寝不足らしい深春が、その後ろであくびをかみ殺していた。
響太はどうにか都をひっぺがすと、深春に向き直る。
「疲れてるみたいだね。お風呂入る?」
「………ん。じゃ、悪いけどそうさせてもらう」
若干ふらふらしながら、深春は脱衣所に向かった。
……その時だった。
ぴんぽーん!
「………ん?」
誰だろう、と思いつつも「はーい!」と響太は返事すると、
「あ、響太?」
「へ……」
おーっす! とこちらも元気な様子の紀子が玄関先にいた。