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霊の心  作者: タナカ
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第89話 悪い歯車




 ………同時期(?)、現代。

 山田家にぴんぽーん、とチャイムが響いた。


(……………あれ?)


 玄関の石畳の上には、学校帰りの紀子が鞄を持ったまま、首を傾げていた。


(響太、どうしたんだろう?)


 空を見ると、夕日が綺麗な紅色に染まっていた。カァカァ、と呑気に鳴くカラスの声が、どこかもの悲しい。


(時間が時間だし、買い物にでも行ったのかな?)


 紀子は庭からリビングを盗み見たが電気がついてなく静かだったので、そう結論づけると、そのままきびすを返した。


(……ま、私は私でやることあるしね)


 何をやるつもりなのか。

 紀子の足取りは、どこか軽いものとなっていた。







***







 ………………その10分ほど後のこと。

 今度はぷるるるる………ぷるるるる………と電話が鳴り響いた。

 10回ほどコールした後、電話は留守番電話に切り替わる。

 ぴーっと鳴った機械音と同時に、都の声が聞こえてきた。


『響太? ごめ〜ん! 今日は私も深春もど〜しても帰れそうにないです! ご飯はいりません! 帰るのは明日の夕方になりそうです。

 ちくしょう文句ばっか言いやがってあのクソディレクターめ!! 待っててね! 今日が番組作りの山になるみたいだから、今日さえ終われば今後は少しゆとりを持って家に帰れそう!』


 頑張るぞ〜! と気合を入れる声が電話から流れ出る。


『けど雪……ああ、初代結の巫女さんの名前、つまりはユキナの名前ね、コレ。まぁとにかくその子のことなんだけど。不幸よ〜、この子。

 外国人ってことでしこたま差別と虐待をされたにも飽き足らず、飢饉になると同時に匿われていた旅篭屋からも捨てられるんだもん。よくもまぁしっかり生きて、しかも宗教まで立ち上げようなんて根性出たな、と思う。感心するわ。

 これからこの努力と苦労をユキナとた〜っぷり相談して、テレビでどう演出するか決めるつもり。てなわけで、私の報告は以上です。また明日ね!』


 ぴーっと、無機質な電話の音が玄関に響いた。







***







「響さん? そろそろ夕餉の時間ですよ」

「あ、ああ。わかった」


 千鶴の声に生返事を返しながらも、響太は机の前でずっと考えていた。


(………飢饉の直前の時期。ってことは………ここの経営も当然厳しくなるってことで)


 ちらりとこの旅館の台帳を見たが、赤字は出していないが、だからといって大幅な黒字も出していない。そこそこ(もう)けている、という程度の経営だ。 


(飢饉を止めることなんて当然できないけど、だけど………)


 日記を見た限りでは、響兵衛は雪を匿うことにそれほど執着しているようには見えない。

 ………つまり。


(……飢饉になったら、たぶん雪は捨てられる)


 捨てられたら、雪は1人で生きていけない。今度こそ餓死するだろう。

 ………だけど。


(自分に何ができる?)


 あとどれぐらいの間、響兵衛のままでいられるのかはわからないが、だがどれだけの間にしろ、自分1人の力で雪を助けるのは難しい。


(どうすれば)


 あー現代ならある程度解決法はあるかもしれないのに〜、と苦悶する。

 しかしどれだけ考えても、答えは出なかった。


(………とにかく、夕ご飯にしようか)


 響太はすっと立ちあがり、う〜んと、1つ伸びをすると、部屋から出た。

 そしてぎしぎし鳴る木の廊下を歩いている途中で、


「ねぇねぇ、知ってる?」


 ふと、女性の声を耳にした。


(………なんだ?)


 それはすぐ近くの部屋からだった。

 気になって響太はそっと障子に近づくと、傍から見たら少々怪しいかな〜、と思いつつ障子に耳を当てた。


「雪っていうどんくさい使用人がいるでしょ? あの子、髪を染めてるんだって!」


(………へ?)


 どくん、と響太の心臓が大きく跳ねる。


「へぇ〜、けどなんでそんなこと………白髪でも隠してるの?」

「それがさ〜、まだ噂の段階なんだけど……実はあの子外国人じゃないのかって…

「「え〜!!」」


(マズ………)


 雪の正体がバレかけてる。

 響太は冷や汗を流しながらも、話を聞く。


「もし本当だったら……えらいことだよね〜!」

「お役人が来るんじゃない?」

「私たちにもとばっちりくるかも? やだ〜!」

「だよね? だよね!」

「でさ、今度確かめてみようよ!」


(………確かめる?)


「どうやって?」

「あの子入浴は皆と時間をずらして、深夜に入ってるみたいなんだけど、その時はさすがに髪の染料も落とすでしょ? だからその時を覗き見すれば……」

「あ、な〜る」


 そうしよう! と女の子たちで話がまとまる中、響太は嫌な予感が止まらなかった。


(んなことされたら………)


 雪が追い出される。


(まずい。それだけは絶対阻止しなければ………!)


 響太はぎゅっと拳を握った。






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