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霊の心  作者: タナカ
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第75話 最後の賭け



「………さて」


 コンクリートの地面にバラまかれたお札とかの霊的装備を見ながら、ユキナは唸っていた。


「……この装備であの霊の大群をやっつけるのは、ほぼ不可能どすえ」

「…………どうしよ?」

「……仕方ありまへん」


 そう言うと、グッと拳を握って立ち上がった。


「逃げるんどす!」

「………わかってたけどね」


(………何もそこまで気合い入れて言わなくても)


 普段の結の落ち着いた雰囲気に慣れていた響太は、ユキナがとりついた途端に何か子供っぽくなった結の表情や外観に、違和感を覚えっぱなしだった。

 額に手をあててため息をついたあと、響太は頭を切り換えた。


「けど、それにしたって………」


 言葉を詰まらせながら、響太は重苦しい扉を見た。

 このデパートには非常階段が東と西で2つついているのだが、ついさっきまで非常階段の東側だけを支配するだけに(とど)めていた黒い霧が、今では非常階段の西側も支配している。

 ……下手したら、2階の全てを支配しているかもしれないのだ。

 あの黒い霧は、負の思念の固まりだ。

 下手に触ると、本気で死ぬこともある、危険なシロモノなのだから。


「………確かに、逃げようにも2階を占拠されとるとなぁ」


 唸っていると、響太の携帯がぷるるる………と鳴りだした。


「………? もしもし?」

「あっ、響太!? あんたいつまで廃デパート(そんなところ)にいるつもりよ!」

「………紀子か」


 電話から紀子の怒鳴り声が聞こえてきた。


「………いつまでって言われても」


(………ここから出られないんですけど?)


 ……だからといって馬鹿正直に「出られません」とは、心配させるだろうし言いにくかったので、響太は言葉を濁した。


「………てか、今どこら辺にいるの?」

「屋上」


 そう言いながら響太は紀子がいるらしきデパートの駐車場が見えるように、フェンスの近くまで移動した。

 暗闇でぼんやりとだが、携帯を片手に持った紀子が見える。

 紀子も響太に気づいたらしく、身体を響太たちの方に向けて手を振っていた。 


「………ていうかとっとと帰ればいいのに」


 響太がそう言うと、紀子は「何言ってんの!」と語気を荒げた。


「あんたら2人を残して帰るなんて危なっかしくて出来るわけないでしょ!」

「………へいへい」


 信用されてないのか心配されてるのか、どっちかなと思いながら、響太はそう生返事した。


「………響太はん」

「………?」


 横から声がしたので振り返ってみると、そこには真剣な顔で響太を見ているユキナがいた。


「………電話、下にいる子から?」

「そうだけど」


 響太は電話口を押さえながら、そう答えた。


「……なぁ、響太はん

 その子に頼んで………ロープか何か持ってきてもらえへんやろか?」

「はいっ?!」


 ユキナの突拍子もない言葉に驚き、

 そしてその言葉が意味することに響太は気づいてしまった。


「い、いや………さすがにそれは………」

「もうそれしか方法がないんどすえ」


 ユキナは大まじめに、その言葉を口にした。


「ロープを使って、こっから脱出しましょ」












「うおっしゃ〜! 行くよ〜!」

「よし来い!」


 隣の家の屋根の上から、紀子が大声をあげ、響太が答える。

 紀子の片手には、丈夫そうな縄の束があった。


「でええええりゃああああ!!」

「おわっ!?」


 紀子は助走をつけると、屋上にいる響太に向かって思いっきり縄を投げつけた。


「ぶっ?!」


 ガスッ!

 縄の束は見事に響太に命中し、響太は後ろに倒れたが………

 目的通り、縄を屋上に到達させることに成功した。


「おおきに〜!」


 ユキナが嬉しそうに紀子に向かって手を振っていた。


「……さて」


 ユキナはくるりと振り返ると、「あいた〜!」と鼻を押さえながら(うめ)いている響太に向き直った。


「さ、やるどすえ、響太はん」

「………本当にやるの?」

「それしか手はないどすえ」


 ユキナは響太の傍に落ちている縄を拾うと、それの先の方をフェンスにくくりつけた。


「………よし、強度は十分や」

  

 ぎゅっぎゅっときつくフェンスにくくりつけると、にっこり笑って言った。


「ロッククライミングの始まりどすえ!」






私はやったことありませんし、やる人もおられないでしょうが、一応念のため。

よい子も悪い子も、こんなこと絶対まねしないでくださいね!! 危ないですから!!

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