第63話 番組を作れ!
「番組を!?」
「作るううっ!?」
翌日の朝、山田家の食卓。
7時過ぎ。登校するにはまだ時間的余裕のあるこの時間に、都と深春の叫び声が響いた。
それを言った張本人であるユキナは、行儀悪くテーブルの上に陣取って、う〜ん、と伸びをしながら「そうどす」と言った。
「結神社を紹介するような番組を作って欲しいんどすえ」
「いやいや作るってね! 私はディレクターじゃないのよ!」
都が机をばんばん叩きながら言った。
「そうだよ! そう簡単にできるわけないでしょ!」
深春も無理無理! と言いながら首をぶんぶん振っている。
「え〜と……あの〜………」
響太はおずおずと手をあげる。
「昨日ユキナと話し合ったんだけど、信仰心を集めるのにはさ。やっぱり結神社の知名度をあげるのが1番だと思うんだ。
それなら、1番良い方法がテレビによる宣伝かな〜って………」
「いや、けどね! 番組が出来るのにどれだけ時間と苦労がいるか知ってる!?」
都が声をはりあげる。
「最低でも2ヶ月! 下手しなくても1年以上かかるのよ! 放送局や会社、自己主張の強いADやディレクターとの会議や出演者さんたちとの打ち合わせを山のようにやって、それからようやく撮影までこぎつけられるんだから!」
「それに放送枠の件もあるわ」
深春が都の言葉を引き継ぐ。
「運良く撮影までこぎつけられてもうまいこと空き時間が見つからないと、放送されるのが半年以上先送りに、なんてこともあるの。深夜帯とかならそういうことも少ないけど、それだと視聴率がガタ落ちするしね」
「せやけど………」
ユキナが相変わらず呑気に首をかきながら言った。
「どうにかして結神社への知名度が上げんことには、どうしようもありまへんえ」
「それにCMとかできるほど、お金もないらしいしね」
「「うっ………」」
響太が苦笑しながら言った言葉に、都たちが声を詰まらせる。
「ブログとかどうかしら?」
深春が名案だ、という風に手を叩いた。
「私ブログ持ってるから、『結神社に行ってきました!』みたいな感じのことを書けば、多少は知名度あがると思うけど………」
「ちょっとやそこら上がっても、意味ないんどす」
ユキナは都たちを見据えながら、真面目に言った。
「ウチの神社にある霊は、ほぼ日本中の悪霊どすえ。せやから、日本中からの信仰心でないと、焼け石に水。ほとんど効果ないんどす」
「「うぐっ………」」
さらに言葉をつまらせる2人。
「「「「………………………」」」」
しばらく、三者三様(+猫1匹)の沈黙が降りる。
「………はぁ。わかったわ」
都がこの世の終わりのようなため息をつきながら言った。
「………とりあえず、提案だけはしてみる」
「おっす! 響太!」
「お、健。おはよ」
いつもの街角に行くと、健が手を振って待っていた。
………が、数瞬後に、なぜか落ち込みだした。
「……………どうした?」
「………いや、なんか男相手に手を振ったら、ひどく虚しくなった」
なんでだ………と呟きながらずーん、と道路に手をつく健。
(………落ち込みたいのはこっちもなんだけど)
都と深春、そしてユキナは番組ができるか相談してみる、といって久しぶりにテレビ局まで行くらしい。
当然、学校は休むそうだ。
(番組を作るなんて………できるのかどうかわからないし、それに)
登校中の学生など、そこそこ人通りの多い街を見ながら、響太はため息をついた。
(………何か寂しい)
今までが騒がしすぎただけで、状況としてはいつも通りに戻っただけなのだが。
健と一緒に登校し、教室までつく。
教室は「おはよー」と挨拶を交わす生徒たちで、いつも通り騒がしく、活気があった。
……だが。
「「………はぁ〜」」
………………………………
「「………ん?」」
響太は、この場にいない3人のことを考えて、ため息をついたとき、同時に隣からため息が聞こえた。
振り返ってみると、そこにはまるで元気がなさそうな紀子がいた。
「………どうした? 元気なさそうだけど」
「………いや、あんたもでしょ」
「「……………」」
……会話が続かない。
いつもなら気軽に会話していた2人だが、今は2人とも気が重いせいか、まるで会話にならなかった。
ゆえに、ただ見つめ合うだけの沈黙が続く。
「「……………」」
なんか恥ずかしくなったので、2人は目線をそらした。
キーンコーンカーンコーン
「「…………あ」」
始業のチャイムが鳴った。
おー、ようやく最終アクションに………