表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
霊の心  作者: タナカ
59/104

第58話 猫吉がしゃべった!


 響太は玄関から一歩も動けなかった。 


「………猫吉?」


 響太は信じられない、といった面持ちでごろごろ喉を鳴らしている猫吉を見た。


「何驚いてはるんですか?」


 なーお、とでも鳴きそうな口から、少々高い少女の声が聞こえてくるのだ。


(普通驚くって!) 


「……というか誰が猫吉どすか」 

「え………だってお前は」

「……ウチはこの()の身体を借りとるだけどす、響太はん」


(………身体を借りてる?)


 響太が表情に疑問をにじませていると、猫吉(?)は「にゃ〜……」と器用にため息をついた。


「夢でお会いしたどすえ?」

「え………」


 猫吉は、置物みたいに行儀良く座ると、ぺこりと頭を下げた。


「お久しぶりどす。ウチは初代結びの巫女でおます」

「はいっ!?」


 響太は素っ頓狂な声をあげた。













「お〜! え〜匂いどすなあ」

「………」


 嬉しそうに鼻をひくひくさせる猫吉の姿をした初代結びの巫女を無視して、響太はキッチンでひたすら包丁を動かした。

 あざやかな包丁さばきで、どんどんジャガイモの皮をむいていく。

 これは、響太流の落ち着き方の1つだった。

 こうしていつも通りのことをすることで、心を落ち着かせるのだ。


「………とにかく………………え〜と」

「結びの巫女どすえ」

「………ごめん、それじゃ呼びにくいから………………」


 響太は玉ねぎを手に取りながら、う〜んと考えた。


(むすび)……は結さんがいるからなぁ。…………猫吉の姿をした結さん………よし」


 猫がらのエプロンを(ひるがえ)しながら、にゃう? と鳴いている白猫に言った。


「君をこれから『ユキチ』と呼ぼう」

「それはまた………男の子の名前みたいやなぁ」


 猫吉といいユキチといい、響太のネームセンスに疑問を覚える。


「それしか思いつかなかったから」

「……せめて、もう少し女らしい名前が欲しいどすえ」

「んー………なら、ユキナで」


 最後の1字を変えただけ、というか『チ』の字の一辺を取り払っただけだった。


「………ま、ええどす。仮の名前に目くじらたてるのもしょーもないえ」


 そう言うと、再び毛繕いに戻った。


「それでさ、ユキナ」


 とんとん、とにんじんを切りながら言った。


「猫吉の身体を借りてるってどういうこと?」

「言葉通りの意味どすえ。

 ウチはこの猫吉さんの意志に介入しとるんや」


(………ここでどーやって、とか聞くとややこしい話になるんだろうなぁ)


 そう思いながら、響太はボールにみりんなど調味料を入れ始める。

 とりあえずもろもろの方法は全て無視することにした。


「どうして?」  

「そらもちろん、響太はんにいろいろ伝え忘れたことがあったのを思い出したんえ、それを伝えよ思てこういう方法をとったんどす」

「伝え忘れたこと?」 


 響太は鍋に肉や野菜を入れる。

 じゅわー、という音がキッチンに響いた。


「響太はんとお会いしたあと、ウチどうやって信仰心を集めるんか、ゆうてへんかったやろ?」 

「そりゃ………まぁ」

「あんな……」


 そう言った直後だった。


「ただいま〜!」

「「……!!」」


 深春の声が玄関からしたのだった。













「あら、いい匂い。肉ジャガ?」


 嬉しそうに笑いながら、深春がキッチンにやってきた。 

 服は、今日は少し寒かったせいか制服の上にウインドブレーカーを着ていた。


「う、うん。おかえり」


 響太はちらりとユキナを見、どもりながら深春に言う。


「ただいま。響太くんもおかえり」


 深春は嬉しそうにそう言うと、ユキナの方を見た。

 うっ、と冷や汗を出す響太。


「あら、いらっしゃい猫吉クン。元気してるかな?」


 深春は笑いながらユキナを抱き上げる。


「響太はん、この子は誰どすか?」

「うあああああああ!」


 いきなりユキナがしゃべりだしたので、慌てて大声を出す響太。


「ど、どうしたの響太くん?」


 深春が驚いた顔で響太を見た。


(………あれ?)


 響太はそんな深春の様子に、首をかしげた。

 深春の驚きは、しゃべったユキナに向けられておらず、いきなり大声をだした響太にだけ向けられていた。


「い、いや……」

「………?」

(……もしかして、ユキナの声が聞こえてない?)


 ちらちらとユキチを見るが、深春は響太の様子に首をかしげるだけだった。 


「……ま、いいや。私着替えてくるね」


 そう言いながら、深春は2階の部屋にあがっていった。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ