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霊の心  作者: タナカ
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第55話 寂しさ




「………はぁ」


 翌朝の学校。

 早朝の教室で、深春はため息をついていた。


「おはよ〜!」

「おはよ」


 早くも仲良くなったクラスメイトとたち適当に挨拶を交わしながら、深春はうまく笑えてない自分に気づいていた。


(………嫌だなぁ。気が滅入るよ)


 自分の机で頬杖をついたまま、隣の響太の席をぼーっと見つめた。


 ガラッ


「おはよー、紀子」

「おはよー」

「………!」


 教室のドアが開き、紀子が入ってきたのを見て、深春はびくっと無意識に姿勢を正した。

 席が近くなので、紀子がこちらにやってくる。


「あっ、おはよ紀子」


 深春は努めて自然に紀子に笑いかけた。


「………」


 紀子はぷいっと顔を背けて、座ってしまった。

 背中からは怒りオーラが見て取れる。


(………うわー。機嫌直ってない)


 深春は絶望で、机に突っ伏した。


「………」


 だから、ちらっと紀子が深春の方を見ていたのに気づかなかった。


 キーンコーンカーンコーン


 朝のHR開始のチャイムが鳴った。


「………みなさんおはようございます」


 チャイムと同時に、若干元気なさげな都が挨拶をしながら入ってきた。

 『愛不足』なのだろう、たぶん。


「今日は……山田くん以外はみなさん来てますね」


 出席簿に記をつけながら言った。


「せんせー、響太は休みですか?」


 響太から今朝、『遅れるから先に行っといて』というメールをもらっただけの健が、結構心配そうに聞いた。


「少し遅れますが、ちゃんと来るそうですよ」


 と都は空を見ながら言った。

 つとめて平静を保つようにしていたが、表情はいつも以上に固かった。










 同時刻、快晴の京都で。

 響太は、1人じゃ危ないからという理由で結に山の麓まで送ってもらっていた。


「バスが来るまで少し時間があるみたいですね」


 下山した後、古びたバス停で結が時刻表を見ながら言った。


「わざわざすみませんでした」

「いえいえ。大したことじゃありませんから」


 そう言いながら、なんでもないという風にぱたぱたと手を振った。 


「おっ、結ちゃんおはよう」

「ゲンさん。おはようございます」


 近くに住んでいる老人が挨拶してきた。


「あ、おはよう結ちゃん。集会はまだよね?」


 たて続けに近所のおばさんが話しかけてきた。


「清水さん、おはようございます。今日はこの人を麓まで送り届けるのが目的なんです」

「へー………」


 近所の老人とおばさんにじろじろ見られる響太。


(………いっ、いづらい) 


 響太はそう思いながら、あはは、と引きつった笑いを浮かべた。


「彼氏かい?」

「なっ!」


 おばさんのその言葉に、響太は心臓が飛び出そうなほど驚いた。


「なにぃっ! 結ちゃんに彼氏だとぅ!」  


 老人がくわっと目を見開きながら、大声をあげた。

 その声に反応して、「なんだなんだ?」「結ちゃんに彼氏?」「なんだって――!」という声と一緒に、付近の人が集まってきた。


(えっ、えっ、ちょ何!?)


 響太が戸惑っている間に、怒り心頭の老人がつかつかと歩み寄ってきた。


「こ、この泥棒猫めぇ!」

「違いますって!」


 老人とは思えないほどの勢いでつかみかかってきたので、慌てて弁解する響太。


「違うだと!? 証拠はあんのかこの若造めが!」

「結さんとは昨日あったばかりなんですって――!」

「んなこと言いながらかっさらうつもりだろこのコソ泥め!」


 老人の興奮した声と、響太の悲痛な叫びがあがった。


「響太さんは結神社のお客さんですよ」


 結が苦笑しながらそう言った。


「む、そうかい」


 老人は結の言葉はあっさり信じた。


(………理不尽だ)


 響太はがっくりと肩を落とした。













「………慕われているんですね」

「……みなさん、いい人ばかりですから」


 ようやく村人たちがいなくなって静かになったバス停で、響太と結はベンチに座りながら他愛ないことを話した。


 ぶるるるる


「あ……」


 そうこうしていると、バスがやってきた。


「お別れですね」 


 結と響太はベンチから立ち上がった。


「楽しかったです。またいつでも遊びに来てくださいね」

「もちろん」


 笑いあいながら、別れを告げた。









 


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