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霊の心  作者: タナカ
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第35話 朝の夢




 昨晩色々なことがありすぎて疲れていたので、深春(兼猫吉)の部屋を決めたりしてドタバタした後、みんなすぐに寝てしまった。


「ふぁ〜」


 朝六時半、響太は目をしょぼしょぼさせながら階段を降りる。


「……ん?」


 リビングの明かりがついていた。

 昨日消し忘れたか、と響太は首をかしげた。

 そしてキッチンに行くと。

 そこには夢のような光景が広がっていた。


「あっ、おはよう響太くん。悪いけど台所使わせてもらってるわよ」


 猫柄のエプロンをつけた深春が、鍋に火をかけているところだった。


 ………ほろり


「ちょ、ちょっと……なに泣いてるの?」

「………ちょっと、感涙にむせんでたんだ」


(まさか………まさか………誰かに朝食を作ってもらえる日が来るなんて………)


 どんだけ不憫やねん、とつっこみたい。

 しばらくじーん、と感動の余韻にひたっていた響太だが。


「手伝うよ」


 主夫根性がしみついているのか、すぐにエプロンをつけて深春の横に立った。


「うん! ありがと! えっと、ごはんは炊けてて………」


 お味噌汁はお出汁(だし)とってるところで、あとお弁当用に鮭のムニエルでも………と2人で相談しながらちゃくちゃくと朝の準備が整っていく。

 響太は料理をしながら、新婚生活初日のように何となくあま〜い気分を味わっていた。


(ああ………神様。ありがとうございます。今日という日を………俺は一生忘れません)


 顔をにやけさせながら朝食を作ったり、洗濯など朝の家事をする。

 終わったときはまだ七時前だった。

 朝の準備がこんなに早く終わったのは、初めてかも知れない。


「コーヒーと紅茶、どっちがいい?」


 深春が冷蔵庫からコーヒーの粉や紅茶のティーバックを出しながら言った。 


「紅茶でよろしく」


 そう言った後、響太は学校の仕度を整えるために2階の自分の部屋に行った。


(ああ、いいなあ………)


 ひたすら顔をゆるませながら部屋のドアに手をかけたときに。


 ぼがああああああああん!!!


「きゃあああああああああああ!!!」

「ぎにゃああああああああああ!!!」

「なっ!!!」


 いきなりものすごい音がした。


(なんだなんだ! 二階で爆弾テロでもあったのか!?)


「ちょっとちょっとなによ! 鼓膜破れるかと思った!!」

「ぎゃあ!!」


 都が叫び猫吉が威嚇の鳴き声を出している。

 そんな殺伐とした雰囲気の中、階下から。


「あ、ごめんごめん。よく起きれる大音量目覚ましを作ろうとしたんだけど……。ちょっと音が大き過ぎちゃった」


 てへっ、と笑っているのが目に見えるような、深春の声がした。

 響太は急いで1階のリビングに行く。


「ちょ、なにあれ!?」


 響太が焦りながら言うと、深春は、んー、と呑気にあごに手をあてた。


「趣味」

「………さいですか」


(なんて近所迷惑な趣味だ)


 響太はこの後、近所の人にどう説明しようかと頭を痛めた。












「寝起き最悪………」

「……………」


 都と猫吉が不機嫌な顔つきで食卓についた。


「………あははは………。ちょっと失敗しちゃったか」


 深春は罰が悪そうに笑った。


(………ちょっとのレベルなのかあれは)


 響太は初めて深春に恐怖した。


「………む。この卵やこはおいふぃわ」


 不機嫌な都も、できたての朝食を口に入れたらすぐに治った。


「卵焼き、だろ。そりゃ作りたてだからね。それと口に食べ物入れたまましゃべらない」


(なんだ卵やこって)


「みゅ〜」


 猫吉もおいしそうにミルクをなめている。 


「そういえば珍しいね。母さんがゆっくり朝飯を食べてるのって」


 響太が覚えている限り初めてだった。

 いつも忙しくそのくせ朝の弱い都がこうしてゆっくり朝食を食べているのは。


「………そういえばそうね」


 んー、と都はばつが悪そうに頬をかいた。


「朝食は一日の元気の源だからね。早起きして正解でしょ?」


 深春が笑いながら言った。


「……………あの起こし方が無ければね」

「にゅ〜」

「ごちそうさま」

「私も」


 都と深春が食べ終える。猫吉も満足そうに喉を鳴らしていた。


(初めてかもしれないな………我が家でこんな大勢で食事するのは)


 いつもどこか広く感じた家が、今日はなんだか暖かく思えた。 


(…………こういうのも、悪くないかもしれないな)


 響太は胸がはずんでくるのを押さえきれなかった。











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