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霊の心  作者: タナカ
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第28話 鳴美の死刑方法



「香先生の化学、初めてだったけど面白かったねー」


 4時限目の化学が終わり、化学室から教室へ戻る途中の廊下。

 紀子と響太、そして健が楽しそうに(?)話していた。


「お前は友達と話してただけだったからな」


 響太はため息をついた。


「ああ。実験参加組は大変だった」


 健も同じくため息だ。

 橘香たちばなかおるという、いまどき珍しいビン底メガネを愛用している化学教師がいる。

 彼女は研究者としては優秀だが先生としてはやる気がまるでない先生、ということで有名だった。

 その先生の授業だったのだが、彼女は何の話もせずに、プリントを配って「この紙に書いてある通りにやれ」と言って、あとは寝てしまうと言う暴挙に出た。

 仕方ないのでプリントに目を配ってみると、やけに難しい内容で、鳴美が先生をグーで叩きながら文句を言うと「これぐらい普通だ」とだけ言ってまた寝てしまい、今度は何をやっても起きなかった。

 正直そのまま授業やらずにさぼりたかったが、先生を見限った意外と真面目な鳴美が、かわりに実験の監督をし始め、それもできなくなってしまった。


「けど、傍から見てたら鳴美と香先生、ショートコント見てるみたいで楽しかったよ」

「だからお前はな。俺らに責任押しつけやがって」


 くいっ、くいっ。


「だいたいお前は報道関係以外はいい加減すぎる。もう少し他人への思いやりを持っても、罰は当たらんと思うぞ」

「おーい」

「ええー、あたしに優しさがないって言うの。私の半分は優しさでできているのに」

「ちょっと」

「むやみにネタを盗むな。版権に引っかかっちゃうかも知れないだろ」

「そんなのなるわけないでしょ」


「こっち向け!」

「「わっ!?」」


 2人が驚いて振りかえると、そこにはちっこい鳴美がいらいらしながらふんぞり返っていた。


「びっくりした。いきなり出てくるんだもん」

「いや、さっきからいたって」


 健がものすごく呆れた視線を向けてきた。


「本当に気づいてなかったのか、お前ら」

「ああ」

「さっぱり」


「ええい! とにかく山田!」


 鳴美はびしいっ! と響太を指差した。


「約束忘れてないでしょうね!?」

「約束って………ああ、今朝のか」


 少し頭をひねってから、響太は嫌そうに肩を落とした。


「そうよ! これからデートって約束だったじゃなぶっ!」

「「変な声音を使うなバカ!」」


 横から裏声を使ってチャチャ入れてきた健に、響太と鳴美の拳が入る。


「とにかく! 罰としてちょっとつきあってもらうわよ!」

「………へーい」


 響太はしぶしぶ従った。









 結果。


「………あいつ。遠慮なくこきつかいやがって」


 昼休みの裏庭。

 弁当を食べる暇もなく、響太は鳴美に生き物委員会の仕事を押し付けられていた。

 餌をあげたり運んだり、熊に餌をあげるときは自分が餌になりそうで本気でびびった。


(………なんであんな動物が学園にいるんだ)


 しかもケージに入れているわけではなく放し飼いである。どっかに行ったらどうするつもりだ。鳴美いわく「みんな賢いから大丈夫よ」ということらしいが。


「にゃ〜」

「お、猫吉」


 へばっていると、猫吉が寄ってきた。


「にゅ〜」


 大丈夫?

 猫吉はまるでそう言っているみたいに鳴きながら、ぺろりと響太の頬をなめた。


「………サンキュ」

「みゅ」


 猫吉の頭をなでた。 








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