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霊の心  作者: タナカ
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第23話 男たちの戦い(前編)

「今日は! 身! 体! 測! 定!」

「またの名を!?」

『エロ測定!』


「………すげーテンションだな」


 早朝の教室で、(たける)たち男子生徒たちが興奮の叫びをあげていた。

 覗きをする気満々らしい。


「あっはっは! 相変わらず無駄に元気だね健たちは!」

「………お前は自分も覗かれ対象だという自覚が無いのか?」 

「ま、どうせ失敗するでしょうしね」

「そうだな」


 結城が口を出した。


「保健室には竹中先生がいるからな」

「輝美ちゃん、勘だけは凄いからねー」

「去年も覗き穴からカメラの場所まで一つ残らず見つけ出したからな」

「あの時没収したカメラは今でも報道部で元気に活動しているよ!」


「てめぇらうるせえええ!」


 結城たちを意図的に無視していた健がとうとう、シャラーップって感じでこっちを振り向いた。


「男の夢を理解できないヤツは去れ!」

「いや……あたし女だし」

「覗きは犯罪だ」

「えええええい! 夢も希望も無いヤツらめ! 見てろ!」


 そうほえると健は天高く拳を掲げた。


「今年は絶対だ! 失敗はありえん! 俺たちは桃源郷を拝んでやるわああ!」


(……1時間後には負け犬決定だな。この発言)


(………それはそうと)


「なぁ紀子」

「ん? なぁに?」


 響太は今日来てるはずの神谷深春がどこにいるか、さりげなく紀子に聞こうとした。


「あー、あのな」

「もしかして、あたしの3サイズが知りたい?」

「誰がんなこと聞くかあああああ!」


 ちなみに、紀子は同年代の女子と比べればスタイルが良い方だったりする。


「ふむふむ。聞きはしないが知りたくはある、と。しょうがないなー。後でこっそりあたしの診断結果を見・せ・て・あ・げ「いらん!」」


 響太は即座に断った。

 だが顔が少し赤くなっていた。


「………というか、3サイズなど知ってどうするのだ?」


 結城が心底不思議そうな顔をして聞いた。


「数字が分かったところでそれに何の意味があるんだ?」

「あー………別に意味なんかねーよ」


 響太はぽりぽりと頬をかきながら答える。


「うそっぱちー! 知りたくてたまんないくせにー!」

「なわけあるか! 特にお前のなんか知りたくもないわ!」

「………そもそも、なぜ口論の対象になっているのかさっぱり分からん」

「それはねー、結城。ある程度成熟した男の子にはね。数値だけで相手の裸を映像化できるたくましい妄想力が」

「いい加減にしろ2人ともおおおお!」


 てな感じで、響太は紀子から肝心の神谷深春の情報を得ることができなかった。









 



 午前10時30分過ぎ。体育館。

 女子は保健室、男子は体育館という配置で、今2年生の身体測定が行われていた。

 周囲は体操服姿の男子生徒ばかり。正直つまらないことこの上無い。

 そしてそのころ、絶対覗きを成功させてやると豪語していた健は………


「……どうするか」


 今まで見たことないほど真剣な顔で考え込みながら、体重測定の順番待ちをしていた。


「覗き穴もカメラも一応用意したが……ダメだろうな。照美ちゃんは俺たちの百倍はカンがいい。あの保健室に死角は無いといっていいだろう」


 健はこの瞬間、今までの人生の中で間違いなく一番速く脳を回転させていた。覗き穴、小型カメラ、望遠鏡、内視鏡、テレスコープに顕微鏡と……全力で関係無さそうなものも含めて全てのケースを考えている。


(思考が確実にダメな方向にしかいってないな……)


 と響太はいつに無く真剣な健を呆れた目でみた。


 ……そんな時だった。


「………そんなに見たいか?」

「………え?」


 健は声のした方向を向いた。そこには発信源の結城が本から顔を上げて健を見ていた。


「……見たいのか?」


 結城は再度問いかける。目が意外とマジだ。


「も、もちろんだ!!」


 健は勢い込んで即答した。


「そうか……ならば」


 そう言うと、結城は懐からある物を取り出した。


「こ、これは―――――――――!」


 その瞬間。

 男どもが歓声をあげた。














 保健室。


「………ぶるっ」


 紀子が急に寒気を覚えていた。


「どうしたの、紀子」 

「いや……なんか急に寒気が………ってあれ? 今年は深春も受けるんだ?」

「うん。言ってなかったっけ? そうだよ。まあ仕事を終わらせるのは苦労したけど」


 そう言って笑いながら服を脱ぎ始める。


「うわはあああ……お姉さまの裸すごい――――――! すごい――――! もうすごすぎるわ――――――!」


 鳴美、絶賛壊れ中。


「おおっ確かに! これはなんとまあ良いものですな、深春クン!」

「ちょ……ちょっと、紀子。揉まないでよ……」

「よいではないか、よいではないか。減るもんでもなし」

「ああー! 紀子ズルーい! 私もお姉さまのおっぱい触る―――!」

「ま、待って………ん」


 そんな感じで男たちにとってはまさに桃源郷なやり取りが保健室では起こっていた。


「ああ……すばらしいわ、神谷さん」

「ええ……抜群に均整の取れた美しいプロポーション、まさに美の女神……」


 と、一部の女子生徒が夢見心地になっていたり


「むぅ………」


 一部の女子が微妙にむくれて自分の胸を触ったりしていたが……まぁそれも皆、男たちにとってはうらやむべき話。

 桃源郷ってあるんだと。この場を男が見ればほぼ間違いなくそう思うだろう。


 ………だからこそ覗きに全てをかける男たちがいるのだ。









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