第99話 無理はしないこと
自分の部屋のベッドから起きあがり、響太は椅子に座った。
手には紀子から渡されたプリントの束の1番上にあった、花柄のメッセージカードを持っている。
ざっとカードを裏表させてみるが、表面以外には何も書いてなかった。
(……さて)
とりあえずメッセージを読む。
『うぃ〜っす、響太。
この資料はざっとだけど報道部で調べた、学園及びこの町の幽霊関連のお話を集めた物です』
「幽霊って!! これを読めというのか!!」
カードを見ながら、思わず叫ぶ響太。
(俺の幽霊嫌いを知っての所業か―――!!)
ぷるぷると紀子への怒りに震える響太だったが………
『千秋ちゃん、そして他の幽霊たち対策の参考に役に立てば、と考えて集めました』
「………………」
思わず黙ってしまう響太。
(………紀子なりに俺のことを考えてくれたってわけか)
『私にできることってこれぐらいしか思い浮かばなかったんだけど……………これで少しでも響太の問題がいい方向に改善することを願ってます」
紀子にしては珍しく真剣さが伝わってくるような神妙な口調で、そう書いてあった。
(………無碍にはできないよなぁ)
はぁ……とため息をつきながら、響太は資料を開いた。
パラ………パラ…………
あるある。タイトルだけでも、学園七不思議、公園の桜の幽霊、湖の人柱、などなど。
全然知らなかったが、調べれば自分の町にも結構こういった話しがあるんだなと結構驚いた。
「さて………どうするか」
ぱらぱらとめくっていると、ある項目がぴたっと眼を惹いた。
「公園の桜の……幽霊」
(そういえば千秋の霊と初めてあったのも桜の下だったよな………)
悶々とそんなことを考えていると………
コンコン………
ドアがノックされた。
「はい?」
「ちょっといいかしら…?」
深春の声だった。
「どうぞー」
特に見られて困るような物もないので、響太は椅子から身を乗り出しながらそう言った。
「おじゃましま〜す………ん?」
深春は響太の机の上にある分厚い紙束に目を止めた。
「……何、あれ?」
「実は……」
紀子にもらったんだとかそんなことを説明する。
するとやがて、紀子は嬉しそうに笑った。
「紀子………ああ見えて優しいからねぇ」
資料を片手にぱらぱらっと中身を見ると、ユキナはそれを響太の机の上に置く。
「…………えと」
何の用なのか?
それを聞き出す前に、深春は響太に言った。
「………無理はしないでね」
「へ………?」
(何を………?)
「あの子を助けられなかったことを謝りたい、それは本当にそうだけど。だけど響太が無理して、前みたいに昏睡状態になったら全然意味ないんだからね」
「………………」
うっと、響太は言葉につまった。
(い、いや。なるたけ気をつけるけどさ。けどまぁ、どうしようもないとこも多々ありまして……)
「………いいわね」
「……はい」
響太は頷くしかなかった。
……すみません。今日眠くって量少なめになりました。