一変
「怖いもの見たさなのかなぁ…。」
テープに触れた独特の感覚を思い出しつつ
カゴにビデオデッキを積んだ自転車をこぎながら久しぶりの高揚を感じていた。
家に帰る頃にはすっかり日は傾き始めていた。
いつもの安物のカップ麺と発泡酒が入ったレジ袋をちゃぶ台の上に置くと早速ビデオデッキを繋げる。
「意外とやり方覚えてないんだよなぁ…。」
小さなテレビにデッキを繋げ終わる頃には外はすっかり暗くなっていた。
ヤカンにお湯を沸かし、発泡酒の蓋を開ける。
プシュッ!という音がまた気持ちよく、楽しくなっていた。
「どれどれ…どんな映画なんだぁ〜」
再生ボタンを押し準備は万端だ。
テープのダビング音が6畳半の部屋に響く。
そこには真っ暗な液晶、
映し出されたのはそれに反射する自分の顔だった。
「おいおい……まじかよ」
思わず情けない声を出しながらずずずと
ソファに沈み込んだ。
「時間返して欲しいよなぁ…ははっ。」
先程の興奮が打って変わって冷めてしまった。
「なんで俺はこんなに熱くなってたんだろう。」
ラーメンでも食おうとソファから立ち上がろうとした時
テレビの映像が変わる。
そこに映し出されたのはレモン色の空、白い雲、
紫色の草原だった。
なんだろう見たことがあるようなないようなそんな景色。
古い映画にしては凝っていて異様に現実的に感じた。
「…クダ…ィ」
「ん?何か聞こえる。」
テレビに近づく。
「オ…ダ…サマ…」
女の人の声? さらにテレビに近づく。
「おいでください聖獣士様。」
耳の奥にその声が聞こえた刹那、
俺は驚愕した。
先ほど見ていた映像の世界に俺は居たのだ。