廃墟の守護石
それからひと月ほどが立って。僕はもうすっかり歩けるようになっていた。
「こっち。こっちダー!」
ルーが見せたいものがあると言って僕を連れ出す。
彼女は相変わらずとんでもないスピードで言葉を覚えていった。
「ちょ、ちょっとルー。そんなに早く走れないってば」
枝に手をかけ、足を木にかけて。恐ろしいジャンプ力で木から木へと飛び移るルー。
ルーはどうやら手足の爪を、ある程度自由に出し入れできるみたいだった。
当然、僕がそんなスピードについていける訳がなくて、すぐに置いていかれるんだけど。その度にルーが戻ってきてくれる。
どうやら僕がどこにいるのか匂いですぐにわかるらしい。
森の中を進むのは大変だったけど、距離自体はそう離れてはなかった。
そうして辿りついたのは……数件の木造家屋が立ち並ぶ村らしきものの廃墟。
ただ、床と地面が離れてたりして、クセルの周辺では見た事のない建築様式だったのがちょっと気になる。
「これは……」
「ルー。前ナー。ここに住んでたんダー。でもナー。上とか崩れてきテ穴に行ったんダー。川に近いからナ」
よく見ると建物ごとに植物の蔓延り方とかが違ってて、朽ち方に差がある。段々と廃墟になっていったんだろうか。
「アルフはいっぱい知ってるからナー。なにかわかるカ?」
「そうだね。これは村の跡だ。ルーは、きっとここで……あれはっ!?」
見知らぬ文化圏に囲まれて周囲を見渡す最中、見覚えのある形の人工物が目に入る。
「これは……勇者の守護石!」
「なんダっ? いいもん見つかったカ?」
僕が守護石に駆け寄ると、ルーがぴょんぴょんと跳ねる。
「ルーはこの石がなんなのか知らないの?」
「ンー?」
ルーは守護石の事を知らなかった……
と、言う事はもしかするとルーはレベル1のままなのかもしれない。
僕はスンスンと守護石の匂いを嗅ぐルーに、ある提案を持ちかけた。