獣耳の少女
クチュクチュ……
柔らかい……
クチュクチュ……
柔らかい…………でも、なにが?……
クチュクチュ……
口の中に何かある。これも柔らかい。僕はそれを飲み込む。
クチュクチュ……チュッ
唇の柔らかい感触が離れる。僕はそれを追いかけるように目を開いた。
「ぅ…………ぁ………………ハッ!? あっ! イテテテテテ!!」
目を覚ますと全身に激痛が走った。
体中の骨がバラバラになったみたいだ。
「ガウゥ?」
落ち着いて視線を凝らすと、目の前にトラの毛皮を着た女の子がいる。
栗色の髪を長く伸ばした、10代にも満たないくらいの女の子。
それが小首をかしげて、まん丸な瞳で興味津々に僕を覗き込んでいる。
目を引くのが頭の上の猫……いや、虎か? 黄色くて先っちょが黒い獣みたいな耳がついてる。
「ぁ……き、きみ……は……」
「アゥッ♪」
女の子は突然、僕の顔をペロペロと舐め始める。
正直、少しだけビックリしちゃったけど。敵意がないのはすぐにわかった。
「ぷっ……あはっ。くすぐったいよぉ」
「ガウガウガウー♪」
僕が笑うと女の子も嬉しそうな顔をして、部屋の中を走り回った……4つ足で。
やがて、部屋から出ていくと。頬っぺたをパンパンに膨らませてかえってきた。
「あ、おかえり……っ!?」
今度はもう少しビックリ。唇を塞がれて何かを流し込まれる。
(あ、これ……水……なのか……)
柔らかい……まるで胎児に戻ったような不思議な感覚に包まれて、僕は水を貪る。
まるで夢の中みたいだな……と、熱にうなされたみたいに、痛みの感覚が薄れていって……
僕は……再び……意識を……失っ……た……