ルーと衛兵達
一方その頃。ルーは衛兵達と対ドラゴン用の新兵器の開発実験に立ち会っていた。
「いきますよー」
「準備オーケーなのダー」
バリスタを改造した特殊な発射台に自身の体をセットする。
「発射!」
「オー?」
バビョーン
ドサ
カラカラと回転する計測器からヒモを伸ばしながら、係の衛兵が着地点へと向かう。
「何メートルなのダ?」
「371メートルです」
「うーヌ」
射出速度は悪くない。届くか届かないかで言えば十分届くだろう。しかし……
「……何基作れル?」
「え?」
だがしかし、いかんせん動きが直線的過ぎる。
あのドラゴンは警戒している。次はいくら気配を消したところで気付かれずに接近する事は不可能だ。
どうせ匂いを嗅ぎつけられるなら……体中に強烈な香料を塗り、それと同じ匂いのデコイを同時発射した方が良い。
「あ、いえ、あの……上の者に確認してきます!」
「あ、待つのダ」
踵を返して駆け出そうとする衛兵を呼び止める。
言ってて気付いてしまう。どうせ通用しないな、と。
あのドラゴンはバカではない。
どうも人間は服を着ない者。自分と違う言葉を話す者。自分と姿の異なる者を全てバカだと思い込む。
だがそんな考え、なんの基準にもなりはしない。相手が何千年生きているのかも知らないと言うのに。
「ごめんなさイ。言ってみただけなのダ。気にしないで欲しいのダ」
「は、はぁ……」
所定の位置に戻っていく衛兵の背中を見送って。ルーは西の空へと目を向ける。
スンスンと空中の匂いを嗅ぐが、風は何も伝えてはくれない。
「まタ……たくさン殺されるナー…………」
この空のどこかにヤツはいる。黒き翼を思い起こして、ルーはそっと遠くを睨みつけた……
ちょっと助走的な閑話。
明日から第五章「世界の影」編がスタートです。
またよろしくお願いします!




