歓迎
決闘から6日後。僕たちはグリーンヒルへと戻った。
「隊長だー! 隊長たちが戻ってきたぞー!!」
「おかえりなさい! みんな待ってたのよ!」
門を潜った途端。待ち構えていたかのように大勢の人達がワッと歓声を上げる。
「隊長。おつかれさまです!」
「おう。首長のハゲ散らかり具合はどうなってる?」
「フフ。それはご自分でお確かめになった方がよろしいかと」
見るからに重傷なシモンさんを見ても、衛兵さんはまるで顔色を変えない。本当に日常茶飯事なのか……
「キャー! ルーちゃーん!」
「こっち向いてー!」
「いよっ! ドラゴンバスター!」
特に歓声が強いのがルーだ。みんなが乗り出して手を伸ばしてくるので、係の衛兵さんに先導されてどこぞの王族みたいに前に進む。
「ヤー、ヤー。ドーモドーモ。ドーモドーモ」
ルーが堂々とした顔で左右を振り向きながら、両手を掲げて掌で声援に応える。
この子は本当に遠慮とか物怖じとかそういうの全く無いなぁ……
「ほ、本当に有名人になっちゃったのね……」
フィーネが珍しく落ち着かない様子で回りをキョロキョロしながら話しかけてくる。
「アハハ。僕じゃなくてルーがだけどね」
「……それだけには見えないんだけど……」
「え?」
不思議に思って振り返ると、本当に僕にも声がかけられた。
「おかえり。市民」
「お前がグリーンヒルの味方で良かったよ」
「ドラゴンの角の件を片づけたそうだな。大したもんだ」
衛兵さん達が笑顔で声をかけてくれる。っと、その中に見覚えのある顔を発見する。
「あ、あなたは!」
「よぉ! その節は世話になったな」
ドラゴンの時に手当した衛兵さんだ。よく見ると顔に火傷の跡がある。良かった。復帰出来たんだ……
僕が会釈するとそれはもう満面の笑みを返してくれた。思わず胸がジーンとなる。
「……あのアルフが……」
「ん? どうしたの?」
気が付いたらフィーネがじっと僕の顔を見つめていた。
「べ、別に……」
どうしたのか尋ねると彼女は視線をそらしてしまった。
「船の上で聞いたこと。信じられないけど本当の話なのね……」
小さい声で何か呟いたけど聞き取れなかった。彼女のこんな様子は珍しい。
なんかワキワキと手を握ったり開いたりしてるし挙動不審だ。
まぁいくらフィーネでも仕方ないのかな? 僕だったら逆の立場でこんな歓声の中に連れてこられたら絶対ビックリするし……
「大丈夫。行こっ」
緊張をほぐしてあげるために手を差し出すと
「えっ!?」
「え?」
フィーネがびっくりして目を丸くするから思わず聞き返してしまう。
「あ、ごめん。な、なんでもない……」
おずおずと差し出してきた手を握ると、冷たくてしっとりしていた。
そう言えば手繋いであるくのどのくらいぶりだっけ。
昔はよく引きずり回され……いや、振り回されてたなぁ。比喩じゃなくて遠心力的な意味で。
そんなこんなで僕たちは宮殿に到着したんだけど……




