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第十七話 冒険者ギルド

 黒の雨を降らせた後、さらに高度を上げ、全体を俯瞰する。

 ゾンビ共が音に引き寄せられ、冒険者ギルド周辺へと動き出している。


「魔力を使い切ってでも、安全を確保するか……”傲慢なる雷”」


 何度も黒き雷を放ち、派手な音でゾンビ共を誘導する。

 念の為、冒険者ギルドの反対側へと集める。

 十数分かけて外壁の外へと誘い出した。

 ゾンビで黒く染まる大地。いったいどれ程の数なんだか。


「最後は派手にいく!」


 最大威力で”傲慢なる雷”を放つ。

 黒い雷が大地ごとゾンビ共を呑み込み、雷が駆け巡った跡だけが残った。



           ★



「派手にやったね、クロウ」


 冒険者ギルドの前で、ラテルに出迎えられる。

 すでに到着していたか。


 魔力を消費し過ぎた。少しフラつく。


「みんな無事か?」

「一人、パニックになってゾンビに向かって突撃しちゃった。ヒステリック気味の子だったみたいだから、遅いか早いかの差だったかもしれないけど。おかげで、他の人達の自制心が頑張れたようだよ」


 早速、犠牲者が出たのか。


「クロウ陛下」


 レイジアが数人の女性を引き連れて来た。


「”土魔法”を使って、ギルドの周りに囲いを作ろうと思うのですが、よろしいでしょうか?」

「ああ、頼む」


 知能持ちの存在を考えると、ロッティちゃんの”結界術”に頼れない状況で、あからさまにここに居ますという物を残したくないのだが、今や大所帯だ。逃げるよりも迎撃の備えをしておくべきか。

 

 一瞬、レイジアの横の女の子と目が合った。彼女の頬がほんのりと朱に染まる。

 大きなリボンで豊かな亜麻色の髪をポニーテールにしている女の子。


 前世を含め、今まで出会ったどの子よりも大きな胸とお尻を持っていた。

 顔立ちに、何気ない振る舞いは清純そのもの。彼女を口説きたくなる男は多いのではないだろうか。


「それでは、失礼いたします」

「僕も付き合うよ」


 作業するために外へと向かうレイジア達の護衛を、ラテルが買って出たようだ。


「ご主人様、ロッティちゃんが目を覚ましました」


 ラテルと入れ替わりでモモがやって来る。

 モモの案内で、ロッティちゃんが居る部屋へと向かう。

 部屋の前にはカサンドラが立っていた。


「クロウ殿、お疲れ様です……ロッティ殿をよろしくお願いします」


 カサンドラが深々と頭を下げる。


「……分かった。カサンドラ、モモ、リングボックス内の食糧を皆に配ってやれ。ラテルの美味しい料理が沢山あったはずだ」


 ラテルは唯一の“調理”スキル持ちであったため、リングボックス内の料理は俺かラテル製になっていた。


 左腕からリングボックスを外して、モモに渡す。


「……ふぅー」


 覚悟を決めて、ロッティちゃんが居る部屋の扉を開ける。


 部屋に入ると、天蓋付きのベッドが目に入った。部屋が、ほぼベッドで埋まっている!


 巨大なベッドの上で、体育座りをして俯いているロッティちゃんが頭を上げた。

 その顔は、生気が抜けたような無表情。


 ……重症だな。


 彼女の隣に腰掛ける。


「お姉さんのこと、まだ誰にも話していない。けど、このまま黙っているわけにもいかない」


 すまないと思うが、現状を考えると現実を突き付ける必要がある。ゾンビに関する情報は、出来る限り共有しておきたいのだ。特にローザに関しては。


 ロッティちゃんの肩が震え始める。


「酷い! ……どうして! ……そんな風に……」


 彼女の身内を貶める行為だからな。ロッティちゃんが怒るのは当然だろう。

 だが、ローザはただのゾンビじゃない。明確な意思を持った、危険な存在だ。


「……私には、私には! お姉ちゃんしか居なかったのに!! 復讐が出来るから、巫女として貴方と旅をしていたのに! 貴方みたいな女たらしと!」


 俺って、そんなに嫌われていたのか!?


「貴方がモモさん達と、毎日所構わずスるから! こっそり下着を取り替えたり、自分で慰めたりしなきゃいけなかったんじゃないですか!!」


 ……話しの方向性がおかしな事に。


「貴方たちのせいで、復讐の旅が淫欲の旅になっちゃいましたよ! ズッコンバッコンの意味が分かっちゃいましたよ!」


 ロッティちゃんの震えは止まっていた。


「……ずっと、待ってたんですから…………私とも、ズッコンバッコンして下さい」


 彼女の華奢な身体をベッドに押し倒す。

 彼女の顔は、羞恥で真っ赤になり、その瞳は涙で潤んでいた。


 精神的に追い詰められた事による、気の迷いなのかもしれない。

 行為が終わった後、ロッティは後悔するかもしれない。


 初めて会ったときから押し倒したいと感じてしまう程魅力的だったロッティ。

 彼女から求められて抗いきれる程、俺は大人じゃなかったようだ。


 たとえロッティが後悔したとしても、それ以上に幸せにしてやる!


 ロッティの身体に、指先を這わせていく。


「あ! ……ん!」


 少し触っただけで、ビクッと跳ねるロッティ。


「お前は、なんてエロくて可愛いんだ」


 彼女の耳元で囁く。


「うる……さ……い!」


 求めておいて強情な。


 ”探索者の高級ローブ”の下には、サキュバスの正装だという黒い下着しか着けていない。


 彼女のお腹を、手の平でさする。


「……んん!」


 手の甲を口に当てて、声を必死に我慢するロッティ。

 どれだけ俺の嗜虐心を刺激してくれるんだ!


「……キス……して……キス……しなさいよ!」


 生意気な!

 覆い被さり、容赦なく彼女の唇を味わう。


「あ……う……んん♡」


 唇と唇が僅かにズレた瞬間に漏れるロッティの嬌声に、背徳感が湧き上がり、心臓に負荷をかけてくるようだ。


 サキュバスに精を搾られて死ぬ。そんな話しを思いだした。

 腹上死だけは、嫌なんだがな。

 

「早く……入れてよ……クロウ様♡」


 Sになったり、Mになったり、男を転がす天性のエロ娘だな!

 彼女の下着を強引に脱がせ、自分の服も脱ぐ。


 小さくもなく、大きくもないロッティの胸が揺れる。


「容赦しないからな」

「魔王ごときが、ベッドでサキュバスに勝てるとお思いですか?」

 

 言葉はもう、無粋でしかなかった。



           ★



 とうとうロッティに、十五歳の子に手を出してしまった。

 こっちじゃ十五歳で成人だそうだから、法的な問題は無いが。


 ロッティめ、初めてのはずなのに最後は口でご奉仕するとは。サキュバスだからエロいのか、ロッティが元々エロいのか……難題だ。


 ガチャッ、と音がすると、俺の愛しい妻三人が入ってくる。

 三人とも薄着だった。


「これでロッティちゃんも、私達と同類ですね!」


 モモが、本当に嬉しそうに言う。


「クロウ殿、まだ食事をしていませんよね?」


 カサンドラの手には、料理が盛られた皿があった。モモは温かいスープを持っている。


「僕が身体を拭くね」


 ラテルは、持ってきた桶の水とタオルで俺を拭き始める。今更だが、恥ずかしくなってきた。

 隣でロッティが寝ているのに。


「ハイ、アーンです。ご主人様♡」

「こちらもどうぞ、クロウ殿♡」


 左右から、モモとカサンドラが料理を、後ろからラテルが身体を拭いていく。


 こんな所を、男に見られたら殺されそうだ。


「次はロッティだよ。身体をキレイキレイしようね~」


 眠っているロッティの身体を、ラテルが無遠慮に拭いていく。


「凄い量だね。やっぱり、今日の戦いで昂ぶっちゃった?」


 ラテルがロッティの下の方を拭きながら、俺に尋ねてくる。


「まあ……」


 フリードと本気の殺し合いを演じたし、皆の安否を心配している間は悶々としていたからな。


「私達も、今日は……」

「クズ共に視姦されましたからね。ぜひ、クロウ殿に清めていただかないと……」

「クロウのあっちの方は、まだまだイケるってさ!」


 留守番していたときは、確かにそのつもりだったけど…………俺、本当に死ぬかもしれない。



           ★



 一夜明け、俺と妻達四人とレイジア、牢獄に居た何人かが集まっていた。

 場所はギルドマスターの執務室兼応対室。この部屋は防音性が高いらしい。


「知能持ちに、意思を持った喋るゾンビですか。フリードまで敵になるかもしれないのですね?」


 情報の共有は大事だと考え、俺が転生者ということだけは隠し、これまでの事を話した。


「ああ、闇側の総意というわけではないが、魔の女神ロラは事態の収拾を望んでいる」


 何人かがロッティを睨む。

 ゾンビ事件は元々魔王が、しかも今は元闇の巫女が関わっている。その妹に恨みの矛先が向かうのは当然なのだろう。

 魔王である俺に向かないのは、昨日、派手に力を見せ付けたからだろうな。


「俺は、あくまで眷属の命を優先する。俺の眷属に危害を加えるような者がいるなら、俺達はここを去る」


 俺達無しでは生き残れないと理解しているのだろう。殺気が霧散する。

 睨む前に気付けないようでは、いずれ切り捨てる事になるかもしれないな。


「よく理解しました。私達がゾンビに対抗する手段と、生活基盤を確立出来るまでは、守っていただけるという事ですね」

「出来る限り協力する」


 いつまでもここに留まっていては、どこかで犠牲者が増える一方だからな。

 ロラちゃんの願いを無下にするつもりはない。

 俺のダンジョンコアは、出来れば闇側の領域で使用した方が良いだろう。その場合は、この都市を捨てる事になる。

 

「では早速、協力して貰いたい事があります」


 レイジアが、今日やることを提示し始めた。



          ★ 



 前日のうちに、レイジアは女性達の要望をまとめ、解決案を出していた。同時にゾンビ対策を進める案もあり、俺達魔王側は、手分けして協力することになった。


「凄い数だな。これ全部が素材なのか?」

「ハイ、冒険者ギルドでは素材や武器、スキルクリスタルの換金もしていますから」


 今俺は、武器やアイテムの素材になる物が置かれた保管庫の中にいる。案内してくれたのは、ギルド職員であったリーシェちゃんだ。


「ここにある物は、自由に使って下さい」


 レイジアから報酬として提案されたのは、保管庫の素材とスキルクリスタル、武器庫の武具全てだ。代わりに、これから集める食糧の大半と浄化属性の武器は彼女達に渡すことになっている。

 街にある物資は、非常事態ということでレイジアが一括管理することになった。


 ちなみに、この都市で一番偉い領主はとっくに逃げ出している。領主がその後どうなったのか、知る者はいない。


「魔導石、結界石、神聖石、竜の鱗に牙や爪、霊樹の木片、ミスリル、ダマスカス、アダマンタイト、オリハルコン、玉鉄、聖なる粉、毒の鱗粉、魔獣の骨、猛虎の皮…………これ、全部貰って良いのか? いや……そもそも、俺達じゃあまり生かせないな」


 薬の材料ならラテルに渡せば良いが、武器の制作となると鍛治の加護が必要だ。

 

「テッチェさんにお願いすればよろしいかと。彼女自身、鍛治師として優秀ですから」


 リーシェちゃんの言葉に、肉感的美少女を思い浮かべる。


 今朝も、俺を熱い視線で見ていた女の子。自己紹介の時、ドワーフと只人のハーフだと言っていたな。


「テッチェさんの工房に、注文した武器が残っていれば良いのですが……」


 護衛としてテッチェちゃんと共に向かったラテルが、無事か気になってしまう。



           ★



「ラ、ラテル様は、ク、クロウ様のせ、性奴隷なのですか? それとも……妻なのですか?」


 さっきからクロウと僕たちについて尋ねてくるテッチェ。昨日も聞いてきたんだよね~。

 今朝も、ずっとクロウに熱い視線を向けていたし。彼女に限った話じゃないけど。


 存在感だけなら、他者を圧倒していたけれどね

 

「クロウは僕達を妻として扱ってくれるよ。式は挙げてないけどね」

「あ、あの、それじゃあ……」


 テッチェの顔が真っ赤になる。


「……皆が噂してたんですけど、……昨日の夜は……」

「五人でお楽しみだったよ」

「ホエ~~~~~!!!」


 別に隠す事じゃないと思ったんだけど、テッチェには刺激的すぎたかな。


「凄い、大人だ……」


 大人?


「ハーレムに憧れでもあるの?」

「ち、違います! ……でも、クロウ様ならば…………少しだけ、お情けを貰えないかと」


 歩きながら、羞恥に身悶えるテッチェ。大きな果実がブルンブルン揺れている。


 あれは……凶器だ!


 僕やカサンドラは巨乳だ。最近モモも大きくなってきてるけど、テッチェのお乳は爆乳並。

 アレで誘惑されたら、クロウでもイチコロかもしれない!


 テッチェがどんな人間か、見極めなければ!!


「……クロウが、好きなのかい?」


 ますます顔を赤くしながら、コクンと頷くテッチェ。

 クッソ! 可愛いいなチクショウメ! 女の僕でも興奮してきた!!


「な、何人くらいの男とお付き合いしたことがあるのかな?」


 ちゃんと周囲の警戒はしているからね!


「一度レイプされかけたことがあって、それからは男の人が怖くて……だから……一度も無いです」


 これだけの美人で経験無しだと!


「あ、あの、クロウ様は、しょ、処女はお嫌いなのでしょうか?」


 そんな話しはしたことないな。でも、私達全員処女を捧げてるし……。


「……嫌いではないと思うよ」


 ゴメン、分かんない。


「そ、そうなんですか……あ、見えました! あそこが私の家です!」

「あ、待て! 離れるな!」


 テッチェが駆け出し、頑丈な作りの扉に近付く。


 その時、家の影からフードを被った巨大なゾンビが出て来る。三メートル近くはある。


 さらに、ゾンビによる包囲網が完成してしまう!


 クロウのおかげで、この辺の通常ゾンビは駆逐されたはずだ。

 それでも残っているなら、偶然クロウに誘導されなかったか、知能持ちか、その指揮下に入っていたゾンビの可能性が高い。


「なら、アンタが知能持ちかな? デカブツ」


 テッチェの前に出て、いつでも庇える体制になる。

 知能持ちを見分けるポイントの一つに、武器の有無がある。通常のゾンビは、まともに武器を扱えないどころか、持ってもすぐに手放してしまう……らしい。全部クロウの受け売りだ。


 デカブツゾンビは、巨大な斧を持っていた。


「ここにこんなのが居るなら、ママ達は……」


 テッチェの家族は、自宅に籠もっている可能性が高い。

 ゾンビが入り込む前、娘の身を案じた父親が、レイジアにテッチェを預けたのだそうだ。


「テッチェ、すぐにデカブツを片付けて安否を確かめよう!」

「は、ハイ!」


 今日も頑張って、今夜もクロウにいっぱい可愛がってもらいたいからね!


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