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夢の中くらい好きにさせて  作者: 島崎 かこ
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プロローグ

暖かな太陽の日差しと心地よい風が吹く。この話の傍観者兼主人公の木下(きのした) 紗雪(さゆき)は、縁側にて静かに眠っていた。腹部に軽いブランケットを掛け、スヤスヤと寝息をたてている。

 紗雪は、眠ることが好きであった。趣味は妄想と睡眠と言っても過言ではないくらい、1日の殆どは夢の中にいた。今日は仕事もない。のんびりと起きる時間を気にする必要もなく、趣味を満喫していた。

 朝、昼、そして夜と時間がすぎていく。昼の暖かさはなくなり少し肌寒くなり、目をゆっくりと開ける。

 

 「さむっ」


 すっかり冷えた腕を組み、屋内へはいる。

 

 「んーー!!いやぁ…今日もいい夢だったな!さて、ノートノートっと…今日の夢は、シルヴィアとシリウスとジークの3人が学校を抜け出し、釣りにでかけた。はぁ…やっぱり金髪の美少女はとても可愛いわぁ。なんか、こう…額縁の中にいれたいっていうか、もー!私が男だったら絶対にストーカーになっているわ」

 

 誰に話すわけでも、聞かせるわけでもない自室にて彼女はしゃべり続ける。

 紗雪は普通の人とは少し違っていた。彼女の夢は彼女の思い描くままに見たいものを見せてくれる。夢の続きを見たいと思えば、次寝た時に続きが永続的に見ることが可能なのだ。今みている夢も見続けて1年経とうとしているほどだ。

 夢の内容はこうだ。ヒロインのツインテール金髪美少女と幼なじみふたりが魔法学校に通っている話だ。ちなみになんで魔法学校かと言うと、自分が魔法をちょっと使ってみたかっただけ。ヒロインのシルヴィアは、純粋無垢なおバカちゃん。なんというか、世の中の汚れなどしらないであろう。人間みんな仲良しを心底思っているであろう娘だ。次に幼なじみの片割れの男、シリウス。2人の保護者みたいな人で、シルヴィアが危ないことをしようとしたら止めてくれるお兄ちゃん。そして、もう一人がジーク。何を考えているかわからないが、根は優しい男の子。シルヴィアとは今いい感じになっている。

 元々話すのが得意でないジークがシルヴィアの優しい陽だまりのような笑顔にゆっくりと心を開いていく、その様を微笑ましく見守るのを楽しみにしていた。

 

 「あぁ…。毎日が休みで、勝手にお金が入ってきたらいいのに」

 

 まぁ、現実は無理な話だ。家賃、食費、光熱費。それだけでかなりの金額だ。実家で暮らしているわけではない。今は亡くなった祖父母の家で住まわせてもらっている状態だ。正直、2次元が好きな私にはなかなか3 次元に手がだせない。20代後半の人間となると同級生が次々と結婚していく、そして私むかって彼氏は?結婚しないの? と何度も言われる。その場は適当にながし、誤魔化してはいるが…いつまで続くのやら。

 話がそれてしまったが、とりあえず適当にあるもので晩御飯を食べ、祖父母の仏壇に手を合わせてから静かに眠りについた。

 

 

 

 ゆっくりと目を瞑り、いつも通りに夢の世界へ行くとおもってた。しかし、今日の夢は少しばかり違っていた。真っ暗な視界のなか中心からゆっくりと光が広がって、夢の世界にいくのに、今日はずっと暗いままだった。

 何も見えない暗い世界は、思っていたよりも怖かった。声も出ず、ただ膝を抱え、耐えることしかできない。目を覚ましてと願うことしかできなかった。そんな中、聞いた覚えのある声が遠くから聞こえてくる。顔をあげ、まわりを見渡すと、遠く豆粒に見えるほどの距離で何かを話している人がいた。立ち上がり、そこへむかって歩くと、見慣れた姿があった。

 

 「え!?おじいちゃん!?」

 

今まで出てこなかった声が、突然と出るようになった。しかし、そんなことを気にしている場合ではない。

 

 「なんで、おじいちゃんが私の夢にいるの!?」

 「わしが、お前の夢に出たらだめか!」

 

 この駄目孫が!っと祖父が私の頭を殴る。夢の中だから痛くなどないと避け無かったら、頭に現実のような痛みがきた。

 

 「いっっっったぁあ!」

 

 なんで痛いの!?と声にはでないが、祖父に目で訴える。

 

 「ふぉっふぉっふぉ!お前がいつまでもわしの家でのんびりと暮らしているから、喝を入れるためにちょいと神様にお願いしてきたんじゃよ」

 「え!?神!?なんで!?」

 

 痛い頭を抱え、膝をついた状態で祖父を見上げる。

 

 「お前、今年でいくつになった」

 「にじゅう……ろく」

 「わしのばあさんがお前と同じ年の時でお前の父さんを産んでるのに、どうして彼氏の1人や2人連れてこないんじゃ!」

 「いや、2人はふたまただから良くないと思うよ!」

 「話をそらすんじゃない!」

 

 そして再び頭に拳骨が落ちる。

 祖父は昔から私にむかって、彼氏をみたい!結婚するまで生きる!など何度も何度も同じ話をしていた。しかし、私が小学校6年生の時に老衰でなくなった。その後、追うように祖母もこの世を去ったのだ。そして、家を壊すかと父と父の兄弟達と話をしていたら、祖父の遺書にこの家を私と私の旦那のために残すようにと書かれていた。昔から私を激愛していた祖父だった。はじめはみんな反発やら、私に壊した方がいいよね?と同意を求めたりしてきた。何が何やらわからない私は、祖父との思い出がつまった家を壊されたくない一心で拒否をし、壊されずに終わったのだ。その後、父の兄弟仲は悪くなり、疎遠となった。

 

 「こほん。そんなわけで、わしは神様に頼み、お前が夢の世界で好みの男を作って見つけ、結婚ができるようにしたのだ」

 「え!!?もしかして、夢の世界が私の思い描くとおりになったのって…」

 「わしが頼んだ」

 

 内心、私が異能者とか中二病のような発想を働かし、楽しんでいたのに。少しだけショックをうけた。

 

 「で、おじいちゃん。私にどうしろと…」

 「さっきも言った通りに、現実で結婚出来ないなら、夢の中で花嫁姿をみせい」

 「無理!」

 「無理なら、一生夢の中じゃな!現実世界のお前の肉体は衰退し、わしと婆さんと仲良くあの世で暮らすしかないが。まぁ、わしらとしては嬉しい話じゃが」

 「それもいや!」

 「わがまま言うでない!」

 

 そして、3度目の拳骨。おじいちゃんは死んでから随分と元気になったようで…。昔はこんなにぽかぽか殴っ…てたなー。

 

 「ちなみに、夢の世界でお前が死んでも死ぬことはない。まぁ、痛みは生じるが…。なんだったっけな?りせっと?だったか…そうなるらしいんじゃ」

 「わかったよ!相手をみつけるよ!見つければいいんでしょ?」

 

 祖父は満面の笑みで、満足そうに笑った。

 

 「じゃ、契約は成立じゃな!楽しんでくるのじゃぞ!」

 「はーい。いってきます」

 

 そういうと、いつもの光が押し寄せてきた。

のんびり更新ですが、宜しくお願いします

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