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第8話「王国城下街・襲撃者」

 人生でお姫様抱っこされる日が来るとは思いもしなかった。orzの態勢で折れそうな心を保つ。


「何してるの?」


「精神の安定を保っているんですよ・・・」


「人間って面倒ねぇ~」


「・・・そうですね・・・」


 現在の場所は森と湖の境付近。異様な光景にいったん周囲を探る事に。

 時刻は深夜手前、だが、森から見える街の空は赤暗く、火の手が上がっていることがわかる。が、音が一切聞こえない、戦闘が始まっているならそれなりの音が響くはずす。いくら森といえど、静かすぎる。

 会話をしながら森の中から様子をうかがう。


「・・・結界よ」


「結界ですか?」


「森に入れる条件はある程度魔力を持ち、悪意を持っていない者。それは全ての生命体に適用される。そして、森の平穏を乱すものは排除される」


「結界が排除するのですか?」


「そう。森に入れる人間は数少ない。メイドでも入れるけど、中まで来れない。そっちは物理的な難易度とメイド達の体力が普通の一般人だから。で、音が聞こえないのもそのせい。人間は妖精や精霊たちをモノとして扱う奴もいるからね、それを嫌ってこの森を結界で覆ったのが遺跡の製作者らしいわ」


「なるほど、基本的に人間は入れないけど、妖精に友好的な人は入ってもいいと?」


「さすがに自分が入れないとどうしようもないでしょうからね」


 森の中からだとよく見えないが、街中で大きな影が動いている。炎である程度見えるが、正確な状況はつかめない。

 城に向かって進む複数の影と、おそらくだろうが、それと相対している勇者達。複数で相手をしている事から、最大で七を超えない敵だと思いたいが。


「・・・微妙ですね」


「あれが勇者?」


戦っている人間を見て指さすが、よくみえない。


「ええ、たぶん」


 戦局は読めない。勇者が奮戦?しているのだろうか、巨大な影は動いているが、いかんせん大きすぎる。人のサイズの6倍から8倍はありそうな影。


「この混乱に乗じて目的が達成できればいいのですが・・・」


「出来ればウィンディーネ達をどうにかしたいのだけど?」


「それはもちろんですが、どうしたものか、森の中の方の湖に移すとかですか?」


「それは無理ね、湖のそこに精霊たちを祭っている祭壇があるし」


「・・・え?」


 アラクネの発言に思わず、考えていた行動が白紙になってしまう。予定は未定ですってことか。


「どうしたの?」


「いや、それ、祭壇?ですか?壊れたら大参事になるとか?」


「可能性はあるわね」


「・・・」


 勇者に丸投げしてさっさと魔法召喚師から話を聞いて逃走。のつもりだったのに、予定がすべて消えることになった。

 牽制程度に適当に魔法をぶち込めば終わるかと思ったのに、敵を倒さないとヤバイ事態になるとか聞いてない、


「・・・僕も戦わないとやばいんじゃないですかね?」


「たぶん」


「・・・だから僕を運んできたんですね」


 人間嫌いのアラクネが人間を運ぶなんて何のことかと思ったら、まさか敵にぶつけるためだったとは・・・。一本取られたわ。


「てへぺろ?」


「・・・ぐ」


 魔法が実践で使えるか試すだけだったが、予定変更。敵を倒す事に。


 『魔力よ、とりあえず、身体強化』

 『シールド』


 湖の上にシールドを展開し足場を作る。

 森から離れたとたんに音が聞こえてくる。


「ぐ・・・」


 シールドの上に立ち、街の方を確認。

 『ファイアーアロー』魔力を炎の矢に変えて飛ばす。炎で照らせる可能性も考えての選択だが。


「湖周辺で炎の魔力使うってどうよ?」


 シールドを糸で繋いで足場を作ったアラクネが登ってくる。


「・・・やっぱ水属性のほうがいいのですかね?」


「当然でしょ?」


「・・・仕方ないか・・・」


 さらにシールドを展開し、街の方へ。

 街に近づく程に、悲鳴が大きくなる。

 そして、こちらに気が付いた敵が一斉にこちらを見る。


「・・・あいつら、魔力に反応しているのね」


 勇者や兵士たちと相対していた四体に、街を歩いていた四体。合計で八体がこちらを睨む。


「「「「「「「「ぶむおぉおぉぉぉおおおぉおおおおおお」」」」」」」」


 雄たけびを上げ、相対していた勇者や兵士をそっちのけでこちらに向かってくる。こちらに突っ込んでくる影たちが炎に照らされて姿がようやくわかる。

 頭が牛で、体が人の生物。ミノタウロス。武器は巨大な斧で全身が黒く、目だけが赤い。


「全部こっちにくるのかよっ!」


『ソニックブーム』衝撃波で足止めでもと思ったが、魔法が効いていない?衝撃で多少身体を揺らすが、移動速度は衰えない。


「・・・あいつら、魔法生物のようね」


「わかるんですか?」


 シールドで足場を増やしながら街から離れていく。こちらの移動に合わせてミノタウロスの群れも方向が変わる。


「魔法生物は基本的に魔法攻撃に耐性があるわ」


「・・・マジか、魔法効かないならこちらの攻撃手段が・・・」


「あるでしょ、魔刃鍛造が」


「・・・あのサイズ・・・そうだ、糸もらえませんか?」


「いいけど、何をするつもりなのかしら?」


 魔刃鍛造で、剣を二本作りだす。作り出した剣の柄を糸で結ぶ。アラクネの糸は魔力で操作可能だから事実上腕力の限り攻撃範囲が広がるはず。

 振りますことで風を切る音が耳を叩く。


「遠心力で相手にぶつける武器です」


「人間は相変わらず不思議なもの作るわね」


「不思議ですか?」


「どうやって使うのか想像がつかない。剣なのに剣を持たずに糸を持つとか」


「ま、見てればわかりますよ」


 シールドを展開し、足場を確保、糸を振り回し続けながらミノタウロスに接近。


「ぶむおぉぉおおおおおおお」


 斧を振り下ろすミノタウロス。しかし、動作が遅いので簡単に振り下ろそうとする位置から離れる事が出来る。離れたところで風圧で飛ばされかねないが。


「・・・一撃必殺か・・・」


 ミノタウロスの目に届く位置までシールドを登り、剣を振り回す。

 眼球に食い込む剣に声を荒げながらミノタウロスが目を抑える。残った目が憤怒に染まったかのように見える。

 こちらの反撃が想定外なのか一体ずつ相手するのではなく、物量で押し切ろうと、殺到する。


 慌ててシールドを展開して上に逃げるが、斧を投げる。


「嘘でしょ・・・!」


 シールドを重ねて身を護るが、容易くシールドをぶち抜いてくる。巨大な質量と、10メートル前後の身体を支える筋力で投げられた斧はシールドを破壊しつく。


「まてよ・・・なんで、通常サイズのままなんだよ・・・」


 少し考えればわかることだが、上に伸ばしただけで横幅がそのまま。なんてことはありえない。しかし、目の前にいるミノタウロス達は明らかに異常。よくいるミノタウロスをそのまま10メートル程度まで大きくした生物といえる。


「こいつらは身体を支えるのに魔法を使っているは・・・」


 先ほど投げた斧が落下してきてミノタウロスの額に・・・。斧を受けて四体のミノタウロスが倒れて動かなくなる。


「・・・え?」


 残りのミノタウロスは声を上げて逃走。


「・・・なにこれ?」


「こっちが聞きたいわ、何したのよ?」


 一言で言うなら自爆。頭上の敵に攻撃だ!届かないから武器投げようぜ!投げた武器が自分に・・・あっー!


「・・・し、しまらないな・・・」


「まぁ、残り四体は放置して最初の予定をこなせばいいんじゃないかしら?」


「そ、それもそうか・・・」


 『インビジブル』姿を隠して城へ向かう。


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