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第4話「王国王城4・八人の勇者」

「いえ、話すことなどありませんし、そのままでいてください」

「だが、ここで事を荒げても、マイナスでしかないと思うぞ?」

「・・・そうだな、同じ故郷の人間同士の方がよいかもしれない」

 頭を冷やしてくる、と部屋から退出する武官。



「そういうわけで、少し、話さないか?無理にとは言わないが、この世界に8人しかい日本人だ、俺たちの現状を確認しておくぐらいはいいだろう?」

 確かに、この世界の人間よりは話せるとおもう。立ち位置の確認となれば、しておいた方がいいだろう。

「まずは席に着いたらどうだ、話が長くなるかもしれないし、座ったほうが楽だろ?」

 促されるまま、一応席に座る。座った途端に捕えられて、なんて警戒していたので座りたくなかったのだが、一番強いであろう武官が退出し、兵士達のみ。距離もあるのでことが起こってからでも対処できると判断し、椅子に座る。


「うん、俺からいこう、斧担当だ。工藤修護くどう しゅうご。ラグビー部の部長をやっていた」

 偏見かもしれないが部長というだけあって、体格もいい。見た目通りなら俊敏さは望めないが、圧倒的な重量で斧を振るう姿は想像にたやすい。部長ということもあり、まとめ役なのかもしれない。

 体格を細かく観察するなら、筋肉が服を着て歩いている。といった感じか、制服の上からでもわかるほど鍛えられている。

「次、そっちでどうだ?」

 修護から見て左側。机を中心に反時計回りに自己紹介が始まる。


「わかった、相崎勉あいざき つとむだ。剣道部だった。ここでも剣が反応した」

 柳というか、ヒョロい。と表現できる。立ち上がったことから礼儀を優先する人格者だと思える。だが、自分の知っている剣道部。という感じではない。それに、なんといえばいいのか、影が薄い。見た目的にはイケメンに分類されるのだが、色白さが病的に近く、体を患っているのでは?とう疑問が浮かぶ。

 律儀に立ち上がっての自己紹介のため、身長は目測で180から90程度。無論、人当たりはよさそうだ。

「わざわざ立ち上がらなくてもいいだろ?」

「初めてだしね」

 修護と勉は知り合いなのだろうか?


「次はあたしか。あたしは雨宮天音あまみや あまね。槍担当ね」

 ギャルというラインがわからないが、制服を少し着崩した現代の学生ですといった感じ。特に化粧が濃いというかんじはなく、すっきりとまとめている。

 座っているため身長はわからないが、振った手の長さから見るに身長も高く、隣の勉と同程度かもしれない。モデル体型だろうか。胸は控えめなので、無駄な脂肪が付かないタイプか。

「胸を見るとは喧嘩売ってる?」

「・・・失礼、モデルのような美しい体型を維持しておられるなぁと」

「そんな、初対面で服の下がみたいだなんて大胆ね、キャッ」

 クネクネと体を動かしながらとぼける。まぁ、ノリのいい人間だが。

「言ってませんよ!」

「冗談よ、そこは少しくらい慌てないと好感度低いわねー。ま、今回は素直にお世辞を受け取っておいてあげよう」

 ほかの女性から突き刺さる視線が痛いし。流してくれるのは助かる。


「わ、私は、か、鎌に、選ばれました。間宮楓まみや かえでです」

 緊張しているのか、少しぎこちない。なんというかブリキの人形?表情も硬いし、顔も強張っている。落ち着こうとししているのだろうが、落ち着けていないのか。平時であれば可愛いといえるのだろうが、繭はハの字に曲がって少しばかり残念だ。


「楯の、時雨由紀しぐれ ゆきです。楓ちゃんと同じクラスです」

 二人は知り合いだと。こちらもこちらでソワソワしているハムスターといえばいいのかな?小動物のようで、声は消え入りそうなほど。絶滅種なので慎重かつ丁寧扱うべきだといわれてもおかしくないほど細い。


「ほ、ほ本の、た、たん、・・・くく黒、野・・・」

 うん、聞こえなかった。

「あー」

「ひっ」

「申し訳ないのですが、もう一度、教えていただけませんか?聞き取れなかったので」

「ご、ごごご、ごめん、なさい。く、黒野、・・・百合くろの ゆり

「くろの、ゆり。さんでいいんですか?」

「・・・」

 コクコクコクと頷く。コミュ障とかいわれる方だろうか。見た目は美人に入りそうだが、言動が全てを台無しにしている。一歩間違えば井戸から出てくるお化けだ。

 もしくは自分がそんなに危険な人物に見えたのだろうか?


「位置的に、僕ですかね・・・?」

「そうだろうな」

「わかりました。霧崎綾人きりさき あやとです。残っているのは杖みたいなので、杖を使わせられそうですけど?」

 周囲を見てみるが、国王や王女たちは我関せずといった感じだ。今はこちらの出方をうかがっているのか?

 自分については割愛。平凡が服着て歩いてるようだって言われてるし。


「最後は、僕ですね。弓に導かれし勇者、久瀬一夜くぜ いちやです。よろしく、綾人さん」

 うん、近寄りたくないね。少々芝居がかった動作と言動。いうなれば、この状況に一番酔っている。と認識していいだろう。最初に出る犠牲者はこいつかだろうな・・・。

「さて、自己紹介も済みましたし、状況をおさらいしましょう、綾人さんも納得できると思いますよ」


 簡単にまとめると、この世界は、魔法があり、魔王がいる。そこら辺は姫さんからすでに聞いてるから飛ばして。

 勇者についての情報。

 勇者は生誕型と召喚型。生誕型はこの世界の人間。基本的にステータスが高いといった感じ。

 召喚型は自分達。特異な能力を保有している。

 魔法は誰でも扱えるものの、勇者の使用する魔法は同じ魔法でもほかの人間が使う魔法より強化されているとのこと。


 この国、名前はエスター王国というらしい。国で生誕勇者が見つからなかったために、魔法学院より召喚陣を伝授してもらって召喚したと。

 この国で帰還が不確かな点は召喚陣がこの国のものでないため、原理を理解してないところが原因と思われる。

 勇者として魔王を倒せば、この国でなくても、魔法学院で転移が出来る。と。


「じゃ、別に勇者しなくても、学院に行けば、帰還の可能性もありえるわけですね・・・」

「あなたは、まだそんなことを言うのですか?」

 拳を机に叩きつける。感情を表に出しやすいのか、打ち付けられた拳は震えている。

「この国の人々は、勇者として力を持つものが生まれなかった為に、異世界の僕たちに頼ってきたのですよ?それを断るだなんて、あなたには助け合いという精神がないのですか?」

「それだけか?」

「何がです?」

「たったそれだけで、勇者に、自分の命を賭けることができるのか?」

「人助けに理由がいるのですか」

 人間の思考は千差万別。理解できないことも多々あるそれでも、折り合いをつけることを学ぶのが学校の集団生活だと思っている。アルバイトをしていたため精神的にはほかの学生よりも折り合いがついているとは思っているが、それでも、許せないことがある。

「・・・残念だが、僕は、この世界の住人を許せないし許すつもりもない」

「何を言っているのですか?」

 コイツ馬鹿か?それとも、自分の認めるもの以外理解しないタイプか?

「・・・わかりやすく現状を客観的に確認しよう」


 ①日本人8人はこの世界の国の一つ。エスター王国に召喚という方法で拉致された。

 ②拉致の理由は、勇者が必要なため。

 ③拉致した人間は魔王と戦うために、支援する。

 ④魔王を倒せば、帰還出来る。かも。


「さて、この世界の人間の為に何かする価値があるか?」

「あります」

 即答で口を出す。弓の勇者は頭おかしいのか?

「ねぇよ」

「何故、ないと言い切れるのですか?魔王を倒せば、帰れるのでしょう?帰れなくとも、永住を認められている」

「それに何の意味がある?」

「はぁ、いい加減に認めたらどうですか?」

「何をだ?」

「我侭を言っている。という事を。あなたの言っていることは子供の戯言だ。働きたくない。この世界で生きていくには魔王と戦わねばならないのですよ?」

「戦う必要自体ないだろ?帰ればそれまでだ、帰った後死のうが生きようが関係ないね」

「正気ですか?人の命がかかっているのですよ」

「正気なんて妄想も、狂気の感情の一つだ。そんなものにすがるなら発狂したほうが早い。それに、こちらとて、命がかかっているんだ」

「・・・あなた一人が地球へ帰る事と、ここで勇者を行うのと、どちらがより多くの人命を救えると?あなたは医者か何かなのですか?」

「命を数でしか数えれないのか?それこそ傲慢だろう?悪いが、この世界すべての人間の命よりも、地球で待ってる一人の命を選択するね」

「・・・どうあっても勇者としてこの世界を救うつもりはないと?」

「どうあがいても、世界を救えるなんて思えないし、思わない。お前だって、道端にある小石に何かを思うことがあるのか?」

「命と小石は違います」

「お前にとって違っても、俺にとっての価値は同程度だ。残した家族と、名も知らぬ世界。選ぶなら家族を選ぶ」

「それが、どれほど最悪な選択でもですか?」

「自分にとって正しい選択である以上、問題はない。他人にいくら罵られようとも、自分の明確な意思をもって選んだ選択だ」

「捨てられた人々はどうしろというのですか?」

「自分で、どうにかしろ。だろ。他人に頼りきりで、何の意味がある。生きたければあがけばいい。死にたくなければ強くなればいい。それすら許されない人間がいるんだ・・・甘えるなよ」

「・・・勇者に頼ることが甘えだと?」

「少し考えればわかりそうなものだがな。生誕勇者が出来ない原因もこの国にあるんだろう。ほかの国で生まれてこの国で生まれない理由が」

「そんなの!」

「わかるわけがない。だが、それをわかろうとせずに、召喚という方法に頼った。そのツケが回ってきた。それだけだろ?」

 可能性はわからないが、この国は平民を人として扱わない。人ならざる種族への差別も高いと思われる。花壇で死にかけている妖精を誰も救わないのだし・・・。信用できない人間の為に命を使うという選択肢は、存在しない。

 何より、一方の話だけを聞いてはいそうですか。というわけにはいかない。命を使うべき場所は既に決まっているのだから。

「それにしても、将軍は遅いな、説得は無理だと伝えたかったのだが」

 修護が呟いた一言に失敗を悟る。

「・・・まずい、ハメられた・・・!」

 勢いよく立ち上がり、椅子を倒しながら扉へ向かう。

「勇者殿!」

 扉の横に控えていた兵士二人が扉の前に立ち、部屋から出るのを阻止しようとする。

「どけっ!」

 妖精が使っていた魔法は『ウィンドカッター』風の刃を幾重にも重ね球体にして射出していた。

『ウィンドカッター』

 立ちふさがる兵士に向けて魔法を発動。一度で成功した魔法。慌てて兵士はウィンドカッターを回避、そのまま扉に当たり半壊させる。人を殺す威力としては心もとないが、現状牽制としては十分機能すると判断。壊れた扉を蹴り破り、召喚魔法師と妖精をねかした部屋に向けて走る。


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