第23話「歌姫の迷宮近郊・魔族」
「・・・間に合うか・・・」
身体を強化し、シールドを足場に空中を駆ける。
ハルピリアと解毒剤をシルキー達に託して、取って返してきた。出来るなら治療までしたかったが。
「遠距離射撃の能力は出来るだけ隠しておきたかったのですが・・・」
『開け、異界の扉よ』
周囲の空間を歪ませて転送用のゲートを作り上げる。つなげる先は歌姫の迷宮に隠してある武器庫。射出する武器は魔力結晶体を加工した槍。
魔力を撒き散らしながら射出された槍は内包魔力が少なくなると爆発を起こし、周囲を焼き払う。
「クロードの近くに落ちないようにしつつ、牽制と・・・」
『穿て』
『魔刃鍛造・銀の腕』
銀の腕を作り上げ、クロードに近づく女に拳の一撃を見舞う。
「クロードから離れろっ!」
「ふぅ!くぅ!」
両腕でガードするが、構わずに吹き飛ばす。
「吹き飛べ!」
『爆ぜろ!』
槍を爆破して砂塵を撒き散らす、クロードの魔法によって森の一部が凍っているため思ったよりも視界を塞ぐ事が出来ない。
「・・・く、今の」
「油断しすぎだ」
気配はなかった、辛うじて腕で防いだものの、追撃の一撃を防げずに吹き飛ばされる。
「くっ」
『アイス・・・バレット』
目標を定めずに適当に放つ。
「ふむ、臆せずに反撃に転じる姿勢はなかなかだな?勇者よ」
体制を立て直し、状況を整理。
女は吹き飛ばし、槍の爆発でしばらく戦闘続行は出来ないはず。
クロードは動けずにいるために、影鬼に運ばせる予定だったが、視界がよく、クロードを動かせば確実に狙われる。
人攫いの親玉たる男は気配もなく至近距離に現れた。
「勇者?何がですか」
男は笑いながら腰の剣を捨てる。
「ミシェール・コラプサーに、弟はいない」
「・・・」
「どうした?」
「・・・ミシェール姉さんがどこにいるか知っているのか?」
「知りたければ、力づくでどうかね?」
「そうさせてもらうかっ!」
銀の腕を発動。電気を纏う。
「ほうっ」
こちらと同じように拳を構える。
「!」
男の構えは空手だ。
「・・・」
「どうした?」
「・・・お前・・・お前も・・・?」
「何を言っている?」
「お前もか!」
距離を詰め、拳を振るう、すべての拳が容易くいなされる。確実に相手の力量の方が高い。真っ向勝負では勝ち目はない。
「勇者召喚で召喚されたというのなら、半分はあたりだな」
「半分ははずれだと?」
足技を使ってみるが、やはり熟練者、容易く捌かれる。
「ちっ、帰還方法はあるのか?何故この世界の人間を傷つける?」
「・・・知りたければ」
「やってやるよ」
距離をとり、魔法を放つ。
『アイスバレット・ショットシェル』
「ふん」
氷の散弾を全て弾き落とす。
『魔刃鍛造・エクスカリバー』
青い鞘に包まれた剣。剣を抜かずに地面に放り、次の剣を作り出す。
『魔刃鍛造・グレンデル』
石造りの大剣。刀身には女神の像が鎖で繋がれている。
『唄え』
魔力を剣に流すと、女神の像が声を上げる。
『シャイニングレイ』
魔力が光の槍になり、男に突き刺さる。
「なんと!」
グレンデルを地面に突き立て、エクスカリバーをとる。
鞘から剣を抜くと、刀身が存在しない。
エクスカリバーの浸食率は低いが。男の周辺を中心に侵食しているので発動すれば、致命傷を追わせることが出来るはず。
「なんだその剣は?」
「エクスカリバー。有名なところではアーサー王が持っていた剣とか言われてますね」
エクスカリバーを男の方に向ける。刀身の存在しない剣をかざしても相手には侮られるだけだが。その方が、いい。
「抜けば勝利をもたらす剣だったかな?」
男はシャイニングレイを体に受けているが平然と立っている。
「残念、こちらの剣は湖の剣だ」
「・・・湖の妖精が持っていたはずだが・・・」
『塵は、塵に。灰は、灰に。』
男の周囲をエクスカリバーが焼き払う。
「マイクロウェーブコンデンサ、果たして、あなたに理解が防げただろうか・・・?」
「・・・確かに、これは厳しいな」
「まだ動けるのですか・・・どこまで頑丈なんだよ」
「ほう、気が付いていたのか?」
「どこまで攻撃すれば致命傷になるんだ?強化歩兵はどこまで強化されているかわからないからな」
「あー、違うな、強化歩兵が何か知らんが、疑似魔導生命体だ、それと、構えを解いてくれ、これ以上は動かせない」
「・・・」
男が腕を動かしたとたん腕が落ちる。落ちた腕は形を保てずに砂のように崩れる。細胞の組織を破壊したにしては損耗が酷すぎる。
「・・・もともと、この体は限界だったのだよ」
エクスカリバーとグレンデルの実体化を解く。銀の腕は残したままだ。
「・・・さて、勇者よ、よくぞ私を」
「殴っていいか?」
「人の話は最後まで聞かないか、日本人だろ?」
「・・・よくわかるな」
「自分も日本人だからな」
「そ・・・うか・・・」
「さて、よくぞ私を倒した。私を倒した褒美を授けよう」
「・・・ミシェール姉さんの行方、なぜこんなことをしたか、答えてもらう。ハルピリアが無事でなければ何度でも殺していたところだからな」
「過激すぎるぞ。・・・まぁ、いいか、まず、ミシェール殿は生きている。ついでに言うと、ミシェール殿の勇者召喚の魔法は、私も開発に協力している」
「オイ、元凶」
「私も召喚されてきたクチだ」
「・・・話がかみ合ってないぞ?」
「最後まで聞いてからな!私は教国によって召喚された勇者だ。残念ながら勇者としての資格が足らなかったために教国で殺されそうになった所を逃走。そしてミシェール殿に拾われたのだ」
「・・・まじか」
「それで、ミシェール殿の手伝いをしている。それに、他の者の手伝いとして、勇者を探しているのだよ」
「・・・なるほど、それで俺が勇者候補というわけか。・・・まさか、クロードも勇者なのか・・・?」
「現地産のな」
「・・・ハルピリアの傷は」
「完全な事故だな、勇者は大抵、加護を持っているからな、並の毒や魔法は効かないからな、彼女が割り込まなければ彼女が毒を喰らうことはなかった」
・・・事故か・・・確かに、自分が反応出来ていれば、ハルピリアは傷つくこともなかった。
「・・・さて、次だが」
「いや、時間切れだ」
身体を動かした途端にすべてが崩れ落ちる。
「・・・逃げやがった!」
魔力の痕跡を妖精の瞳を通して探るが混沌としていて追跡できない。・・・エクスカリバーの発動で周囲一帯を焼き払ったため、魔力すらも変質してしまったようだ。
とりあえず、クロードを影鬼に運ばせて、女を確保する。女を確保する際に、いくつかの疑似魔導生命体を確保。
「・・・なるほど、先に設置したあとに、動かす人形だけを動かすのか」
接続がなされていなければ目視するしかない。魔力でつながっていれば魔力を感知することも出来るが、魔力がなければ物品と変わらない。
おそらく、男の方は接続を切っていた。ゆえに最初の一撃にこちらが反応できなかった。
シールドで作り上げた足場を運ばれているクロードが目を覚ます。
「くっ」
「クロード、目が覚めたか?」
「ここ、は?」
「空中」
「空中?」
「いま、町へ戻る途中だ」
「ラヴィアナは・・・?」
「闘っていた女か?」
「ええ」
「残念ながら、疑似魔導生命体らしい」
「・・・疑似、魔導生命体・・・?既に、彼女は・・・」
「元恋人とか?」
「・・・同僚、ですよ」
「そか」
「教国から逃げるお嬢様を共に、守った」
「逃げる?」
「ええ、教国は、年齢と魔力が一定数を超えると、必ず、勇者召喚の儀式をしなければなりません」
「へー」
「それで、まともな勇者が召喚されればいのですが、人間的に最悪なものもいます」
「ああ、ゲスな」
「なので、お館様はお嬢様を逃がしたのです、幸い、お嬢様は教国にいた時は魔力が少なかったため、勇者召喚の儀式を行えないと判断されたため、ですが、お嬢様を狙う一部の人間に襲撃されまして、その時に」
「お嬢様を狙う理由は?」
「勇者召喚の儀式を行った女性は自動的に勇者の婚約者になりますから。勇者召喚の儀式しないなら、」
「安泰というわけか」
「ええ」
「それなら、お前の妹はどうなるんだ?」
「政敵にはめられるような弱い家の娘など、家を繁栄させるための駒にはなりませんよ」
「・・・そうか・・・」
「・・・アーヤ、この後は・・・?」
「眠っていていい、ギルドに一応、歌姫の迷宮付近で戦闘して・・・地形変化させてしまいましたからね・・・」
森の一部は凍り付いたままだ。
町に近づくにつれて喧騒が聞こえる。
「・・・やけに騒がしいな」
「何か、あったのでしょうか?」
「・・・とりあえず、門番のおちゃんに聞いてみる」
空中に展開したシールドから降りて、門番のおっちゃんに話しかける。
「よう!にいちゃん!ギルドの方だな!」
「え?」
「よくやったな!」
背中を叩かれ、門を通される。
「あの?」
「今日は祝杯だな!」
わけがわからない。
わけがわからないまま、ギルドにたどり着く。クロードは空中に待機。
「アーヤさん!これっ!」
「あ、モナさ」
顔にパピルスが押し付けられる。
「見えねぇよ!」
「ああ、すいません」
これです。これこれ。と、パピルスを見せる。不鮮明な印刷だが、魔王討伐と書かれている。
「・・・魔王討伐?」
「はい、そうです」
「・・・意味が分からないんだが?」
「言葉通りじゃないですか!すごいですよ!こちらに冒険者と登録して直ぐに魔王討伐だなんて!」
興奮しているのか、身振り手振りで何かを表現しているが、わからない。
「・・・いや、間違いじゃないか?そもそも、魔王なんてのと戦ってないぞ?」
「ええ・・・でも、これ・・・誰が・・・?」
「それについては、私から話をしましょう」
先ほど倒したはずの女、ラヴィアナが立っていた。
ラヴィアナ「次回倒したはずの彼女が再び!」
アーヤ「クロードさんや、この人こんな残念なの?」




