第19話「歌姫の迷宮・ミミック」
「何言ってるんですか、全力でないと訓練にならないでしょう?」
「まぁ、そうでしょうが・・・」
「では、身体強化系統の魔法を全て使用してください」
こちらも、身体強化し、次の魔法に備える。
「・・・かなり防御よりの魔法ですね、以前使用したベルセルクは攻防平均的に上げるような形だったと思いますが」
「訓練時は攻撃よりも防御がめいんですよ、・・・出ないと死ぬかもしれませんし」
「いますごく聞き逃したい言葉が聞こえましたが?」
「死ぬかもしれませんし」
「言い直す必要あります?どんだけ危険な訓練してるんですか?」
説明もせずに魔法を展開。
『重力の檻』
「なっ、く」
自分たちがいる部屋を中心に少し先まで重力を発生させている。
「身体が、重い・・・?なんだこれは・・・」
「重力ってわかりますか?」
「地面に引き寄せられる力ですよね?」
「説明不要で助かりますね、今、周辺は重力が2倍になっています。まずは、身体の内部を魔力で補強しないと死にます」
「身体の中?」
「ええ、内臓が傷ついて動けなくなりますよ」
「なぜそんないちいち危険魔法を・・・」
「僕は普通じゃないですし、時間が足りません」
「そうですか・・・」
そういうわけで、訓練を開始。内容は単純。強化した身で殴り合うだけ。
*
「もう、無理」
しばらくしてクロードが限界を訴え、重力の檻を解除。
「はぁ、想像以上にきついですね・・・」
「ええ、肉体と精神。同時に追い込むことでギリギリの状況まで追い込んでいますからね」
「想像以上ですよ」
おぼつかない足取りで壁までたどり着いたクロードが壁に背を預けて身体を沈めていく。
「それにしても、アーヤの変装も日々向上しているのではないですか?今回は、髪の色と目の色を変えているようですが・・・」
襲撃者達から情報を得るために、毎日。というほどではないが、変装をして微妙に姿を変えている。といっても変わっているのは髪の色、目の色、装備の色だけだ。
『インビジブル』の応用に過ぎない。
インビジブルは単純に光学迷彩で姿を見えなくしているだけ。なので、それ以外の気配は残る。なれば、いっそ色だけで変えてみればと変えてみたら、あっさり襲撃者に見つかる始末。しかも、変装後の姿で。だ。
ならば、答えは簡単、敵は千里眼的な何かでこちらを補足している。そして、先ほどクロードと話したダウジング。最低でもこの二つに加え、後一つはこちらを遠距離で補足する術があるはず。
幸いなことに、迷宮内部での襲撃者との遭遇はないので、おそらく迷宮内部を探すすべはない。そのため、迷宮内で訓練を行っている。最悪、遭遇しても、迷宮内部なら死体があっても不審な点はない。
「変装しても、見つかっているのであんまり意味はないんですけどね・・・」
「・・・人が来ますね。静かにしてください。インビジブルで姿を隠しますが、音は消せませんから」
「・・・わかりました、休息も兼ねて休んでおきますよ」
少しして、複数の足音が響いてくる。
「本当にこの先にアーヤ・コラプサーがいるのか?」
「ええ、本日このダンジョンに入るのを確認しました」
「出てきてはいないんだな?」
「迷宮の構造上、入り口は一つ。ルートは八つ。しかし、出口も一つ。なので、出てきてない以上、まだ、迷宮内部のはずです」
「だといいがな・・・」
「八つあるルートのうちでどこも目撃情報がないとなれば、このミミックの部屋のルートしかありえません」
「何故だ?他のルートは何処も冒険者共がうろついています。ですが、ミミックのいるルートだけは、冒険者が一人としていません」
「・・・何故だ?」
「あれです」
歩いてきた男たちは、部屋の隅に置かれている宝箱を見る。
「宝箱か?」
「ミミックです」
「あれがか?普通の宝箱と大差なさそうだが?」
「攻撃してみればわかりますよ、ですが、決して開けようとしてはいけません」
「開けようとすると、攻撃されるのか?」
「ええ、ここのミミックは弱いので問題ありませんが、本来ミミックはかなり危険度の高い魔物として有名ですからね」
「なるほど、なら、お前ら、少し腕試しと行こうか?」
男たちはミミックに攻撃を開始する。
十分、二十分と時間が経過するが、宝箱に傷一つつける事はかなわず、彼らの武器だけが損耗していく。
「くそ!どうなってやがる!」
「弱いんじゃなかったのか!?」
「こちらの攻撃が全く通じないぞ!」
「魔法を使うぞ!」
掛け声とともに、魔法の詠唱を始める複数の男。三十人近い人数がいるが、魔法を詠唱し始めたのは五人ほどだ。
「・・・クロード、魔法防御します。声を上げないで下さいよ?」
「何かあるのか?」
「とんでもなく愉快なものが見れますよ」
「不安しかないんですがね?」
詠唱を終えた魔法を一斉に放つ。彼らが放った魔法はファイアーボール。
今まで動じなかったミミックはファイアーボールが着弾する寸前、蓋?口?どちらだろうか、どちらでもいいが、大きく広げてファイアーボールを喰らう。
「え?」
男たちと同様の疑問をクロードが口にしたが、次の瞬間更なる驚愕に染め上げられる。
ミミックがファイアーボールを吐き出したのだ。
ただし、威力を強化した状態で。
「なっ!」「避けろ!」
男たちは慌てて通路の奥に進む。
男たちの後を追うようにファイアーボールを吐き出すミミック。全員が部屋から消えると煙を吹いて、蓋か口かを閉じる。
「・・・何ですか今の」
「魔法攻撃は嫌いなようで、魔法をぶつけると、カウンターしてくるんですよ」
「いや、無いから、普通はないから、どうなってんですか!?」
「ミミックってカウンターしてくるもんじゃないんですか?」
「しないですよ、どこの世界に魔法攻撃をカウンターするミミックがいるんですか!?」
「目の前にいるじゃないですか」
「確かにいますけど・・・」
「・・・一体何がどうなっているんですか」
「知りたいですか?」
「いえ、知らないほうが身のためなので遠慮しておきます」
「そうですか、残念ですね、男たちも消えたでしょうし、訓練再開しますか」
「ええ、そうですねぇ」
訓練を再開。明らかに先ほどよりも動きが鈍っているが魔力が回復しきらない以上、無理もないか。
クロードは休ませて自分一人で訓練を再開。
複合技を出すたびにクロードの顔が青くなるのである程度でやめておいた。
「アーヤー?」
しばらく訓練を続けていると、来訪者が来た。
「ハルピリア、出かけていたのですか?」
「うん!インビジブルちゃんと使えるようになったから!」
「よし、いいこいいこ」
頭をなでると照れたように笑う。
「ですが、知らない人がいる時に出てきては駄目だといったでしょう?」
頬を引っ張り少し伸ばす。
「いひゃ、ご、ごめん、なふぁい」
「まったく」
「・・・えーと、アーヤさん?そちらの目のやり場に困る妖鳥の方は?」
「ハルピリア。この迷宮の歌姫で、迷宮守護者ですかね?」
「そだよー、よろしくね?」
「どうも・・・じゃないですよ!?どうなってるんですか!?」
「・・・ハルピリア、部屋の方に案内してくれるかな?」
「いいよー『リターン』」
「転移魔・・・!」
迷宮の最奥へと案内される。
ミミック「!」
アーヤ「そういえば、ミミックって発声器官ないよね」
クロード「無謀すぎる・・・!」




