第18話「歌姫の迷宮・訓練」
幸い、奴隷商人と繋がっていると思われる人間の襲撃は少なかった。元々、魔法学園には部外者が入れないせいもあるが。
拠点は魔法学園の一室、クレアの部屋の隣を開けてもらった。残念ながらクレアは普通に部屋に入ってくるので鍵なんてあってないものだったが。
ギルドでは人がこなしたがらない任務を優先的に行って顔をつないでいる。
依頼が少ないときは歌姫の迷宮で魔法訓練を行っている。主に、人に使えない魔法や危険度の高すぎる魔法は隠れて訓練をしている。
学園ではクロードと魔法の訓練を。残念ながらクロード以外では戦闘訓練にならないが、クロードは執事でもあるため、時間は多く取れない。
今は食堂でクロードと食事をとりながら、使用している魔法について話をしてる。
「隠蔽の魔法で魔力を隠して、気配を断っている襲撃者に襲われるのはどうすればいいのですかね?」
「魔法で探っているんじゃないですかね?」
「特定の人間だけを探査する魔法があるのですか?」
「ありますよ。まぁ、アーヤの隠蔽で隠せるのは魔力だけですし。特定の人物の特定の位置を調べるのは飛躍的に簡単ですし」
「どうやって調べてるんですか?」
「・・・まず、ここ周辺の地図ですかね。町中の襲撃しかないというのなら、おそらく使用しているのは町の地図でしょう。魔法学園敷地内は結界によって守られてますし」
「魔法学園内部で襲撃者がいないのはそのせいか」
「で、あとは魔力を通しやすいもので感知するだけですね」
クリスタルをぶら下げてみせる。
うん、ダウジングだ。魔法なのか・・・。
「それは防ぎようがないですね・・・」
「まぁ、アーヤなら襲撃者を全員ミンチに出来るし問題ないでしょう?」
「さすがにミンチにはしてないな・・・」
「そういえば、あなたの扱う魔法は危険度が高すぎやしませんか?」
「そうかな?」
基本的には普通の魔法よりも魔力を多く使って威力を上げているだけに過ぎないのだが。
「魔法に手を加える。といっても、普通は別次元の魔法になるまで手を加える。なんてありえませんよ?」
「・・・」
普通の魔法は単一属性。混合で二属性、三属性以上使おうとすると二人以上で使うことになるのが普通らしい。
「炎に水を混ぜて爆裂を起こすなんてありえませんよ?」
「水は元々燃える存在ですよ?」
「水は燃えないでしょう?」
「・・・元素ってわかります?」
「・・・確か錬金術師が言っていたような・・・?」
「山火事を消火しようとしても燃え広がるだけでしょう?」
「魔法で雨を降らせるので」
「・・・おーう」
消火活動からして魔法とは。
「説明は難しいのですが、一応水は燃やせますし」
「クロードも複合魔法使ってみればいいのでは?」
「使えるなら使いたいのですが、難しいですね」
「氷水系統最強の使い手なのに?」
「その表現やめてほしいのですが」
「超絶イケメンクール仮面なのに?」
「意味が分かりませんが」
「超COOL!!って褒め言葉ですよ」
「褒められてる気がしませんね」
「最強って呼ばれても・・・」
「魔法剣は使えるんですよね」
「アーヤのお蔭でね。正直、魔法剣で切り結ぶ方が性に合っているというか・・・」
クロードの戦闘スタイルは氷水系統の魔法で周囲の魔力を喰いながら冷気により体温低下、行動阻害、あくまで妨害を前提の戦闘。そのため単独での戦闘は剣を使う。本来は後衛が魔法を使うまでの時間を稼ぐことだけが目的の為にそれでいいのだが。僕との訓練で攻撃力不足が明らかになった。
「クロード、いっそ、迷宮に行きますか?」
「迷宮ですか?」
「ええ、歌姫の迷宮ですが、あそこ最近内部構造が変わってるんですよ」
「・・・本当ですか?」
「ええ、良い訓練場所として使わせてもらってます」
「噂になってる迷宮で発動する謎の魔力って原因あなたですか?」
そんな噂が出てるんですか?
「ええ、複数の魔力がしかも人間には不可能といえるほどの高い魔力を時々感じると迷宮に行っている方々から聞いてますよ」
「へー、そうなんだ」
「原因が目の前だったとは思いませんでしたが」
「よし、新たなる魔法の為に行こうか」
「・・・今日は一応訓練に充てるので休みをもらってますが、念のために、お嬢様に出ていると連絡をしてきますね」
「こっちも準備あるし、じゃ、正門のとこで落ち合うか」
「ええ」
食堂で食事を終えていったん部屋に戻る。
訓練の為に魔杖短剣は持ってきていたが外に出るなら外套に各種薬品人通り揃えておきたい。
部屋に戻ると人のベッドでシルビアが寝ている。
「何してんですか」
「・・・あ、今日はクロードさんと組んずほぐれずの訓練あふぁさあ」
枕を顔に押し当てる。
「その表現はやめてください」
「いい男が二人そろってナニしてるっていう乙女の妄想を抑えるなんて」
「乙女じゃないよね?」
「そうでした、妖精でした!」
「・・・クレアさんの方はどうですか?」
「煮詰まってますよ。ついでに余計な肉が付いたと呟いてます、なので多少運動して肉を落とす作業を手伝うと効率が上がると思います、そ!」
再度枕を押しあてる。
「えええい、枕を押し当てないでください、嗅ぎますよ!」
「どうしてこうなったんだ・・・」
「ホモが嫌いな女子なんていません!」
「人間じゃないだろ、妖精だろ、なんで腐るんだ・・・」
「目の前に極上の肉を並べられたら大抵の人間は食べますよ?」
「妖精なのに・・・」
「ところで、どうしたんですか?本日は訓練のはずなのに」
「ああ、魔法学園で訓練は限界があるから、実戦で迷宮に潜ってみようかと」
「・・・二人きりで?」
「その表現はヤメロ」
装備が整ったので、正門に向かう。
「すいません、アーヤ、お待たせしました」
「問題ない、そういや、クロードは外に出れるのか?あと、顔を隠しておいてくれ」
「一応、証だけは、ギルドの仕事はしてませんが、必要に応じて外に出る事もありますので、顔を隠す理由は・・・」
「執事なのに外に出る必要があるのか・・・?直ぐにわかる」
「執事たるもの、主の為に全てを捧げるものですよ」
「それはおま・・・予想通り襲撃者だ」
「銀髪にひとふさ束ねた髪、四本の魔杖剣・・・アーヤ・コラプサーだな?」
ギルドでもトレードマークになった二つの形からこちらに話しかけてくる人間は二種類。
依頼人。特に、信用のおける人物や、秘密の依頼、有象無象には頼めない重要な仕事。そう言った仕事頼む人間。
もう一つは、敵。最初はこちらの能力を疑ったり、気に喰わなくて潰そうとしたりしていたが、全員もれなく半殺しでお帰りいただいた。最近は絡まなければ大丈夫。と理解された為にこちらの心配はない。
最近は奴隷商人に騙されてこちらに来たばかりの馬鹿達ばかりが自分の賞金を狙っているらしい。裏では割と高額な額らしいが、まっとうな人間は逆恨みだと知っているため、襲撃者がボコボコにされてもわれ関せずを通してくれる。
「はい、二択です。帰るか、ここで再起不能になるか。十秒待ちます。いーち」
「なっ、てめぇふざ」
「にー」
「っ!」
襲撃者はとびかかろうとするが。
『シールド』
現れた白い楯に顔を打たれて地面を転がる。
「再起不能を選択なされたので、死んで下さい」
魔刃鍛造の魔法を使い、奴らの腕に剣を生やす。
「これに懲りたら、情報は正しく理解することですよ?今回は一度目なのであなた方には警告で済ませますが」
「・・・すごいな」
続けて影鬼を一体作り出す。
「・・・何をしてるんですか?」
「戦利品ですよ」
倒れている人間のタグを奪い、影鬼に喰わせる。
影鬼に与えている命令は、指定した場所にいること。もちろん、奴隷商人の屋敷の庭だ。
あそこで影鬼同士が戦闘を行っている。
「警告というか、一発で終わりじゃないですか」
「タグの持ち主が現れたら返すように命令してあります」
「ギルドでタグの現在位置を調べればすぐにわかりますし」
「うわぁ」
タグ自体は普通にあるものだが、冒険者は町の出入りに必要でもあるために、タグの紛失はかなりの痛手になる。
タグを作るか、奪い返すか。
一般人に迷惑をかけたのだから当然だろう。
*
門を出て、身体強化を使い迷宮へ。ちゃんとお供え物も置いておく。
「何してるんですか?」
「迷宮の支配者に感謝を」
「・・・変わってますね」
「ええ、よく言われます」
「それ大丈夫じゃないよね!?」
歌姫の迷宮は迷宮の入り口から入ると、地下一階のホールに出る。
正八面体のホールは八本の道がありそれぞれ、別の訓練が出来るようになっている。
四つは罠の解除を訓練できる迷宮。後の四つは魔物がポツポツと湧くエリア。
魔物エリアは、スライム、コボルト、ゴブリン、ミミックの四種類ミミックだけ異常に硬い。攻撃力は低いのだが、防御だけやたらと高い。何の金属の宝箱だおい。と、突っ込みをいれたくなるほど。そのためミミック部屋は不人気だ。お蔭で訓練できるわけだが。
「さて、訓練を始めましょうか」
「・・・全力で戦闘したらこの迷宮壊れるんじゃないですかね・・・?」
歌姫「次回、訓練する二人に忍び寄る影!」
アーヤ「ほうわっ、普通に予告された」
歌姫「ドキワクムネキュンポロリもあるよー」
クロード「ポロリ担当は歌姫ですよね?」




