第17話「ギルド・欲望の持ち主」
村で報告をし、調査終了の証を依頼書に書き込んでもらった。あとは、これをギルドに持って行くだけで報酬が受け取れるわけだ。
「だが、半日程度で終了はさすがに早すぎるかな?」
町へ戻る道を歩きながら、一人考える。町は今かなり混乱してるハズ。村で彼ら狼について聞いたが、かなり上級の魔物であるらしい。
その上位の魔物が十体近く町に現れ、人を襲ったとなれば、大規模な討伐隊を率いての戦闘を行うかもしれない。ということ。
「かなり軽率でしたし、歌姫の迷宮にでも寄り道するべきですかね?」
道中でこちらをエサと認識する魔物をゆっくりと返り討ちにしながら歌姫の迷宮へ歩を進める。
素材などわからないので適当に解体して焼きながら進む。影鬼の体内に収納して運べるので片っ端から保存しておく。
「・・・どうしよう」
ハーピィが鼻歌を歌いながら木の実を籠に集めている。歌姫の迷宮で聞いた歌声と同じものだ。妖精の眼が反応し、歌声に含まれる魔法要素を解析する。
「・・・傷を癒す魔力を乗せた歌声か・・・」
こちらの声に反応したのか、木の実をいれた籠を取り落とす。
「・・・!」
危険と判断したのだろうかと飛び上がり姿を消す。
「・・・もしかして魔力が漏れていたか?」
籠を拾い、迷宮の前まで運ぶ。お詫びということでパンと適当に肉類を包んでおく。
「・・・やっぱ街に行くしかないか」
迷宮行きは今度にして町へ戻る。
町に近づくにつれて、混乱が伝わってくる。南門周辺は朝だったならそれなりに人が集まり、混雑していたはずだが、戦闘を行える人間しかいない。
「おい!おまえ!ここで何をしている!」
準備を行っていただろうパーティの男が声をかけてくる。先ほど狼との戦闘で雷撃を喰らった一団だ。
「依頼を終えてきたんですよ」
依頼書を見せる。
「・・・そうか、お前、白い狼を見なかったか?」
さて、どうすべきか。適当にスルーしておくのが一番だが。
「・・・そちらの言っている狼か知りませんが、白い大型の魔獣の集団が南に走っていったのは見ましたよ」
「!本当か!」
「ええ」
「詳しく、話てくれ、あ、ここ、じゃなくて、ギルドの方で!」
「・・・ええ」
男に先導されてギルドの本部へ。案内される。
ギルド内は見た目は平穏を装っているが、静かに殺気を放っているようだ。
「・・・何か、あったんですか?」
「詳しい話はギルド長に聞いた方がいい、おーい、白い魔獣の目撃者がいた!ギルド長はどこだ?」
受付で走り回っていた人達が一斉にこちらを向く。その中でも朝、登録手続きの処理をしてくれた女性がすぐに歩み出る。
「こちらへ、準備の方は?」
「足の速い先遣隊が出ているが追いつけないだろう。コイツの目撃情報次第では、厄介なことになる」
「わかりました。ええと、たしか、・・・アーヤさん。でしたね?」
「知り合いか?」
「今朝、登録されたのですよ。男性ですが、女性と見間違う顔をしていたのでよく覚えています」
「・・・男だったのか・・・」
案内してきた男は性別を聞いたとたんに肩を落として外に出ていった。失礼すぎるだろ。
「こちらへ、あと、私の名前はモナと言います。よろしくお願いしますね」
「ええ、こちらこそ」
受付のモナに案内されて、奥の応接室に。数人の男性が地図を広げて思案している。
「ギルド長、目撃者です」
「入れって言う前に入ってくるなよ」
「緊急ですので」
「わかった・・・地図、読めるか?」
「地図は読めますが、最近こちらに来たので現在地がわかりません」
ギルド長と呼ばれたおっさんが指をさす。
「現在地がここだ」
「この地図の縮尺は・・・」
地図の北と思わる部分を見るが、縮尺についての記載はなく、ところどころ長さが違う。と思われる。いうなれば、複数の地図をつなげ合わせたような印象を受ける。
「これを描いたのは複数の方ですか?」
「・・・ほう、そこまでわかるか」
「およそですが、僕の依頼を受けたとこがここですが・・・」
依頼書を出して、村のあったと思われる周辺をさす。地図で見る限り、そこも森に囲まれているが、地図がずれているのでどうしようもない。
「・・・この依頼は・・・報酬はまだか?」
「ええ」
「後で受け取れ、情報提供の分も・・・」
「おい!ここに魔獣の目撃者がいると聞いたぞ!」
扉をノックもせずに腹のたるんだ男が怒鳴り込んでくる。
「今取り込み中だが」
「五月蠅い!こちらは甚大な被害が出ているんだぞ!」
「あちらの豚は?」
近くにいた男性に話しかけると、魔物の襲撃にあった家の持ち主だと。
「おい、小娘、狼共はどこに行きやがった?」
「今、それを」
「五月蠅い、ギルド長ごときが邪魔をするな」
ギルド長は少し苛立ち気に眉を動かしたが、一組織の長として紳士的な態度をとっている。・・・面倒だなぁ。
「狼共はどこに行った?俺の商品は何処だ?」
「知らないんですが?」
「見たんだろうがっ!」
顔を真っ赤にさせて唾を撒き散らす。
「行先は知りませんし、そもそも、商品が何か知りませんが?」
「商品は狼の子供だ。隠し立てしてるんじゃないだろうな?」
「密猟者の方でしたか?」
「魔獣の取引は正当な取引だ」
「魔獣の取引は正当なのですか?」
「魔獣に首輪を付けて支配して使役する。一部では非難があるものの、馬車の代わりに荷を引かせるには魔獣の方が強い。また、魔物使い、と呼ばれる者もいるため、全てが非合法とは「言えないな・・・」
「そうですか・・・残念ながら知りませんね。それに、万が一知っていたとしても・・・教えると思いですか?」
「貴様っ」
案の定、豚は挑発に乗り、拳を上げる。
「さて、これで、正当防衛が成立です?」
魔杖短剣を抜き、男の首に添える。
「・・・ふん、ギルド内で剣を抜いたな?ギルド長こいつを牢にぶち込め、そこで尋問してやる」
「残念がだ、それは出来ないなぁ?」
そもそも、牢なんてねーよ。と外野がツッコミを入れる。
邪悪。と表現するべきであろう笑みを浮かべ、懐から仮面を取り出す。
「それは・・・!」
ギルド長が反応する。
「狼の一団の落とし物ですよ。僕はギルドにすぐに案内されたのでわかりませんが、一団が落としたものなら、これを使えば、行先も、わかったかもしれない」
「それ」
「口を開くな、豚野郎。誰が発言を許可した?」
「なっ」
さらに口を開こうとするので、魔杖短剣を少し押し込む。
「!」
「情報提供に関して、こちらの仮面。狼の向かったと思われる方角を示すつもりでしたが、そちらのような豚がかかわっている以上、必要ありませんね?」
「ふざけるなっ!」
「二度の警告を無視したので、ご臨終」
『ファイアーアロー』
仮面を焼き払い、消し炭に変える。
「さて、次は人間を過去形にする作業の時間ですね」
「貴様」
「それ以上は許可できないぞ」
ギルド長が殺気を放ち拳を伸ばしてくる。
戦闘技術の差か、わかっていたのよけられなかった。しかし、威力は弱く、吹き飛ばすように手のひらで押し飛ばしている。
一撃を受け、壁に激突し崩れ落ちる。ギルド長の意図を理解できたかわからないが、起き上がらずに動向を見守る。
「よし、そいつを捕まえろ」
「お帰りだ、送ってやれ」
豚はドナドナされて、ギルド長が立つように促す。
「・・・おい、本気で気絶したのか?手加減したつもりだが・・・」
「ええ、大丈夫ですよ。とっさに魔力による障壁を組んだので」
「・・・魔力障壁も使えるとは、どれだけの魔法使いだ君は」
「魔杖短剣を握っていましたからね」
立ち上がり、服の汚れを叩く。
「そうか、・・・しかし、仮面か・・・あれがあれば追跡できたかもしれないんだが・・・」
「すいませんね、つい、イラッとなって燃やしてしまいました」
仮面を破棄するのを忘れていたが、ここで堂々と証拠隠滅出来て逆に幸運か?
「まぁ、燃やしてしまったものは仕方ない。まぁ、あれが商人として認可されているのも問題だがな」
「奴隷商人の類ですかね?」
「そうだ、魔物、人、両方扱う。厄介な人間でな、敵対する組織に対して奴隷に爆裂魔法を刻んで特攻させるような手段を使う」
「それは、特攻とは言いませんよ。テロリストです。即刻殺すのが平和への第一歩ですよ?」
「だが、奴の飼っている戦闘部隊はそれなりの手練れで手が出せない。第一、奴隷商人は数がいるし、奴隷をちゃんとした商品として扱う商人が多いため競争が激しいが、魔物を奴隷として支配することのできる商人は貴重なんだ」
「だから、ある程度の横暴はスルーされると?」
「ああ、残念な事にな。奴もそれをわかっているからある程度の無茶はしでかす・・・が、今回は厳しいかもしれんがな」
魔獣の民家への襲撃。
「まぁ、幸いといっていいのかわからんが、魔獣側が標的以外に一切目をくれなかっため、奴も首の皮がつながっている感じだ」
「そうですか・・・ああ、あと、一団が向かった方ですが、南に向かっていきましたよ」
「南かぁ・・・」
「南だとやばいんですか?」
「南は魔物の領域だから、人間には手出しできないな・・・」
「なら、諦めたほうがいいでしょうねぇ」
「・・・仕方ないな、あれだけの魔法を付ける君の情報だ、致し方ないな・・・一部は白い狼の毛皮が手に入れられると息巻いていたが・・・」
「まぁ、戦闘になったらあれだけの数の狼、人間がエサになるだけだと思いますけどね・・・」
「ところで、仮面の持ち主だったが・・・」
「・・・美女でしたよ」
「そうか、ありがとう」
受付で報酬をもらい、ギルドを後にする。
複数の人間が後を付いてきたが、思った通り、豚の手下だろう。人気のない路地裏に誘い込む。話をするとしても、殺すにしても、人目につく場所は避けたい。
「おう、嬢ちゃん、いっ」
口上を述べる先から殴り倒していく。
「てめぇ、人のはっ」
ようやく口を開くと殴り倒される。と気が付いて黙るが、二十人の襲撃者の半数は既に夢の世界に旅立っている。
「今後、僕、そして僕の友人に手出しをしないというのなら、今は見逃します。が、次はお前の家ごと滅ぼすと、飼い主に伝えてください」
言い放ち、背を向けて歩き出すが、好機と考えた馬鹿数人が距離を詰める。
「警告はしたぞ?」
振り返らずに、影鬼が影から飛び出す。
接近した男たちは頭から影鬼に食べられ、裏路地に血だまりを作る。
グシシシシシと牙の隙間から肉片や内臓を零しなら血に染まった牙で口だけで笑いを表現する影鬼。
「!」
肉の千切れる音、骨の砕ける音、血を啜る音。恐怖の旋律が奏でられる裏路地からほうほうの体で逃げ出した襲撃者たちが、手を出してはいけないものに手を出したことを飼い主に知らせてくれるだろう。
クロード「次回。訓練風景なのでつまらないと思います」
シーナ「┌(┌^o^)┐と聞いて」
シルビア「┌(^o^ ┐)┐と聞いて」
アーヤ「よし、土へ還れ」




