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第16話「密猟者の屋敷・欲望に溺れる末路」

 木製の仮面をつけ、狼の毛でかつらを作り、コートと魔杖短剣を狼たちの住処に隠して準備を整える。


『我、主よ、どこへ向かう?』


「・・・」


 主と呼ぶのを止めさせるべきか、名前から素性がたどられるのも勘弁願いたいので、スルーするか・・・。


「ここより東に村があります。その村を超えて街道を抜けて分岐で北へ向かいます。魔法学園の南にある町で狼の子供を発見したので、まずは、そこに向かいます」


『心得た』


 狼が伏せる。


「・・・どうしました?」


『我背に。乗り心地はよくないかもしれませぬが』


「・・・いいのかい?」


『我忠誠を』


「そこまではいらないけどっ」


 狼の背に乗る。さすが魔物というべきか、見た目よりもかなり力強い。


『まいります』


 風になる。という表現がある。実際に風にはなれないが速い。そこまでの速度を出したら確実に自分が耐えれないか。


 村を瞬時に通り過ぎ、街道へ出ると通り過ぎる人や馬車といったものを器用によけて走る。通り過ぎた人々には風が吹いたようにしか感じれないのではないだろうか?


 自分がここまで二時間近くかけてきたのに、狼達の移動速度はその倍をはるかに超える。バイクよりも早いのではないかと思えるほど。


『壁が見えてきました』


「他の狼たちは外で待機、人に見つからないように!発見したらすぐに知らせる!いいねっ?」


『・・・・・・御意』


 自分を乗せた族長が壁を飛び越える。壁自体は四階建て程度の高さがあるのだがあっさりと飛び越えた。


「凄いね・・・」


『この程度、当然のことです』


「・・・人間は超えられないのだけど、簡単に超えられるなら魔物が押し寄せそうだけど」


『街にきてまで人間をわざわざ襲うやつらはいません』


「そか」


 壁から数秒で犬、じゃなくて白い子狼と別れた場所までたどり着く。・・・場所の説明とか一切してないんだけど。


『・・・敵の後を』


 殺気に反応し回避行動に移る。


『シールド』


 空中に展開した楯に魔法がぶつかり、霧散する。


「火炎系の魔法は悪手ではないか?」


『こいつらは殺しても?』


「無視しろ、時間を無駄にすれば逃げられる可能性がある」


『御意』


 敵の魔法を器用によけて冒険者たちの未完成の包囲を抜ける。どこかの馬鹿が先走ったのかたまたま近くにいたのか。


『サンダーエッジ』


 近くを抜ける際に邪魔されないように足止めをしておく。


 町の西側にある比較的大きめの屋敷が立っている。狼は迷うことなく屋敷の一つに突撃して壁をぶち壊して侵入した。


「もう少し穏便に出来ませんかね?」


『す、すいません』


「一応他の方たちに合図を、ここで間違いないのですね?」


『はい、子供と密猟者達の臭いがあります』


 遠吠えで町の外に待機している狼たちに合図を出す。


「では」


「てえっ!何もんだ!」


 壁をぶち破って屋敷に侵入したため派手に音を出したせいもあり屋敷に詰めていた人間が出てくる。


「子供たちの奪還に着ました」


「ふざけやがって、何の話だ!?」


「知らないなら、それで構いません。死ね」


『ファイアーアロー』


「くそっ」


 男が慌てて逃げる。


「子供たちの位置はわかりますか?」


『すいません、近くにいるはずなのですが、血の臭いがひどすぎて判別できません』


「・・・血の臭いは何処が強いかわかるかい?」


『地下だと思われます』


「なるほど、地下か」


「おいおい、人の家に勝手に上がりこんで何様のつもりだぁ?あぁ?」


 屋敷の奥から身長二メートルありそうな大男が現れる。


「カシラッ!」


 隣に控えていた狼から殺気が放たれる


「元凶か」


『奴は私に』


「本調子じゃないんだろ?子供たちを探してくれ」


『・・・』


「怪我されたら子供たちの面倒を誰が見るんだ?」


『・・・御意』


 その様子をニヤニヤと笑いながら大男が見ていた。


「ふん、狼が人間に化けるとはな、殺さずにいて正解と見るべきか、屋敷を見つけたことに驚いて殺しておくべきだったか悩むなぁ?」


 両手に手甲、背から片手斧を両手に掴み突進してくる。


 斧を手で払い、腹に両手を叩き込む。男の腹に銀の腕が衝撃を放ち大男を吹き飛ばす。壁を突き破り屋敷の向こう側まで転がっていく。


「・・・」


「カッハ、やるじゃねぇか・・・効いたぜ・・・少しだがな」


「斧を払ったせいで威力が足りなかったか」


 男の手斧は銀の腕の衝撃に耐えきずに粉砕されている。


「ほう、俺の斧を壊すとは・・・その腕の武器も魔道具か?」


「ええ、そうですよ」


「ふん、面白い、俺の膂力とどちらが上か!」


 男は壊れた斧を捨てて突進。先ほどとは違い、こちらを掴もうと手を伸ばしてくる。


 男の手を避けながら、男の魔道具を観察する。幸い、眼帯と仮面で顔を隠しているため、瞳の変化は悟られていないはずだ。


「くっ、ちょこまかと!!!逃げる、なっ!」


「そうか、では」


 男の手を払う。銀の腕が衝撃波を放ち、男の手甲ごと腕を粉砕する。


「なっ、ぐあああああぁぁああぁあぁぁぁああ、お、俺の、ううう腕、腕ががああああ


「わめくなよ、力自慢じゃなかったのか?」


 もちろん、男の膂力が高い理由は手甲の効果だということが分かっていたため、邪魔な手甲を壊したわけだが。


「・・・化け・・・物・・・、め」


「おいおい、自分の弱さを棚に上げ」


『子供たちを発見』


「いこう」


 男との会話を切り上げて狼の後を付いていく。


『ここです』


 屋敷の外にある倉庫。出入りの偽装などもなく、扉の中はいたって普通の倉庫だ。こびりついた血の臭いを除けば。一体ここで何人殺したんだと思うほど血の臭いがこびりついている。


「予想以上に危険な事件に突っ込んでしまった気がする。ただの密猟者じゃないな・・・子供たちを奪還したら、すぐに撤退すべきですね」


 地下で研究。となればロクなことでない。


 床を調べるとすぐに扉を発見。床の扉自体もかなり重く、普通に大人数人で持ち上げないといけないと思えるほど重い。


 発見されにくいような扉に、扉事態も簡単には動かせない。


 影鬼を向かわせる。


 地下の奥に狼の子供たちを発見。


 残念ながら族長の子供だけが見つからない。


「何故だ?」


 先ほど放置した男の元へ戻ると、既に男はいなくなっていた。


『主よ、大勢の人間がこちらに近づいてくる』


 時間をかけたせいかやはり討伐隊が組まれ、こちらに向かってきているようだ。予想よりも遥かに早い。


「子供たちを連れて、急いで撤退してください」


『主は?』


「残って時間を稼ぎます、族長の子供の手がかりも探さないと」


『数が多すぎます、四十はいます』


「でしたら、なおのこと急がなければなりません」


『この数相手にどうするつもりですか?』


「適当に混乱を招かないと、子供を助けられないでしょう?」


『何故、そこまでするのですか』


「朝、拾っておけば、ここまで面倒にならなかったはずなんだけどなと思いまして」


 そうなった場合、自分が密猟者と間違われていたかもしれないが。


「それに、怪我の手当てをして、そのまま放置ってのも良くなかったですし」


『・・・』


 討伐隊と思われる集団の声が聞こえてくる。彼らは白い狼の毛皮が高値で取引されるために、集団で向かってきているようだ。


 大人数で押し切るつもりか、我先にと陣形も何もなく屋敷の門をぶち破り突き進んでくる。


「くそ、欲にまみれた愚か者どもめ」


 さすがにこれだけの数を追い手にするのは危険すぎる。練度もそれなりにあり、こちらの危険性をある程度認識している以上油断させることも出来ない。


 先は自分が男を油断させておきながらとどめを刺さなかったので逃げられるという状況でもある。この状況でこのような広い場所で戦えば射撃ゲームの的として狙い撃ちされかねない。


 くそ、子狼の臭いをたどって来たはずだが、どこかで間違えたか?


『主殿よ、私のミスだ』


「何が?」


『おそらく、私がたどった臭いは、逃げてきた先だったのではないか?』


「となると、別の方向へ行っている可能性があると?」


『ああ』


「行きましょう」


『御意』


 狼の背中に乗り、冒険者の前に出る。


「聞けっ!私は子供を取り返しに来たに過ぎない、邪魔しなければ、お前たちと剣を交えることもない」


「はっ、魔獣風情がっ」


 欲に目がくらんだであろう馬鹿がこちらの言葉に耳を傾けずに魔法を放つ。


「これは自らの命を守るための行動だ」


 銀の腕の形状を変化させて魔法を放った男の首を切り捨てる。


「これで彼我の戦力差を理解してくれると助かるよ、人間諸君?」


 すぐに後を追おうとするものや男を殺されたことからすぐに大規模な討伐体を組むべきなどの声が上がる。所詮寄せ集めの集団なのですぐには次の行動に移れないはず。


 そんな人間を尻目に子狼のいた場所へ戻り、そこから別の場所へ進む。


 どうやら、子狼はひとまず先に取引されるようだったのだろう。売人か運び人か知らないが、裏路地で倒れている男を発見。


 子狼の臭いでこちらをたどらなかったのも、僕が食べ物を与えたせいでそちらの臭いが混ざったためだと。


 幸い子狼は裏路地で隠れながらいたようだが、親の狼の気配はわかったらしく、弾丸のように飛び込んできた。


「よし、当初の目的は達成、急いで戻りますよ」


『子を』


 子狼を抱きかかえ、背中にしがみつく。


 南門を他の狼たちが超えていったせいか、南門に複数の冒険者集団がいる。先ほどの屋敷に来た一団とは別の一団がいるようだ。


「白狼の毛皮いただいたぜ!」


 とか叫んで前に出たせいで狼の脚で見事に吹き飛ばされた。ホームランだー。と叫びたい衝動に駆られたが自重。


 幸い、奴らに追跡できるだけの人員はいない模様で、狼たちの住処にあっさり帰ってこれた。


 狼の住処に戻って仮面を外して、ゆっくりと息を吐く。


「はぁぁぁぁぁ」


『主殿よ』


「はい、解散ー解散ー」


 手を叩き、子供たちの様子を見るように促す。


 幸い商品らしく、少し腹が減っている以外の様子はない。朝食事を与えた狼は売人と護衛に戦闘したせいらしい。


「小さくてもさすが。としかいいようがないですね」


 子狼をなでながら懐に入ろうとするのを阻止する。


「さて、あとは、住処ですね、ここにいたらまた襲われると思いますが」


『主殿に』


「いや、自分じゃどうしようも出来ないから、当面の食料とかは用意できるけど」


 そこら辺は周りの獣を狩るだけなのでどうとでも出来るが。


『しかし』


「しかしじゃないの、族長は君だろ?僕はたまたま通りすがりの魔法使い?おk」


『ですが、我々の受けた恩は』


「気にするな、そういう気分だったんだ」


『ですが』


「くどい、人間と狼は一緒に暮らせない。見ただろ?白い狼の毛皮は売れるって事だけで襲い掛かって来たし、子供たちは観賞用だろうけど連れ去られるし。最悪はく製にされたかもしれないんだ」


『・・・』


「人間とは離れて暮らすべきだ」


『・・・御意』


「じゃ、お別れだ、こちらも仕事の報告があるしね、縁があったらまたいつか」


 狼の頭をなでて住処を後にする。


 とりあえずは村に戻り、不審人物についての報告か。まぁ、詳しい情報、というか詳しすぎる情報があるため逆に不審がられる可能性もあるが。そこら辺はどうにかして、報告しよう。



シルビア「次回予告!依頼を解決して戻ってきたアーヤ。しかし、魔法使いとして調査任務が事件と関係していたのでギルドから疑いの目が。そこに現れたのは・・・次回、僕の仮面を脱がさないで!」


アーヤ「あ、仮面破棄するの忘れてたorz」

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