第15話「貧しい村・隠れ住むモノ」
「そとに出たいのですが、どこで手続きすればいいのですか?」
門番に声をかける。中か出る人は一段落しているようだが、外から入る人間の方は人が並んでおり、まだ、時間がかかりそうだ。
「おう・・・冒険者か」
門の前にいた一人のおっさんが答えてくれた。
「冒険者の出入りは自由だ。・・・どっかに行くのかい?」
「この依頼を解決しに」
ギルドでもらった羊皮紙を見せる。
「・・・なると、戻ってくるのか、じゃ、一応出たって記録だけとっとくな、名前は?」
「アーヤ・コラプサーです」
「日数は数日程度かね?」
「そんなにかかりそうですか?」
「経験から言わせてもらうが、調査って名目だが、この手の依頼は何かと付けて討伐まで要求される。いっちゃなんだが、受けないのが一番だ」
「元冒険者の方でしたか?」
「ああ、足を悪くしてな、幸い五体満足だが、ろくに迷宮に潜る事もできねぇからここで門番よ」
「なるほど、助言感謝します。一応駄目そうならさっさとしっぽまいて逃げますね」
「おう、それがいい、無理はするなよ!」
門番に手を振り、道を進む。ある程度、離れたところで身体強化を使おうと思ったが歌声が聞こえる事に気がついた。
歌声の聞こえる方向に向かって進む。依頼は緊急性のものじゃないし、少しくらい寄り道はいいよね。幸い人の通りが多いのか、地面には多数の足跡がある。
『初心者訓練用迷宮』
あほな看板が立っていた・・・。
「何だこれ・・?」
「お、誰か来たのか?」
たぶん、迷宮の入り口?なのか。日本にいた時に見た屋久杉よりも巨大な樹があるのだが、街の方からではそこまで大きいいようには見えなかったのだが。
樹の側面に穴があり、地面の下に向かって階段のように段差が続いている。そして、巨大な樹の裏側から子供が回りこんできた。
子供は三人。全員冒険者のギルドでもらったタグを首に巻いている。
前衛が二人に、後衛一人。
「次は兄ちゃんが行くのか~」
「いや、何があるのかと見に来ただけだから」
「じゃ、じゃ、先に行ってもいいのか!」
「ああ、行ってくれ、出来ればこれについて教えてほしいんだけど?」
「なんだ、知らないのか?」
「さっき、冒険者として登録してきてね」
「ここは、街の近くで冒険者になった奴が自分を鍛えるために置かれた迷宮なんだ!」
「・・・」
いくつか質問をして何とか理解に至る。
ここの迷宮は街から近く、階層も浅く、魔物も強くないため、冒険者になりたての人間が経験を積むのに利用されていると。元の名前は「歌姫の休息所」らしい。歌姫の声に癒しの魔力が込められているため、多少の怪我は治るので経験を積むのに利用されると。
「・・・内部構造は五階層のほぼ一歩道、時たま魔物が産み落とされるがスライムなどといった弱い魔物と・・・」
少年達を見送り、道に戻る。歌姫の迷宮はそのうち来るとして、今は依頼を解決するべきと村に向かう。
*
道を進むといくつもの魔物を発見する。こちらに気が付くが、速度の関係上こちらに追いつけず、諦めるものが多数。空を飛ぶ鳥型の魔物がこちらを追いかけてくるので魔法を発動したら慌てて逃げだした、他の魔物も無視して進む。
道から目的の村への看板を見つけ、そちらへ進む。道の終わりに小さな村。見た感じ三十戸程の木造の家だと思える建物がある。建築様式は町の方は石造りだったが、こちらの方は家と呼ぶにはお粗末な家だ。街を囲む柵はあるものの高さがあまり高くないため、脚力がある魔物なら容易く飛び越えそうだ。
「すいません、この依頼を受けて来たものですが?」
柵の近くの畑のようなもので土いじりをしていた男性に声をかけ、羊皮紙の依頼書を見せる。
「お?おお!そ、村長んとこ案内する」
男に連れられて、村の中で一番大きい家のところに案内される。こちらも木造だが多少他の家より作りはマシ。といえる程度。・・・もしかして、自作か?
「村長ー、冒険者さんが、きてくれたでー」
すぐに家の扉を開けて青年が出てくる。
「本当かっ!」
「彼は、村長の息子さんだ、詳しい話は村長たちとしてくれ」
「ええ、ありがとうございます」
土いじりに戻る男性の背中を見送り、村長の息子に挨拶をする。
「初めまして、こちらの依頼書を見てきました。アーヤ・コラプサーといいます。詳しい話を聞かせていただけないでしょうか?」
「ああ、待っていたよ!入ってくれ」
居間に案内される。
「父さん、冒険者の方が来てくれたよ」
「おお、ありがたいねぇ」
村長の年齢は六十くらいか?足が悪いのかだいぶ大きな杖を横に置き、座椅子のような物に座っている。
「初めまして、村長をさせてもらっている、グルドと言う、息子のゲルドだ」
青年が頭を下げる。
「アーヤ・コラプサーです。さっそくですが、依頼について、確認させてもらいます。森の中で見た不審人物について調査。で、よろしかったですね?」
「ええ、そうです」
「まず、現状でわかっている事はありますか?」
「現状で、ですか?」
息子と顔を見合わせる。
「・・・不審人物は武器を所持していました?」
「ああ、森で不審人物を見た人達を連れてくる、三人いるんだが、少し待っていてもらえないだろうか?」
「もちろん、では、まず目撃者をお願いします」
息子が出ていく。
「・・・村長さん、この森には、大型の魔物が棲みついていたりとかしますか?」
「大型の魔物ですか・・・長らく住んでおりますが、見たことはありませんなぁ・・・森に入るのも、森で自生している薬草を採取する時ぐらいなもので」
畑。と呼ぶには難しいが一応作物類はあるようだが、・・・こんなところに村自体が不自然で仕方のないことだが・・・。
「・・・ここにいるものは、町で生活出来ないものばかりです」
「何故ですか?」
「生産性の低い人間をわざわざ生かしておく必要はな」
村長の話に区切りが付くより早く息子が帰ってきた。
「それでは、調査の方をさせてもらいますね」
「ああ、頼むよ」
「それでは、みなさん、森の中での事を教えてください」
*
村人の話を整理した結果。
最初に見かけたのは十日ほど前。それから時たま見かけるようになったと。
武装は剣、槍を持った男。最低でも六人はいる。巡回は二人で。村に気が付いているかは不明。幸い、薬草の自生領域まで来ていないので今のところ被害は皆無。
調べるものは、規模。目的。危険性。等。
「可能性としては盗賊などが拠点を近くに作っていることがありえるのか・・・厄介だな」
村人に言われた通りに進んで、薬草の自生領域に到達。影鬼を複数放ち、周囲を探らせる。
「人の気配はなし、妖精の眼にも魔力の反応はない・・・」
魔刃鍛造で双刃槍を作り出し、戦闘に備える。幸い周囲の警戒は影鬼と妖精の眼があるためそうそう不意打ちは喰らわない。
影鬼の視界と接続しつつ、進んでいく。影鬼の一体が野営の跡地を発見する。
「・・・既に、奴らは撤退した後だと?目的は達成しているのか・・・?一体何が・・・?」
すぐさま影鬼が発見した野営跡地に進む。
ほとんどの物は持ち去られているが、ゴミはそのまま放置という。探偵ならこのゴミから大量の情報を得られるのだろうが、残念ながらそんな能力は持っていない。
「血痕・・・?」
地面を引きずった血痕がある、サイズ的には人間の腕程度か?
・・・奥に、森の奥に原因がある・・・。
「落ち着け、不審人物は、自分と同じ人間ではなかった・・・」
影鬼に奥を調べさせたが、白い狼たちが倒れている。だいぶ衰弱しているのか、影鬼に反応している様子はあるが、攻撃は加えてこない。
「毛皮か?・・・だが、傷つけたらそれこそ価値が下がるはず。何の為に?」
だいぶ衰弱している。死んでいないのは魔物の生命力の高さゆえか?
『人間め・・・何をしにし来た・・・?』
直接声が脳に響く。
「っ、少し声量を落としてもらえるか?・・・ああ、聞きたいことがるんだ」
『・・・答えることなど何もない』
「お前たちを襲ったのは人間だな?」
『・・・貴様もその中まではないのか?』
「違う」
『・・・では、なぜ、貴様から我が娘のにおいがする?』
「におい・・・?」
・・・今朝見つけた白い犬か?あれ、狼だったのか?
「・・・今朝、町中で、足の折られたお前たちの同族を見つけたのだが・・・」
『!・・・どうしたのだ?』
「つっつ・・・、足が折れてたから、治療して食べ物を分け与えただけだ」
『どこの町だ?』
白い狼は立ち上がろうと、全身に力を込め始める。
「何をしている?」
『無論、娘を助ける。我の同胞の子らと同じように』
「・・・今まで動けなかったのにか?」
『人間。貴様は周りに魔力を不用意に溜める癖でもあるのか?その魔力をいただいただけよ』
『ヒーリング』
『何だと?』
白い狼の傷を癒す。
『何の真似だ?』
「子供を助けるのだろう?助力しよう」
『ふざけるなっ』
傷を癒された狼が牙を向き、こちらに疾走してくる。
「影鬼ッ!」
足元の影から影鬼が現れ、狼の顎を拳で打ち上げる。
続けざまにアラクネの糸を取り出し、魔力を通しながら、狼の口を縛る。
『シールド』
全ての脚をシールドで固定して動けなくする。
『貴様っ』
「密猟は犯罪だからな、こちらとしても、子供をさらって脚を折るような輩は許せないんだ」
『・・・』
「それに、町が分かるのか?」
『・・・』
「僕の魔力がないと、ろくに再生もできなかったんだろ?」
『・・・』
「敵、以外の人間に狙われるのは、危険じゃないか?」
『~~~わかった!貴様に助力を乞う!』
「・・・おけ、じゃ、まずは、他の奴も治療するが、僕に襲い掛からないように言ってくるか?」
『ふん、我がかなわないのだ、他の者がかなうわけなかろう』
『ヒーリング』
狼達を癒し、密猟者について話を聞く。
*
「密猟者は総勢二十名程、食べ物に毒を混ぜられたのか、全員が動けない状態であったと。それでも動けるものは抵抗して戦闘、だが、毒のせいかろくに動けず、子供をさらわれたと」
木で仮面を作りながら狼と話をする。とりあえず、子供たちを救った後どうするかを相談させている。同じところにいたらまた襲われる可能性もあるので住処を移すべきなのだが。
大型の魔物十三体に、その子供六体。それなりに大きい場所でないと隠れられないし、食糧事情もある。
『ああ、不甲斐ない事にな』
「・・・まぁ、人間は相手を罠にかける事が得意だからな・・・」
人間は自分を磨いてより高みへ上るよりも、登っている人間の足元を崩す方が得意だからな。
『・・・自分でいうか?』
「いや、でも、僕も君たちを攫うかもって思わなかった?」
『貴様ほどの腕があれば魔法でどうにでも出来るだろう?従わずに逆鱗に触れる方が危険だ』
ここの狼たちのまとめ役であるこの狼は僕の横に寝そべりながら欠伸をしている。近くにいる方が効率的に魔力を喰えるといって横にいる。他の狼たちにはこの先の相談をさせているのに・・・。
「人を危険物扱いしないでくれよ、こう見えても人畜無害なんだが」
『魔力を垂れ流しにしている時点で有害だ』
「・・・好きであふれさせているわけではないのだが・・・」
『で、おまえは、何をしているのだ?』
手元にある仮面を見て狼が興味深そうに首をかしげる。
「仮面だよ、僕の顔を隠す為にね、髪の色も変えたいのだが・・・。どうしたものかとね・・・」
『なら、我の体毛を被ればよい』
「・・・」
『何だ、その顔は?』
「いや、道理にかなってはいるんだけど、いるんだけど・・・風呂、入ってる?」
『水浴びしとるわっ!』
「・・・しょうがない、影鬼・・・」
影鬼に毛を集めさせる。
『何をしている?』
「毛を集めているんだが?」
『体毛を使えといったろう?』
「・・・?」
『胸元なら多少剃っても問題ないぞ?』
「ああ、そういうことか、いいよ、落ちてるので適当に作るから」
『そう言わずに、使え』
仰向けになる狼。腹をなでて首筋をなでる。
『く~、じゃなくて』
「綺麗な毛並みだし、もったいなくないか?」
『どうせすぐに生える』
「まじか」
『さぁ、行け!』
ばっちこ~いと胸を張る狼・・・どんな状況だよどんな・・・こいつは意外と頭が固そうなので、魔刃鍛造で作りだした剣で毛を刈る。まさか出来立ての毛でかつらを作るとは思わなかったぜ・・・。
「さて、気を取り直して、奪還だ」
『さぁ、お前たち!子供たちを奪還するぞ!』
雄たけびを上げる狼たち。・・・これ一歩間違えれば町に混乱をもたらしたとかで、賞金首にされないかな・・・?
狼「ワフ!」
シルビア「次回予告?狼に町を襲撃させたアーヤ。賞金首になったために身を隠す為に美少女として生きていく決意を」
アーヤ「しませんよー?」




